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オペラ作品への向かい方で考える事(清水勇磨さん)9/29

清水 勇磨さん/ Mr. Yuma Shimizu
(専攻楽器声楽/voice)

[ 2021.12.10 ]

学校名:ADADSオペラ芸術学校

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の清水勇磨です。

日頃からロームミュージックファンデーション様に多大なるご支援を賜りまして、心から感謝申し上げます。昨年度に引き続き、今年もお世話になりまして誠にありがとうございます。
今年度は、昨年までのボローニャ歌劇場付設オペラ研修所を修了し、ADADSオペラ芸術学校へと学びの場を移しました。

 

<タンホイザー(c)Lasp Inc>

 

 

新型コロナウイルスの影響で日本との行き来がうまくいかず、日本で主にオンラインで勉強を続けております。

今まで続けてきたレパートリーの研究と新たなレパートリーの拡大、またドラマトゥルギーについての研究を致しております。

 

それと並行致しまして、日本におきましては、オペラを中心とし、コンサート等へも出演をしておりました。

本年2月におきましては、東京文化会館にて、東京二期会のワーグナー作曲「タンホイザー」ヴォルフラム役で出演致しました。

特に印象深かった事と致しましては、マエストロのセバスティアン・ヴァイグレ氏の音楽作り、更にはキース・ウォーナー氏の演出も、物語を分かり易く、また深く見せる事にこだわっているものでした。

特に、演出補のドロテア・キルシユバウム氏には、稽古において本当に多くの話し合いの機会を持って頂き、演出意図を深く理解する事、また、話し合いにも十分に応じて頂き、相互理解を通しての作品を作り上げるという事を大切にして頂いたように感じます。

音楽とドラマトゥルギーの連携は、オペラにおいては観客に対して作品を提示するのに欠く事の出来ない重要な要素と言えます。

その意味において非常に丁寧な作り方が出来たのではないかと感じております。

 

<タンホイザー(c)Lasp Inc>

 

 

また、7月にも東京文化会館において、東京二期会ヴェルディ作曲「ファルスタッフ」フォード役にて出演させて頂きました。

こちらの作品は、演出がロラン・ペリー氏によるもので、台本にとても忠実に計算されていた様に思っております。

オペラにおける物語の意味を伝えていこうという考え方は、日本での公演だからという事ではなく、元々このプロダクションが目指していました。

言葉が持っている内容を掘り下げて行くという事は、イタリアにおいても実践されている事で、色をつけていくように言葉の扱い方、歌唱の仕方を構築していく事は、歌唱に説得力を増していく上で欠く事は出来ません。

 

その意味において非常に納得がいく演出の仕方であったように思います。

演出補のクリスティアン・レート氏においては、色々な事を話し合い、細かくついた演出の指示の意味を、また、お互いが考えている言葉に対するニュアンスを何度も話し合いました。

その意味におきまして、様々な役柄との会話に内容が非常に明確になった様に感じ、稽古は連日長時間に及びましたが、日を追う毎に演出内容に納得がいき、稽古を重ねる事が出来ました。

また、マエストロのレオナルド・シーニ氏ともよく話し合いが出来、音楽作りについて、また色々な可能性について実践しながら稽古を進める事が出来た様に思います。

 

<ファルスタッフ(c)西村廣起>

 

その後もコンサート等にも出演させて頂きましたが、イタリアでの重要な研修期間をお支え頂きました事が、私にとって音楽的な基礎を築かせて頂くきっかけになったように思います。

譜読みの段階から音楽への向き合い方は決まっていると言っても過言ではありません。

ボローニャ歌劇場付設オペラ研修所においては、上記のタンホイザーはクリス・メリット氏やルーチョ・ガッロ氏にご指導頂きましたし、合わせてファルスタッフはルチアーナ・ディンティーノ女史やマルツィオ・ジョッシ氏、他の方々にも聞いて頂きました。

様々な経験が演奏家としての将来を作っていく事になると実感しております。

真摯に音楽と向き合い、常に疑問を持ちながら引き続きオペラ作品と向き合っていきたいと考えております。

 

引き続きご支援を賜れます様お願い申し上げます。

 

【写真提供:公益財団法人東京二期会】