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2022年を振り返って(桑原 志織さん)12/27

桑原 志織さん/Ms.Shiori Kuwahara
(専攻楽器ピアノ/piano)

[ 2022.12.30 ]

ベルリン芸術大学

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の桑原志織です。

今年はコロナによる制約が緩和され、充実した一年を過ごすことができました。

 

<紀尾井ホールリサイタルより>

 

 

まず3月の紀尾井ホールのリサイタルは、昨秋ルービンシュタインコンクールの凱旋コンサートがコロナで延期となり、半年を経てようやく実現した公演でした。

昨年組んだプログラムを一新し、コンクール曲のお披露目ではなく、今まさにドイツで学んでいる現在進行形の曲を取り上げて、今後の私のピアノ道の幕開けとなるようなリサイタルを開催することができました。

長年憧れ続けて初めて演奏したシューベルトのさすらい人幻想曲や、ドイツの現代作曲家ヴィトマンの作品などもご好評頂けたことは大きな自信と励みになりました。

多くのご支援をいただき心から感謝しております。

 

 

7月はルービンシュタインコンクール本部のお招きで、イスラエルの3都市(レホボト、テルアビブ、アラド)にてリサイタルを行いました。

レホボトでは公演の前日に主催の方から、「リサイタルのあと1対1の英語によるトークセッションを行いたい」とのご提案がありましたが、トークの打ち合わせは一切ありませんでした。

 

<イスラエルでのカーテンコール(お客様撮影)>

 

当日満場の拍手をいただき無事リサイタルが終わると、ステージに用意された椅子に座ってトークセッションが始まりました。

様々な質問がありましたが中でも大変だったのは、「日本人として身についた日本文化が、西洋音楽を演奏する上でどう役に立っていますか」という質問と、

「日本の音楽雑誌に掲載されたあなたのインタビューをグーグル翻訳で読みました。『コンクールのファイナルのリハーサルで初めてイスラエルフィルとラフマニノフピアノ協奏曲3番を演奏したとき、イスラエルフィルの前奏を聴いて、練習してきた自分の弾き方をその場で変えて演奏しました』とありましたが、具体的にはどんな影響を受けてどんなふうに変えたのですか?」という質問でした。

前者はお能や茶道などにおける間合いの重要性に触れながらお答えしました。

後者はイスラエルフィルの得も言われぬ豊潤な音楽に感激して変化した自分の心境を、脳内をフル回転させながら、ありのままお話しいたしました。

 

かくのごとくイスラエルの人々はお話好きで、明るくとても親切です。

コンクールから約1年、再びリサイタルを通して現地の方々と音楽を分かち合い、交流を深めたことは何物にも代えがたい経験となりました。

 

<エルサレム 嘆きの壁にて>

 

 

9月には一時帰国して、杉並公会堂大ホールにて、小林研一郎先生指揮×日本フィル様とチャイコフスキーピアノ協奏曲第1番を共演いたしました。

チケットは8月に完売となり、ご期待に応えたいと練習を重ねて臨みました。

開演直前にピアノの低弦が切れたため開演が約10分遅れましたが、小林研一郎マエストロは舞台袖で、「こういう珍しいハプニングがあるときは良い演奏ができるんですよ」とおっしゃいました。

このプラス思考の呟きで一瞬にして気持ちがなごみました。

さすが百戦錬磨のマエストロ。

本番は良い集中で皆様と素晴らしい演奏ができて最高に幸せでした。

 

<終演後、ホールホワイエにて>

 

 

来年もコンチェルトの機会に恵まれ、目下3曲の新しいピアノ協奏曲を練習中です。

抜擢していただいた一つ一つの演奏会に心からの感謝を込めて、これからも全力で邁進してまいります。