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中間レポート(深瀬廉さん)3/25

深瀬 廉さん/Mr.Ren Fukase
(専攻楽器バリトン/baritone)

[ 2019.06.7 ]

学校名:ベルリン芸術大学大学院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の深瀬 廉です。
いつもご支援賜り、心より感謝申し上げます。

昨年9月にベルリン芸術大学大学院オペラ科を修了した私は、兼ねてから願っていた歌曲の演奏技術と知識をより深めるべく、同大学院のLOK科(歌曲・オラトリオ・演奏会科)に入学いたしました。

オペラ科とも違った専門性の高さを求められる環境に身を置くことで、気持ちも新たなスタートとなりました。

<10月の「カイロのガチョウ」共演者との1枚。それぞれの役柄になりきった結果、私は独りになってしまいました。>

 

 

ありがたいことに10月、11月と立て続けにベルリン交響楽団と演奏する機会を頂きました。
10月はモーツァルトの未完のオペラ「カイロのガチョウ」を演奏会形式で演奏しました。

1幕しか作曲されることのなかったこのオペラは、それだけでも物語が成り立つように、作曲家の死後に新しい台本・歌詞を当てがわれていると言う稀有な作品です。

楽譜を見るとモーツァルトがつけた歌詞と、その死後にあてがわれた歌詞の二つが一つの旋律に記載されていたので、そのことを知らなかった当時、共演者たちとどういうことかと頭を悩ませたのはいい思い出です。

 

<1月の演奏会の様子。初メフィストーフェレでした。>

 

11月はフランスの夭逝の天才女流作曲家リリ・ブーランジェと、ドイツの作曲家フォン・アイネムの作品を演奏しました。

特にブーランジェの作曲した「ファウストとエレーヌ」ではメフィストーフェレを歌わせて頂いたのですが、これはとても嬉しい機会でした。

他の作品では、悪魔メフィストーフェレは私の声よりも少し重めの方に歌われることが多いため、この偉大なる悪役を歌う機会は私にはなかなか回ってきません。

ですからこの貴重な機会のために、メフィストーフェレの役柄を少しでも理解しようとゲーテの「ファウスト」から勉強をして臨みました。

 

大学では「詩人の恋」を中心にシューマンの歌曲やバラーデと、ドビュッシーやラヴェルといったフランス作曲家の作品を学んでいました。

「詩人の恋」くらい有名な曲となると、やはり歌曲の先生方は何百回もの演奏経験があるため、各人の解釈が細かなところで多様であるところから学ぶ部分がありました。

議論になることもしばしばですが、その中から真の自分の解釈が生まれてくると思えば、必要な過程です。

フランス語の作品についてはまだまだ発音や音楽の作り方など技術的に至らない部分が目につくため、精進のより必要な分野だと感じています。

 

今年の1月にはデュッセルドルフの日本人学校で歌わせていただく機会をいただきました。

ドイツに住んでいる子供たちですから、日本の童謡や歌曲を聞いていただきたかったので山田耕筰の曲を中心にプログラムを組みました。

作曲家や曲について説明している間も、集中力を欠かさずに聞いてくれている姿にはこちらも嬉しくなりました。

そして最後に生徒さんたちで披露してくれた合唱も素晴らしく、心を打たれた経験となりました。

 

<ベルリン中がライトアップされた、「光の祭典」の様子。新進気鋭なプロジェクトです。>

 

ここベルリンには3つの大きな歌劇場があり、30歳以下であれば格安でオペラを見られる制度も整っています。

本当にありがたいことです。

このシーズンに見たオペラの中でも、コーミッシェオペラ座の演目「エフゲニー・オネーギン」は光っていました。

タチアーナの感情がオネーギンをはじめとする周りの人物の立ち回りによって詳細に描かれ、演出と歌手始め、オペラ座がチームとして一体になっている、素晴らしいプロダクションでした。

私も早くこのような芸術に携わりたい、と奮起させられる一夜でした。

6月には歌曲の審査会があります。
私もあのオネーギンの舞台のような、まるで歌を歌と感じさせないような表現を目指して、これからも地道に一歩ずつ、励んでまいります。

 

 


海外で海外の歌曲だけでなく、日本の歌曲を披露することはお互いの文化の交流になり、良い機会ですね。 これから様々なプロジェクトに参加できることを祈っております。