得たこととこれから(務川慧悟さん)
務川 慧悟/Mr. Keigo Mukawa
(専攻楽器ピアノ/piano)
[ 2017.06.29 ]
学校名:パリ国立高等音楽院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の務川慧悟です。
奨学生として書かせて頂くレポートも、これが最後となりました。
<パリ、セーヌ川!>
新しいことの連続に右往左往しながら始まったパリ国立高等音楽院での学生生活ですが、早くも3年間の学部生としての終わりが近付き、今は5月半ばの卒業試験を控え、その準備に取り組んでいます。
この学部生の間に経験したことを振り返ってみると、数え切れないほどの喜びと苦労があり、そしてどちらかというと苦労の方が多かったなぁという心地がしていますが、でも、というより、だからこそ、本当に内容のある3年間だった、と自信を持って断言できる自分が今ここにいることが、非常に嬉しいです。
と言っても、来年度は、エスカレーター式で上がることのできる修士課程にそのまま進む予定でおり、パリでの勉強はまだしばらく続くことになりますが!
<上海でのリサイタル。リハーサルにて>
演奏活動におけるここ約半年間でのかけがえのない経験としては、日本以外の多くの国での演奏機会を頂けた、という点にあります。
パリでの演奏をはじめ、ミラノでのソロ演奏、南スイスの街でのリサイタル(ヨーロッパでリサイタルをさせて頂くのはこれが初めてでした!)、そして上海音楽院で行われたとあるシンポジウムでのリサイタル(800席もあるホールが一杯になりました!!)と、有難いことに多くの経験をさせて頂く中で得た一つの貴重な感触というのが、「国による違い」。
つまり、国によって土地によって空気や気候が異なることから生まれるピアノの基本的な状態・特徴の違い、建物の構造や素材の違いから生まれる響きの違い、そして国籍によって変わるお客様の反応の違い、です。それらの違いに合わせて、その時々で演奏の仕方を微妙に変化させていかなければならない(変化させてもよい)ということに気づいた時、あぁ演奏とは楽しいなぁという感覚が、今まで以上に増しました。
<スイスでリサイタルをした、ロカルノという街>
さて、奨学生として生活させて頂く中で得た沢山のこと、それらをこの場で言葉として簡潔に表してしまうよりは、実際の演奏の場でそれらを表現したい、という思いの方が強いですが、何よりも、自分の音楽の糧として「これをしたい、あれをしたい」と思い立った時に、それを、(出不精の僕が)迷うことなくすぐ実行に移してこられたこと、それがいつも嬉しかったですし、ローム ミュージック ファンデーション様に心の底から感謝しています。
演奏家としての終わりのない歩みの中で、奨学期間に得たことが数十年先になって生きてくる、ということもあると思いますし、そうである生き方をこれからずっとしてゆきたい、と思っています。その過程の中で、僕の演奏を皆さまに聴いて頂ける日が訪れましたら、嬉しいです。