まだ始まったばかりのベルリン研鑽2ゼメスター目(小林壱成さん)5/31
小林 壱成さん/Mr. Issei Kobayashi
(専攻楽器ヴァイオリン/violin)
[ 2018.07.20 ]
学校名:ベルリン芸術大学大学院
ロームミュージックファンデーション奨学生の小林壱成です。
おかげさまで、ベルリン芸術大学での学びも2ゼメスター目に入りました。
<オーケストラリハーサル>
年明け以降はレッスンや授業、クラスコンサート、教会での合唱コンサート、オーケストラコンサート等の他にも、ドイツ語の資格試験合格を目指してとても忙しい毎日でした。
春の休暇中には、日本で「東京・春・音楽祭」など6つのコンサート出演を通じて新しいレパートリーの勉強するほか、ベルリンから小さな旅に出てみました。
「沢山のことをやりすぎずに、少しゆったりするように」と先生からアドヴァイスを受け、
ベルリンに籠って練習しているだけでは、ヨーロッパの文化歴史、自然を体感する機会という意味でもったいない、行ってみようという気持ちです。
地図で見て驚きましたが、例えばベルリンからオーストリアのウィーンは直線距離で、だいたい東京から神戸の少し先くらいという近さです。
ベルリンからスイスのチューリヒは、直線距離で東京から広島くらい。
同じようにフランスのコートダジュールは、東京から長崎の少し先くらい?
スペインのバルセロナは大雑把に東京から那覇くらいです。
ヨーロッパとはこのくらいの広さに、なんと多くの国があって様々な人種が交じり合って生活しているのでしょう。
<部屋の窓から4月>
陸続きの国なのにこんなにも違うのか。
まず建物の色形が違う、そして人が違う。
地中海沿岸のイタリアからフランスのニースへは格安バスで3時間くらい移動しましたが、窓から眺めていると赤く石のゴツゴツとした男性的な建物から、みるみるうちに淡いレモン色の、窓も小さめで曲線が繊細な女性的な建物へ様子が変わります。
イタリア人のトラットリアの店員さんは溌剌として「こんにーちはー!何飲むー?何食べたいー?これー?今日ないんだよねー!これ美味しいよー!お会計―!?100万えーん!!(冗談)」という感じ。
フランス人のビストロの店員さんは物腰柔らかく、「ムッシュー、何にいたしましょう。こちらですね、かしこまりました。お飲み物はいかがいたしましょう、ムッシュー」という感じ。
暖かい笑顔で丁寧に対応してくださいました。個人差はもちろんあるでしょうけれど。
<バルセロナ アントニオ・ガウディ建築 「サグラダファミリア(聖家族教会)」><バルセロナ アントニオ・ガウディ建築 「バトリョ邸」>
初めてのスペイン・マヨルカ(ショパンが病気療養に滞在したという島)やバルセロナはまたかなり違っていて、ヨーロッパとイスラム文化が混ざったような、どこか乾いた石造りのヨーロッパの建築物。。
昔スペイン領だったフィリピンや中南米からの人々もたくさん溶け込んで生活している感じです。フラメンコのリズム感を見に行きました。
奇才ガウディの建築や庭園も見学し、類い稀な曲線美へのこだわり、構造の自由な発想に驚き感動しました。
サグラダファミリア教会ではガウディと、彼の死後、様々な芸術家が建設に携わり、様々に異なるマテリアルで一つの教会を作っている途中経過を見ることができましたが、1人1人の芸術家はこうまで違うのか、違っていいのだということを感じました。
<スイス ルツェルン湖>
スイスでは、せせらぎや草地の風景が広がり、そびえ立つアルプスや大自然に悠久の時を感じて心が洗われるようです。
いくつもの大きな湖のほとりの小さな街がルツェルンでした。
ドイツの王が、この先のゴッタルド峠を越えなければローマに行くことができなかったため、交通の要衝としてスイス発祥の地域となったそうです。
ドイツ語圏なので、湖沿いのカフェで店の人とドイツ語で会話していると、犬の散歩の途中に休憩している人たちが驚いて小声でブラヴォ!とにこやかに振り向いて行きます。
時間がゆっくりと流れ、ドイツでも見かけるような木組みの家々に、角笛や、ヨーデルを歌う民族衣装の女性。
これは以前ザルツブルグのセミナーに参加した時に見たものと似ており、国境はあっても地図でそこから東へ進めばザルツブルグですから、同様な文化圏なのだと思います。
どこもベルリンから格安LCCで1~2時間前後なのに、ここまで文化が違うのかと驚きました。
そして、どこでも歴史の長い時を感じて圧倒され、今ここに生きている自分のことを自然と考えさせられます。
<本番はベルリン「フィルハーモニー」コンサートホールにて>
さて、学校が始まるのは4月の半ばからです。
5月初めは、ベルリン芸大のオーケストラでベルリンフィルの本拠地「フィルハーモニー」にて、満員のお客様の中、マーラー交響曲第9番を演奏。
オーケストラの授業にはベルリンフィルの先生もいろいろと教えに来ていたりです。
初のフィルハーモニーでの演奏はとても楽しく、友人知人が増えたことも有意義でした。
いつも感じますが、ベルリンは通勤通学時間の平均が約30分くらいだそうで、皆仕事が終われば1度帰宅してから改めて夜に出かけることが容易です。
コンサートホールも、開演の1時間以上前から開いていて、みな知り合いや家族などと軽食や会話を楽しんでいます。
夜はいつまでも日が長いので外出する気持ちになるし、コンサートも夜8時から、10時からなど普通です。
それでも東京と違って、近いのですぐに家に帰ることができるし、交通も夜中でも便利です。
またドイツ語学校で検定試験を受け、B2資格を取得しました。
ベルリン芸術大学は入学後2ゼメスター以内にB2を取得できないと強制退学なので、内心ひやひやモノでしたから、合格してほっとしました。
楽器と向き合う時間も増えるので、これからさらなる研鑽に努めます。
5月末にはベルリン芸大のオーケストラで初コンサートマスターとして指名され、モーツァルトのレクイエムを演奏したり、6月以降にはピアノのパスカル・ドヴァイヨン教授の「ドビュッシーと、その関連作曲家たちの曲集」の門下生コンサートで、「ドビュッシーのピアノトリオ」と「ヴァイオリンソナタ」、「ラヴェルのヴァイオリンとチェロのためのソナタ」を弾かせていただく予定です。
もちろんピアノの方と一緒にドヴァイヨン先生のレッスンを受けることができます。
10月に入学した時には、右も左もわからない、知人もあまりいないという状況でしたが、今や学生として環境に溶け込み、日々が回り出してきました。
<ベルリン 合唱コンサートに出演した教会>
<夜のベルリン大聖堂>
まだ留学は始まったばかり。ドイツに滞在している間にできることは全てやり、たまにはのんびりしたりして研鑽し、自分を高めていくつもりです。
このような得難い経験が出来ているのも、日頃から大きな応援をしてくださるロームミュージックファンデーション様のおかげです。
心より感謝申し上げます。
そして、日本を飛び出して大きな世界を見て勉強することで、どんなに計り知れない影響があることでしょうか。
自分の世界も一気に広がり、新しい段階にいるという感じです。
世界の中の日本の一人ということも、意識して日々考えるようになっています。