内面とより深く向き合い始めた奨学生2年目(森田啓佑さん)12/27
森田 啓佑さん/ Mr. Keisuke Morita
(専攻楽器チェロ:cello)
[ 2020.05.22 ]
学校名:ザール音楽大学
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の森田 啓佑です。
奨学生1年目には、ベルリンでゲリンガス先生に師事しておりました。
その後、ザール音楽大学音楽学部ソリスト科に合格し、ベルリンから電車で7時間かけて、フランスの国境に近いザールブリュッケンへ引っ越しました。
<ザール音楽大学にて>
ザールブリュッケン在住の日本人はとても少なく、大学には先輩の日本人が一人いるだけです。
ベルリンのような日本人コミュニティはないため、地元に溶け込むように部屋探しから始めました。
大学では、高校生の頃から憧れていたリヴィニウス教授のもとで学ばせていただいております。
教授はチャイコフスキーコンクールを制した強者でありながら、音楽同様にお人柄も本当に素晴らしく、耳も心も幸せな大学生活を送っております。
<ベルリン(左)からザールブリュッケン(右)への引越し>
- ●ザール音楽大学での勉強
5ゼメスタ(3年生)に編入しましたので、カリキュラムは専門課程のみです。
時間割からはゆとりがあるように感じられますが、空きコマには個人レッスン・室内楽・オーケストラなどが入り、練習の時間を考えるとかなり多忙な毎日です。
<大学での時間割>
カリキュラムの中では、即興演奏が特に面白いです。
見たり聴いたりしたものをすぐに音で表現するという授業で、初回には写真が何枚も提示され、私はその中から文楽の写真を選びました。
きっと私が受講するので、日本的な写真も用意してくださったのでしょう。
偶然にもチェロには黛敏郎氏の「文楽」という曲があり、私のレパートリーでもありますので、この時は写真からイメージする音を作ることはさほど大変ではありませんでした。
ところが、アメリカのエドワード・ホッパーの絵が課題として出された時は瞬発的なエネルギーを多く使いました。
ホッパーは物語性のある孤独を描く画家です。
この時は絵から感じたことをもの悲しい雰囲気のメロディで表現したつもりでした。
が、その絵の雰囲気を自分の中に取り入れて咀嚼し、メロディとして即座に押し出すという労力が必要でした。
音楽が自分の中から湧き出てくる感覚ではありませんでした。
内面も充実させ、音楽がほとばしり出るようなエネルギーで自分自身を満たしたいと思っています。
感情をより表現する海外に暮らし、感じたことをすぐに音で表現する授業を取ってみて、自分の気持ちを音楽にのせて伝えることの意味をより深く考えるようになりました。
音の表面をなぞるのではなく、より深い音楽を作り出すためにより深く思考し緻密な音を重ねていく、それが今の私に必要なことであると感じております。
- ●森田啓佑チェロリサイタル ユリシリーズ 2
これまでの留学の成果をご報告するために、森田啓佑チェロリサイタル ユリシリーズVol.2を開催いたしました。
<森田啓佑チェロリサイタル ユリシリーズVol.2>
地元の皆様をはじめ、多くの方々の応援・ご協力を得てシリーズ化している演奏会です。
プログラムのご挨拶には「留学前の集大成として2018年4月にユリシリーズ Vol.1を開催いたしました。
その2ヵ月後、住む部屋も決まらないままベルリンへ渡り、デービッド・ゲリンガス氏の門を叩きました。
~現在はザール音楽大学ソリスト科に在籍し、グスタフ・リヴィニウス教授に師事しています。~
ドイツで勉強を始めてから1年半、演奏がどのように変わってきているかを聴いていただくよいタイミングだと思いました。」と私の思いを込めました。
終演後には「演奏が堂々としてきた」「ピアノとのかけ合いもすばらしい」など温かいコメントをいただきました。
私自身は、リサイタルの準備から終演を迎えるまでの時間・エネルギーの配分が勉強になりました。
やるべきことがたくさんある中で、リサイタルで自分の最高のパフォーマンスを提示するために、どのようにスケジューリングしてゆけばよいかが課題の一つです。
私の成長を皆様にご報告し、皆様に成長を見守っていただく演奏会とこのシリーズを位置づけ、また聴きたいと思っていただけるように、今後も邁進してゆきたいと考えております。
引き続き、ザールブリュッケンでの音楽生活を温かく応援・ご支援してくださるローム ミュージック ファンデーションの皆様には、心から感謝申し上げます。