奨学生レポート RMFレポート ミュージックサロン インタビュー

最終レポート(沼沢淑音さん)

沼沢 淑音さん/Mr.Yoshito Numazawa
(専攻楽器ピアノ/piano)

[ 2014.10.20 ]

学校名:チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の沼沢 淑音です。

奨学金を頂いていた期間を振り返ってみると、色々なことがありました。

モスクワの冬は強烈で住んでいると音をあげたくなる時がありますが、いったい数年後懐かしく感じる時がくるのでしょうか。

numasawa

ヴィルサラーゼ先生からは言葉では言い表せないほどたくさんのことをうけとりました。
その一つはディティールへの本当に細かいレッスンでそれはここずっと6年間変わりません。
瞬間の産物である演奏と時間感覚の違う映画芸術を比較することは滑稽なことかもしれませんが、黒澤明監督は見る人がほとんど気がつかないようなところにも病的なほど気を配りました。
30秒のシーンに8ヶ月かけたり、古びた農家の質感を出すために、木材の表面を燃やしてから水で洗って木目を浮かび上がらせて着色後にワックスで艶を出したり、お百姓さんの衣装の着物を一度土に埋め、数日後に取り出してからタワシでこすって古さを出したり。

或はヘリコプターを使って森を着色して調節したり、とあげたらきりがありませんが、そのようなディティールについてのこだわりがありました。
それは見ていて気づくものでもありませんが、明らかに無意識の中に入り込んでいくものだと思います。

音楽は無意識の領域なのでそのようなことはとても大切なことのように感じます。
ただ単に憧れでしかないのですがガボーを弾いて録音したいという夢があって、いつかそんな日が来たらいいなと思っています。その楽器はあたかもウイスキーに闇がさしたような音がします。

もちろんその演奏者のせいにもよるのかもしれませんが。
これから音楽を学ぶ方へのアドバイスとのことですが自分のような未熟者にはそのようなことはできませんし、言葉もなかなか出てきません。
ただ、僕の夢は色々な時代の巨匠たちの演奏を聴いていて自然に湧き上がってきました。
作曲家にバッハからのつながりがあるように、無から有は生まれないと思います。
古い時代の演奏を聴くことも悪くないことなのかもしれません。
最近になってその人たちが想像もできないとんでもないところに住んでいたんだと強く感じます。
ただ単にコンクールのような目先のことだけにとらわれず大義からはずれないように精進していきたいと思います。
最後にご支援くださったロームミュージックファンデーションの皆様に心より感謝申し上げます。

 

 


芸術というのはそれぞれの考え方があるとは思いますが、共通して何かを突き詰めることで素晴らしいものが生まれるのでしょうね。ぜひこれからも理想を追い続けて素晴らしい音楽を多くの方に届けてください。