半年を振り返って(鷹栖 美恵子さん)3/3
鷹栖 美恵子さん/Ms. Mieko Takasu
(専攻楽器オーボエ/oboe)
[ 2023.03.7 ]
ハンブルク音楽院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の鷹栖美恵子です。
いつも多大なるご支援を賜り、心から感謝申し上げます。
昨年の10月より、ハンブルクにて勉強をさせていただいています。
<ハンブルク市庁舎>
ドイツ北部に位置するハンブルクの冬は、厳しい寒さに加え、日照時間の短さが特徴です。
朝は9時ごろまで薄暗く、15時ごろには日が傾き始めます。
おまけに、毎日曇っているので、どうしても気持ちが沈んでしまいます。
こちらに来たばかりのころは、言葉の壁や文化の違いに戸惑い、生活の面でも勉強の面でも、思うようにいかない焦りを感じ、悩みながら毎日を過ごしていました。
そんな日々の中で迎えたクリスマスシーズンは、街を包む温かな光が心の拠り所となりました。
J.S.Bachのクリスマスオラトリオ全曲を、ハンブルクで最も有名な聖ミヒャエル教会で、市民の方々と共に聴くことができたことは、特別な体験となりました。
<聖ミヒャエル教会、クリスマスオラトリオ演奏会>
わたし自身も、ハンブルク郊外の小さな教会にて、新曲のクリスマスオラトリオを演奏させていただく機会をいただきました。
近年の燃料費高騰の煽りを受け、ハンブルクの各施設では暖房温度を低めに設定しているところが多いのですが、わたしが演奏させていただいた教会はほとんど暖房が効いておらず、外気温とほぼ変わらない、0度近い中で演奏しました。
楽器が割れるのではないか、本当に心配でしたが、こちらの音楽家に聞くところによると、このような状況は最近では特別珍しいことではないようです。
教会での演奏は、コンサートホールとは全く異なる響きや残響に驚きました。
オーケストラの作品の中には、教会の響きを想定して書かれた作品がたくさんありますが、この体験ができたことは、今後作品を理解する上で貴重な経験となるはずです。
2月にはマルクノイキルヒェンにて、シュターツカペレ・ベルリンの首席オーボエ奏者Gregor Witt氏によるマスタークラスに参加しました。一週間のうちに4回の実技レッスン、毎日のリードメイキングレッスン、楽器製作工房の見学、修了演奏会などがあり、若い優秀なオーボエ奏者たちとレッスンを聞きあったり、ご飯を食べたり、充実した日々を過ごしました。
<Gregor Witt先生と>
ハンブルクでは、ハンブルク州立歌劇場オーボエ奏者のThomas Rohde先生のもと、毎週レッスンを受けています。
先生はよく、「Herz!(心)」「Zeigen!!(見せる)」と言います。
もっと心で演奏しなさい、全部の音を愛しなさい、感じたことをもっと表現しなさい、と言います。
このことは、Gregor先生にも、コレペティのAnna先生にも言われました。
完璧にミスのないことは大事だけど、心で演奏することはそれよりもずっとずっと大事なことなんだよ、と。
日ごろ、オーケストラでの演奏の中で、表現の事よりも、音程の正確さや発音のミスをしないことなどに知らず知らずのうちに意識が偏ってしまっていることに気付かされ、ハッとしました。
表現している「つもり」になってしまっていたんだと、反省しました。
今、表現の道のりの果てしなさ、奥深さを感じています。
いろいろな演奏を聴くことが自分自身の助けになると信じて、留学生活後半もたくさんの演奏会に足を運ぶ予定です。
だんだんと寒さが和らぎ日が延びて、春が近づいてきているのを肌で感じます。厳しい冬が終わり、間もなく「美しい5月」がやってきます。
この地で春を迎えることができることを幸せに思います。
一日一日を大切に過ごし、残りの半年も学びを深めて参りたいと思います。