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コロナ禍での音楽(リード希亜奈さん)8/31

リード 希亜奈さん/Ms.Kiana Reid
(専攻楽器ピアノ/piano)

[ 2021.10.27 ]

学校名:バーリ ニッコロ・ピッチンニ ” 国立音楽院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生のリード希亜奈です。
2020年度は私にとって大学院修了という一つの大切な節目となる年、研究以外にもコンサート活動やコンクール参加等、悔いのないよう積極的に行っていこうと胸が高鳴っていました。
そういった気持ちも虚しく 2020 年はあらゆる機会が中止、または延期となってしまい、私にとってもこの先一生忘れることのない一年となりました。

<家から徒歩10分の海>


 
イタリアは感染者も死者も一気に増加し、これまでに見たことのない光景を幾度となく目にしました。

人々の本質を垣間見、自分の存在価値に落ち込み、音楽とは、 そして音楽を通して世の中のために出来ることとは、など厳しい現実に直面したことで改めて深く考えさせられました。

 

<卒業試験終了後に恩師のパスクァーレ・イアンノーネ先生と>

 

修士論文はリストのソナタを中心に書いたのですが、以前から覚悟はしていたものの、イタリア語で 50 ページの論文を書き上げるのは想像以上に大変でした。
自宅に籠る時間が増えたことで 何とか 助かった、とも言えるかもしれません。

日本語や英語、イタリア語で 様々な文献や論文をたくさん読み込むことができたのは大変貴重な時間になりましたし、リストのソナタは以前勉強したことがあったにもかかわらず驚く程沢山の新たな発見があり、楽譜以外の情報と向き合う時間もこれまで以上に大切にしていきたいと感じました。

本や資料だけでなく論文を読むということが本当におもしろかったので、これからも多角的に継続して読んでいきたいと思います。

イタリア語に苦戦しつつもなんとか書き上げた論文の提出後は 体調を崩してしまう程でしたが、卒業試験当日のプレゼンテーション、そして演奏も何とか無事にやり切り 、結果として満場一致の満点、賞賛付きの最高点で卒業することができました。私なりに本当に様々なことを乗り越えながら必死に過ごしてきた 2 年間でしたので、結果をいただいた時は感無量でした。

 

<スタジオの様子>

 
2020 年、 イタリアは長期的なものや短期的なものも含め何度もロックダウンになったこともあり、リサイタルやコンサートは開催することが叶いませんでした。

しかし 2021 年度になって 、イタリアにて時々通っていたスタジオの経営者の方と私の恩師、パスクァーレ・イアンノーネ先生との計画により、私を含めた門下生 15 人が参加させていただき、皆 で CD を作成しました。

イタリアでは音源配信サイトでも聴けるようになっており、コンサートが出来なかった代わりに少しでも沢山の方に皆の素晴らしい音楽が届くのかと思うと大変嬉しい気持ちです。

コロナ禍でライブでのコンサートが出来なくても、様々な媒体を通して演奏していくという柔軟な行動力は、今の時代においては不可欠であるなと実感しました。

当初予定されていたヨーロッパでのツアーも再びの感染拡大により来年に延期となってしまいましたが、8月下旬に出演させていただいたスカラシップコンサートではオンライン配信にて開催してくださるなど、状況が悪化した中でも違う形で舞台に立たせていただく事が出来るようになってきており、大変有難く思っております。

 

パスクァーレ・イアンノーネ先生との勉強はこれからもソリスト科にて続けていく予定ですが、あとまだもう少し国際コンクールにも挑戦しつつ、状況をみながら柔軟に、そして積極的に行動し、沢山演奏していきたいです。