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2022 年を振り返って 天へ響け私の歌(上島 緑さん)2/28

上島 緑さん/Ms. Midori Kamishima
(専攻楽器メゾソプラノ/mezzo soprano)

[ 2023.03.3 ]

クレモナ モンテヴェルディ音楽院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生のメゾソプラノ上島 緑です。
5月から始まった奨学生期間も、もうすぐ終わろうとしています。

 

<モンブランを一望できるエルブロンネル展望台からの景色>

 

 

この一年間貴財団の手厚いご支援を頂き、のびのびと豊かな実りある勉強をさせていただきました事、深く感謝いたします。

 

2022 年はミラノからイタリアとフランスの国境にあるアルプス モンブランの麓アオスタに居を移しました。

ヨーロッパ最高峰のモンブラン、マッターホルンなどの4000 メートル級の名峰に囲まれたこのヴァッレ・ダオスタ¹は、アルプスからの美味しい水と、グラン・パラディーゾ国立公園などの大自然そしてヨーロッパの三代アルプス全てを有した州でもあります。

またローマ帝国時代の遺跡が数多く残る事からアルプスのローマとも呼ばれ、どこか故郷・信州松本を感じさせる懐かしい自然は、異国に住みながらも大地は繋がっている、一つなのだと思わせてくれます。

 

 

アオスタから現在勉強しているクレモナやヴェネツィアには電車で移動します。

早朝6 時の電車で出発。

トリノまでを繋ぐフェラーリを彷彿とさせる真っ赤な車体には、特別自治州であるヴァッレ・ダオスタの紋章が刻まれ、アオスタの谷を夜明けと共に抜けていきます。

 

<トリノとアオスタを繋ぐ真っ赤な電車>

 

 

2022 年は、イタリア クレモナ モンテヴェルディ音楽院そしてヴェネツィアのアカデミア・ヴィヴァルディアーナで研鑽を積みました。

クレモナ音楽院ではバロック科に在籍し、フィリッポ・ミネッチャ氏のもと発声面の強化を。

 

そして特筆すべきは、モンテヴェルディの生まれた街クレモナで毎年開催されるバロック音楽祭モンテヴェルディ・フェスティバルにおいてガルッピ「トビーアの帰還」のソリストとして出演し、ヴェネツィアでのガルッピ・フェスティバルでの再公演も果たした事です。

2022 年に続き、2023 年もモンテヴェルディ・フェスティバルへの出演が予定されています。

 

ヴェネツィア ジョルジョ・チーニ財団アカデミア・ヴィヴァルディアーナ²では、ヴィヴァルディ・フェスティバルに続き、2022 年リコルディ社³が新しく出版したヴィヴァルディのオペラアリア集の出版記者会見での演奏をさせていただきました。

ヨーロッパでバロック歌いとして名高く、また日本の草津国際音楽アカデミーにて上皇后様とのセッションでも知られるジェンマ・ベルタニョッリ氏の指導は、いつも私に音楽の真の意味を教えてくれます。

また、音楽を通しての素晴らしい仲間たちとの出会いはかけがえのない宝物です。

 

<ヴェネツィア リコルディ社出版記念コンサート。(中央ジェンマ・ベルタニョッリ氏、右から3 番目が筆者。)>

 

 

私の歌い手としての夢は己の魂が歓喜する歌を歌い続ける事です。
勉強のために一生懸命精進され、頑張っている皆さん。

コンクールやオーディションが上手くいかず、行き詰まった時や自分がわからなくなった時は、是非自然の中に身を置き、静かに瞑想をしてみて下さい。

見失った己の魂に出会う事ができます。

人生にはこうでなければならない。〜しなければならないというものは存在しません。

己の魂の声を聞いて下さい。

 

 

そして最後に、ロームミュージックファンデーションの素晴らしいサポートを受け、この一年心穏やかにそして積極的に自分という楽器を磨く事ができました。

本当に至れり尽くせりの素晴らしい時間でした。

全ての方に感謝を。

 

ありがとうございました。

 

 

¹

州都アオスタがある州。ヴァッレ・ダオスタ特別自治州。

 

²

ヴェネツィアの文化芸術に関する研究を促進することを目的としたジョルジョ・チーニ財団の支援を受けたアカデミア。

審査で選ばれたアーティストは財団が所有するレジデンス、マスタークラス、世界的に有名な図書館、ヴィヴァルディの貴重な楽譜などを自由に利用する事ができる権利が与えられる。

財団のあるサン・ジョルジョ・マッジョーレ島は、サン・マルコ広場の目の前、かつてヴィヴァルディが司祭として働いていた教会を見渡す場所に位置する。

 

³

イタリアオペラ楽譜の出版で知られるイタリア・ミラノの楽譜出版会社。