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今期を振り返って(松島理紗さん)12/30

松島 理紗さん/Ms.Risa MATSUSHIMA
(専攻楽器ソプラノ/soprano)

[ 2020.05.29 ]

学校名:ウィーン私立音楽芸術大学大学院オペラ科

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の松島理紗です。
日頃より大きなご支援をいただき、心より感謝申し上げます。
私は9月よりウィーン私立音楽芸術大学大学院オペラ科に在籍しております。

<大学院オペラ科には舞台メイクの授業もあります。キツネのメイクです>

 

大学院オペラ科には決まった時間割が無く、毎週木曜日になると次週の稽古スケジュールが送られてきます。

平日は朝から数時間の稽古、土曜日に稽古が入ることもあります。

その他に週3回以上のレッスンや必修の授業、それに加え学内外の本番や語学の勉強など毎日朝から晩まで目が回りそうな忙しさですが、とても充実した日々を過ごしております。

オペラ科に入学して最初に驚いたことは、同級生の体格の良さと声の素晴らしさでした。

世界中から集まった少数精鋭の同級生はほとんど全員がすでにプロレベルであり、歌劇場で即通用するほどの実力を持っています。

1月の21日と22日にオペラ科のFRAGMENT公演が行われ、私は、記念年ベートーヴェンの書いた唯一のオペラ フィデリオのマルツェッリーネ、W.A.モーツァルトのドン・ジョヴァンニのドンナ・アンナ、そしてB.A.ツィンマーマンのオペラ兵士たちのマリーを演じました。

 

兵士たちは1965年にケルンで初演された、おそらく世界で最も難しい現代オペラのひとつです。

ノイエ・オーパー・ウィーンの指揮者ウォルター・コベラ先生に現代歌唱法を教えていただく機会にも恵まれました。

これらのオペラを今のうちに全て暗譜し自分のものとして消化できたことはこの半期の大きな成果です。

フィデリオなどのオペラや、モーツァルトのジングシュピール、オペレッタなどにはドイツ語での芝居が入ってきます。

芝居の素質は歌唱と同等に大事だと感じており、特に私のように現代音楽や現代オペラを主な柱としていきたい者にとっては歌手であると同時に女優であることはとても重要です。

細かいイントネーションや表情付けなどドイツ語での芝居を現在、オーストリア人の女優の先生に習っており、とても良い勉強になっています。

 

<フォルクスオーパー・ウィーンの舞台裏>

 
毎週土曜日にはフォルクス・オーパー・ウィーンでコレペティのレッスンを受けており、この劇場に通うことが私の一番の楽しみであります。

師匠である中嶋彰子先生がこの劇場の専属歌手を長い間なされていたということもありますし、エンターテイメント性が高く、子供やお年寄り、地元の人々から愛される暖かい雰囲気、また舞台裏で働く多くの方々が皆さん楽しそうに仕事をされている姿を見るのがたまらなく大好きなのです。

コレペティの先生とはアラベラ、ナクソス島のアリアドネ、魔弾の射手、リゴレット、ラクメなどすでに何本ものオペラを勉強しました。

先生の素晴らしいところは、習慣を常に疑い、楽譜に忠実でいらっしゃるところです。

0.1ミリの違いが音楽を格段に良くするのを何度も体験しました。

 

<フォルクスオーパー・ウィーンでの1枚>

 
時間がある日は必ずウィーン国立歌劇場やフォルクスオーパー、楽友協会、コンツェルトハウスなどに出向き、演奏会やオペラを聴いています。

ウィーンには世界から一流の音楽家が集まってきますので、良い演奏を頻繁に浴びることで自然と自分の耳が育ってきているように感じます。

劇場に通ううちにオペラ好きのご老人と仲良くなって話をしたり、裏方の方と仲良くなったり、面白い出会いもありました。

良い声、良い音楽の価値観が日本と異なることも、毎日劇場に通うことで分かってきました。

 

<シュテファン大聖堂での本番。この教会の信者以外はなかなか近くで見ることのできない祭壇を間近に見ることができました。>

 
この半期、墺日150年記念の能舞台でグレゴリオ聖歌を歌わせていただいたり、シュテファン大聖堂での本番や、学内のクラッセンアーベント、AKHというウィーンで一番大きな総合病院でのクリスマスコンサート、クリスマス当日には老人ホームを慰問したりなど、学内外でたくさん演奏させていただきました。

特に思い出されるのは、AKHと老人ホームでクリスマス・ソングを歌った際、入院患者の方々やご老人方、職員の方々が泣いて喜んでくださったことです。

音楽を聴いているほんの少しの間だけでも、日々の辛さや寂しさ、忙しさなどを忘れ、心に火が灯るような、暖かい気持ちになってほしいと思いながら歌いました。

私自身、音楽に何度も救われたことがありますので、演奏を喜んで涙してくださる姿は何よりも嬉しいものでした。

 

<学内クラッセンアーベンドの様子。リヒャルト・シュトラウスの歌曲とドンナ・アンナのアリアを歌いました。>

 
師匠である中嶋彰子先生は歌手であるとともに素晴らしい女優であり表現者でいらっしゃいます。

常に前へ進もうとする強いエネルギー、絶対に妥協しない精神力に圧倒されるばかりです。

先生のような真の芸術家になりたいと日々もがいています。

5月にはブリテンのオペラ 真夏の夜の夢ティターニア役を1本演じさせていただきます。声楽は器楽のような早熟の世界ではないため、歌手の勝負はまさにこれから。

さらに語学と声を磨き、2020年は必ずや大きく飛躍しますので、どうか見守っていただけますと幸いです。

充実した毎日を送ることができるのも応援してくださる方々のおかげです。

感謝の気持ちを忘れずに毎日精進いたします。