異文化との出会い(櫃本瑠音さん)1/29
櫃本 瑠音さん/Ms. Rune Hitsumoto
(専攻楽器チェロ/cello)
[ 2019.04.5 ]
学校名:パリ地方音楽院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の櫃本瑠音です。大変お世話になっております。
おかげさまで、去年の10月からパリ地方音楽院でチェロの勉強に打ち込んでいます。
<レッスンの様子>
パリには以前から何度か訪れ、一目惚れをし憧れていた街ではあり ますが、住み、学ぶとなると毎日が驚きの連続で、音楽以外にも多くを学んで いる最中です。
その一つが、日本とフランスの自己主張の違いです。留学早々体験したエピソードを二つ紹介させてください。
制度的にはフランスでは留学生は厚遇されています。
安い授業料はフラン ス人と同じで、その上、アロカと呼ばれる住宅補助をフランス人同様に受ける ことができます。
ところが、留学生に課された義務である滞在許可の申請書提 出では、指示通りの日時と場所に早朝から足を運び、寒空の下数時間以上待たされたにもかかわらず、事務局の都合で3度も一方的に門前払いをくらいまし た。
涙ながらに訴えてやっと4回目に受理されました。
日本にいる時のように、こちらが困っていれば先方がそれを組んでなんとかしてくれるという甘え はフランスでは全く通用せず、自分の言いたいことを強く主張しないと誰も助 けてくれないと身にしみて知りました。
<滞在許可証を申請するのに何回も行ったシテ大学>
11月には、黄色いベストを着た人達がマクロン大統領の経済政策に反対を してデモをし、シャンゼリゼ通りは警察隊との衝突で戦争状態になりました。
当日、用事があり近辺を通ったのですが、催涙弾と放水で交戦状態になっているデモ隊に巻き込まれ、本気で身の危険を感じました。
一瞬自分はタイムトリ ップしてフランス革命の真っただ中にいるのかと錯覚しました。
日本でもデモはありますが、ここまで大規模で暴力的なものは見たことがありません。
生活上の不満をあからさまなデモで主張し、暴力に訴える人も多くいた事に驚きました。
海外にいると、日本の良さも見えてきます。
<私の1番のお気に入り、パリの夜景>
かと言ってフランスに失望したわ けではなく、私が一目惚れしたパリも健在で、日常的に目にする風景や建築物に、フランスの伝統的な美的感覚を感じます。
街のあちこちに偉大な芸術家の足跡があり、私が通うパリ地方音楽院は、あのフォーレが創設に関わり、校舎 はモネが好んで描いた駅舎のすぐ近くにあります。
学校ではソロのレッスンに加え、オケとアンサンブルの授業があります。
チェロの先生からは、今まで私がないがしろにしていた部分を細かく、徹底的に指導していただいています。
アンサンブルやオケでは、日本と違った音楽のま とめ上げ方をするので、多くの発見と戸惑いがありました。
やはり学校でも、 自分の言いたいことを明瞭に相手に伝えるのが私は苦手で、「言わなくてもわ かってくれるだろう」という日本的な意識を捨てなければなりません。
自分の伝えたいことを100%わかってもらうために、フランス語の勉強にももっと力を入れたいと思っています。
音楽活動は2018年の年末に、神戸松方ホールにてドボルザークのチェロコンチェルトを弾きました。
2019年はスイスでのコンサート出演が決まっており、2月にはパリで行われるコンクールに参加します。
夏にもヨーロッパで行われるコンクールに参加する予定です。
私がパリでチェロを学べるのは、多くの方々のおかげす。
それを忘れず、ますます奮闘して行くつもりです。