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欧州のオーケストラ・アカデミー生活(石原悠企さん)11/30

石原 悠企さん/Mr.Yuki Ishihara
(専攻楽器ピアノ/piano)

[ 2022.02.4 ]

学校名:ベルリン芸術大学

ロームミュージックファンデーション奨学生の石原悠企です。

今回の記事では、留学を志す管弦打楽器奏者にとって興味があると思われるオーケストラ・アカデミーについて紹介します。

<コロナ禍でのオンライン・アカデミー・コンサートの様子>

 

オーケストラ・アカデミー(以下アカデミー)とは各オーケストラに付属する職業訓練機関で、アカデミー生は給付を受けながらオーケストラ実習を行います。

また、アカデミー生による室内楽や室内オーケストラの演奏会や、オーケストラ団員からのレッスン等、様々な訓練の機会があります。

期間は基本的に2年間、年齢制限は通常26〜28歳程度です。

 

欧州で学ぶ音大生の多くがアカデミーに入る事を一つの目標としていますが、これは欧州のオーケストラ入団の仕組みと関係があります。

入団を応募すると経歴が審査され、オーディションへの招待状が届くか否かはそれ次第。

良いオーケストラへの入団を目指すなら、良い学歴やコンクール歴と並んでアカデミー歴を持っていると有力なのです。

 

<リハーサルの様子>

 
アカデミーのオーディションは通常2次審査まであり、私の所属していたバイエルン放送交響楽団(以下BR響)アカデミーの1次審査ではモーツァルトの協奏曲、2次審査ではロマン派以降の協奏曲が課題でした。

当日オーディションに参加したのは40名弱(これも事前に経歴審査があったそうです)、最終的に募集人数の2名に絞られました。

 

BR響のアカデミー生の総数は平均的で、Vn.4名、他の弦楽器は2名ずつ、管楽器は各種1人ずつ(チューバ無し)と打楽器1名の合計18人が定員。

ここの珍しい制度が、アパートの部屋を支給されて皆が同じ建物の中で生活するという事。

家賃相場が高額なミュンヘンで、音出し可能物件を手配してもらえる事は大変ありがたい事でした。

 

アカデミー生がオーケストラ業務できる日数は年間90日まで。

どの公演にアカデミー生が何人必要なのか事前に通達があり、乗り番の割り振りはパート分けも含めてアカデミー生同士で相談して決めます。

それとは別に、前述したアカデミー生による演奏会が年に4,5回あったり、団員からレッスンを受けたり…アカデミー生の大半は各自が通う音大の授業やレッスンも抱えているので、多忙な生活となります。

私がアカデミー生活の中で印象的だったのは、当然オーケストラ公演とそのリハーサルへの参加で、当初はその想い出について書こうと思っていました。

しかし、自身が過去にアカデミーやオーケストラ入団について知識が浅く、それによってアカデミー所属を検討するのが遅くなった経験から、将来の留学生に向けて、短いですが 欧州のアカデミーについて紹介する記事を書くことにしました。

活動の参考になれば幸いです。

 

<コロナ禍での奏者同士の距離をとった演奏会の様子>