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新しい場所で(向井航さん)10/10

向井 航さん/Mr.Wataru MUKAI
(専攻楽器作曲/composition)

[ 2021.12.24 ]

学校名:マンハイム国立音楽舞台芸術大

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の 向井航 です。
常日頃から多大なるご支援を賜り、心より感謝申し上げます。

秋が深まると共にコロナの自粛が段々とゆるくなり、ヨーロッパでも徐々に音楽活動の再開が許可されました。

 

コロナの緩やかな終結と共に約5年間勉強させて頂いたマンハイム国立舞台芸術大学から離れ、心機一転、自分の音楽を追い求めるべく、オーストリア・ウィーンの地に活動の拠点を置くことを決めました。

 

<大学は、ウィーンから1時間ほど電車で行ったところにある、リンツという街ににあります。>

 

この長い、コロナ自粛の中、作曲家の私も例外でなく、多くの演奏会の中止や初演の延期になりました。

そのため私はその時間を作曲に当てるだけでなく、論文の執筆を合わせて行いました。

論文の執筆を行うことで、私の作曲における哲学をより深めることで、自身の作曲実践をより高度なものにできると考えたからです。

アーノルド・シェーンベルグが「グレの歌」を完成させて、調性の放棄を始めたのも、今まさに私と同じ時期です。

作曲家として私が今、次のステップに向けて一歩踏み出すには、今が最適であると考えました。

そのために、まず、私がこれまで実践してきた研究を形にしたい、よりアカデミックなものにしたい、という思いが芽生え、博士課程の受験を決意しました。

 

欧米の博士課程の受験では、事前に二人のスーパーバイザーにプロジェクトを相談し、プロジェクトの監督の承諾を貰う必要があります。

私は作曲と論文執筆の両方が行える博士課程に焦点を当てていたので、中でも自分の研究をバックアップしてもらえそうな大学の教授とコンタクトを取り、話し合いを行いました。

また兄が先に博士課程で研究を初めていたこともあり、様々な面で相談に乗ってもらいました。

 

<兄と東京にて>

 

そのあと承諾書と共に履歴書や研究計画書などを提出し、書類審査に合格すると、その一ヶ月後に二次試験が行われます。

そこでは、研究の発表が20分、質疑応答が30分ありました。今回はコロナのため、全て試験がオンラインで行われたため、ドイツの自宅から参加することが出来ました。

 

結果は合格!オーストリア・リンツとスイス・ベルンの両大学の博士課程で研究活動を行うことになり、合格後すぐに家を探し、先日こちらに引っ越して来ました。

新しい家、新しい国…初めての環境に少し戸惑いましたが、5年前初めてドイツに来たことを思い出し、身が引き引き締まる思いです。

 

<大学が山の上にあるため、中庭からのどかな風景が見えます。>

 

ロームミュージックファンデーションからご支援頂いた2年間の大半が、コロナのパンデミックに見舞われ、音楽活動の制限を余儀なくされました。

しかし、その時間で自分をもう一度見つめ直し、新たな側面から作曲活動を続ける決意に至りました。

今までの環境を変えて、新しく挑戦するのには非常に勇気のいることですが、自分にとって、より新しい、より面白い音楽を追求するためには常に変化が必要です。

同時に、自分を支えてくださってくださる周りの方々への感謝を忘れずに、精進し続けたいと思います。

 

最後に、ローム株式会社及びロームミュージックファンデーションの皆様による多大なるご支援のおかげで、大変充実した留学生活が送れました。

心より感謝申し上げます。二年間本当にありがとうございました。