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師から吸収する、ということ(清水 伶さん)12/23

清水 伶さん/Mr. Ryo Shimizu
(専攻楽器フルート/flute)

[ 2022.12.23 ]

ジュネーヴ高等音楽院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の清水伶です。
ジュネーヴでジャック・ズーン教授と勉強を始めて早いもので4年が経過しました。
ソリスト、オーケストラ奏者、そして教育者として尊敬する師のもとで大変貴重な時間を過ごしております。

 

<先生との共演>

 

 

去る11月、彼と出会うきっかけとなった長野県松本市での音楽祭において、はじめて彼とオーケストラの中で共演する機会をいただきました。
作品はマーラーの交響曲第9番。

第1楽章終盤のフルートソロはとても有名で、オーケストラのオーディションでも頻繁に取り上げられます。

ジュネーヴでのレッスンは、オーディションの準備のためにオーケストラでのフルートソロ(日本ではオケスタと呼ばれます)を取り上げることがとても多いです。

割合にして4分の1くらいを占めるでしょうか。

そのため、レッスンの日には10人ほどいるクラスメートのうち数人は「オケスタ」を取り上げています。
僕も例に漏れず何度もオケスタをレッスンしていただき、マーラーの9番のソロも3度ほど教えていただきました。

 

<普段のレッスンの様子>

 

 

今回は師匠が真隣でそのソロを吹くということで、リハーサルからワクワクが止まりませんでした。
レッスンでもたくさんのことを教えていただきましたが、やはり実際に吹いてる姿を観察するとたくさんの気づきがあります。
一番圧倒されたことは、彼の音楽に対するエネルギー。

3日間のリハーサルの中で、彼がエネルギーをセーブして演奏したことはたった一度もありませんでした。
この音楽に対する姿勢に改めて感銘を受け、自分も取り入れなければいけないと強く感じました。

特に第1楽章のフルートソロの部分では、オーケストラの雛壇が揺れ動くほどの凄まじいエネルギーで、毎回放心状態になるほど圧倒されてしまいました。

 

日本ではしばしば、「教師は生徒のスタイルを矯正(またある時は強制)するべきではない」という議論が巻き起こります。
しかし実際ヨーロッパでは、教師が自らの考え方や演奏の仕方を生徒に多少無理をしてでも教えこむ、というケースが多いように私は感じています。

だからこそ、自分が目指す姿であったり、共感できる音楽をもつ教授のもとで勉強することが非常に大切であると思います。
千利休の訓でもある「守破離」という日本で古くから伝わるの芸の修行におけるかたち。

これこそが西洋音楽を学ぶ上でも役に立つのではないでしょうか。

 

<終演後、先生と>

 

 

1日目のリハーサルのあと、「僕らは同じスタイルだから君になにも言う必要がないし、とてもやりやすいよ」と仰っていただきました。
まだ彼の次元にはほど遠いですが、さらに吸収しそこから自分のスタイルをつくりあげることができるように勉強を続けて参ります。