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奨学生期間を振り返って(中橋 祐紀さん)8/31

中橋 祐紀さん/Mr.Yuki Nakahashi
(専攻楽器作曲/composition)

[ 2022.09.9 ]

パリ国立高等音楽院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の 中橋祐紀 です。

 

今年3月には音楽院内にて初演が続き、少し慌ただしい生活でしたが、それが終わってからはかなり時間にゆとりができました。

今年度予定していた作品制作が全て終了し、あとは毎週の授業を受けつつ年度末の試験に向けて準備をする、というスケジュールとなったのです。

あまり大きなイベントはありませんでしたが、この間に行ったこと、考えたことを率直に書いてみたいと思います。

 

 

 

まず試験の内容について簡単に紹介します。

2022年現在の作曲科第一課程の2年次では大きく分けて3つの試験を受けることになります。

コンピューターを用いた音楽制作に関する試験、今年度制作した作品についてプレゼンをする試験、そして音楽分析の試験です。

いずれも口述試験で、自分の知識や意見をよく整理しておく必要がありました。

 

例えば音楽分析では、与えられた楽譜を1時間で分析して15分ほどで発表するという初見の試験、それから自分自身で作曲した作品について40分ほどで説明するという試験が課されます。

自分にとってはもちろん簡単な試験ではなかったのですが、音楽の構造や特質についてフランス語で考えをまとめるというトレーニングを通して、音楽をより分析的に聴く力が身についたように思います。

加えて、音楽分析のための、フランス語ならではの表現にたくさん触れられることは、自分の知的好奇心を大いに刺激するものでした。

 

 

試験の他にもう一つ取り組んだことがあります。

最初に述べたように、春頃から生活にすこし時間ができたのですが、これをいい機会と捉え、ジュネーブ国際音楽コンクールに挑戦することに決めました。

スケジュール的にはぎりぎりだったのですが、今回は6人の声楽アンサンブルのための作品が課題となっており、あまり作曲機会のない編成だったので、思い切って作曲を始めました。

結果的に、幸運にもファイナリストに選出され、今年秋に演奏されることが決まりました。

 

<移動中に曲のアイデアをメモしている様子>

 

 

作曲にはしばしば困難が伴います。

例えば、基本的にこのような作曲コンクールでは作品が演奏されることのほうが稀で、少なくとも私にとっては、最初から発表機会を当てにして参加できるものではありません。

しかし、音符を紙に書いて自分の思考を形にするという作業は、生涯を通じて大切にできる、誰にも奪われえないものであり、そしてそれがときどき他の人の目に留まり、新しい音楽を聴くよろこびを分かち合えるのであれば、これほど楽しいことはありません。

ここ2年間の留学生活を振り返ると、地道に作曲に取り組む期間が長かったように感じますが、ときどき与えられる発表機会では素晴らしい演奏に恵まれ、また好意的な反応もいただきました。

そうしたなかで、私が大切にすべき作曲への取り組み方を再確認できたように思います。