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中間レポート(菅沼起一さん)11/27

菅沼 起一さん/Mr.Kiichi Suganuma
(専攻楽器音楽学/musicology)

[ 2020.04.15 ]

学校名:バーゼル・スコラ・カントルム

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の菅沼起一です。日頃のご支援に心より感謝申し上げます。
スイス、ドイツ、フランス三国の国境が交わる街、バーゼルでの生活も2年目に入りました。

私は、2018年よりバーゼル・スコラ・カントルム Schola Cantorum Basiliensisという教育機関に留学しております。

今回は、私の留学先と、そこで学んでいることの紹介をしたいと思います。

<バーゼル音楽院>

 

バーゼル・スコラ・カントルム(以下、スコラ)は、バーゼル音楽院 Musik Akademie Baselの一機関です。

古楽(中世、ルネサンス、バロックなどより古いレパートリー。

さらには、同時代の楽器や奏法、音楽理論などを用い演奏する方法論を指す言葉)に特化した機関であり、私は、音楽理論科という専攻に在籍しております。

古楽とその演奏を学ぼうとすると、単に当時の楽器や奏法を用いるだけではなく、バックグラウンドとなる様々な事柄が、いわゆる「モダン」の勉強とは異なってきます。

例えば、音大で学ぶ楽典も「それぞれの時代に合った音楽理論(例えば、16世紀の対位法、17、18世紀の通奏低音をベースとした作曲理論など)」に、ソルフェージュも所謂「シ」を用いないソルミゼーションになり、そもそも楽譜の書かれ方、読み方も現代と昔のものでは全く異なるため、各時代の記譜法を学んだりします。

そのような、演奏に必要不可欠なバックグラウンドに関する事柄を専門的に学び、現代においていかにそれらを教えていくか、その教育メソッドについて研究することが、音楽理論科での主な勉強内容となります。

 

<7月にバーゼルで行われた中世・ルネサンス音楽学会での学会発表の様子>

 
音楽理論科の学生の一週間は、自分の専門研究(私の場合は、16〜18世紀に盛んに用いられた「ディミニューション」という装飾技法です)に加え、ただひたすらにスコラで開講されている山のような授業を履修することで終わります。

歴史的作曲技法、記譜法、音楽理論史、ソルミゼーション、即興対位法などなど、1年目は一週間で計16コマもの授業がありました。

平日は朝から晩まで授業、それが終わったら帰って課題と自分の研究、土日も課題と研究…と、息つく暇もないほど忙しく充実した日々を、今でも送っております。

 

<授業を担当した記譜法の資料(15世紀)>

 
2年目からは、これらの授業を「受ける」ことに加え、授業代行、つまり授業を「する」ことも増えてきました。

これも音楽理論科の修了要件単位であり、10月には同じスコラの学生を前に、100分間の記譜法の授業を3日間担当しました。

研究者として、自分の専門分野の研究を進める一方、このような古楽演奏に必要なバックグラウンドの教育活動を日本でも行っていくことが夢でもある私にとって、スコラはこれ以上ないほど素晴らしい環境です。

冬時間となり、凍える寒さといつ見上げても広がる曇天に気が滅入る毎日が続いていますが、こうしてご支援いただけることでここでの勉学が続けられていることに感謝し、引き続き精進して参ります。