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ローム ミュージック ファンデーション奨学生としての月日(山下 愛陽さん)8/31

山下 愛陽さん/ Ms. Kanahi Yamashita
(専攻楽器クラシックギター/classic guitar)

[ 2022.09.2 ]

ベルリン芸術大学、ニュルンベルク音楽大学

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の 山下愛陽 です。

まずはじめに2020年度9月よりの2年間、多大なるご支援を賜りまして、誠にありがとうございました。

 

<2022年5月ニュルンベルク音楽大学においてヴィラ・ロボスの協奏曲を演奏>

 

 

私はこの2年の間にベルリン芸術大学修士課程を修了し、その後はニュルンベルク音楽大学に進学し、以前から師事したかったリュート及びテオルボ奏者のビョルン・コレル氏にのもとで現在古楽を中心に学んでいます。

ベルリンからニュルンベルクは電車で3時間20分ほどかかり、学期中はほぼ毎週通っているのですが、車窓からドイツの景色を眺めてしばしゆっくりとした時を味わったり、落ち着いた時間を利用して普段から溜まっている用事を済ませたりと、移動はまったく苦にならず、着いた先では素晴らしいレッスン、楽しい室内楽のリハーサルと、毎週の日帰り旅行を満喫しています。

 

この2年間は技術的なことよりも、演奏解釈についての教授との議論を通して曲の分析や音楽理論的理解が深り、また参考文献を読むときのポイントを勉強したことにより、限られた時間でより多くの知識を身に付けることができるようになりました。

 

<メキシコ国際ギターフェスティバル、マスタークラスの様子>

 

 

コンサート活動も昨年10月から再び頻繁になり、より多くの地域の様々な企画で演奏する機会に恵まれ、経験を積み、今後のキャリアに大切な基盤を築いています。

異国に留学して、語学習得やビザ、各種手続き、文化の違いに戸惑ったりと苦労も多いですが、下手なドイツ語で恥を書きながらも、とりあえず片言でも積極的に人々に話しかけた結果、知人が増え、困ったときに手を差し伸べてくれる人々に恵まれたとても幸せな留学生活を送っています。

例えば、去年受けたコンクールの会場で自分から声をかけて、愛用している弦メーカーとスポンサー契約を結び、今後弦を無料で提供していただけることになったこと、居住しているアパートメントの下の階からの出火という騒動に見舞われた際に、ドイツ語の手助けや必要な専門家の紹介をしてくださった方々との出会いなどです。

 

また、コンサートの依頼を受けた時、あるいは自主企画をする為のホール予約のやりとりなどにおけるコミュニケーション能力も歳月とともに培われてきました。

音楽大学での勉強は、周囲のレベルが高ければ高いほどお互いに刺激しあって目標をさらに高めていくことができる一方、似たような環境で普段生活しているため、挑戦することや与えられる課題、アドバイスも類似してくるため、その中で自分なりの工夫を凝らし、自分らしい演奏や演奏活動内容というのを在学中から追求することが大切だと、ここ数年強く感じています。

演奏技術の高い人がたくさんいるなかで、音楽の解釈表現はそれぞれ異なり、それこそが面白く肝心なところですので、はっきりとした自分の意見、希望に沿う形で探求することを常に忘れないようにしたいです。

これは、これから音楽を勉強する方々にもぜひ重要視していただきたい観点です。

 

<メキシコ国際ギターフェスティバルのコンサート会場>

 

 

私はドイツでの生活も8年目に入り、今後も引き続き、クラッシック音楽の中心であるヨーロッパを拠点に、世界各地で自分らしい演奏ができるように精進していこうと思っています。

同じ曲でも向き合う度に新たな発見があり、完璧なゴールというものがないのが音楽家の人生だと思います。

自己満足に陥ったり、次なる目標を見失ったりすることのないよう、常に向上心を忘れない演奏家になりたいです。

 

あらためまして、2年間多大なるご支援を賜り、誠にありがとうございました。

今後ともロームミュージックフレンズの一員として、様々な企画や貴財団の活動に携わらせていただくことを心より楽しみにしています。

どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。