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ベルリンでの日々に感じたこと(佐藤元洋さん)5/31

佐藤 元洋さん/Mr. Motohiro Sato
(専攻楽器ピアノ/piano)

[ 2021.09.6 ]

学校名:ベルリン芸術大学 大学院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の佐藤元洋です。
今年の冬は、とても長かったように思います。

これは気分的なことだけでなく、実際に最近まで寒さがしぶとく残る日々でした。

6月に入るベルリンはいま、春の嵐のような激しい俄か雨と、穏やかな晴れ間とが入れ替わりながら、ようやく爽やかな季節を迎えようとしています。

<ベルリン芸術大学内のホールでの演奏風景>

 

 

2021年もはやいもので折り返しが見えてきていますが、この約半年間、私はドイツから出ることなく、ベルリンでの日々を過ごしていました。

(本来はこの春から夏にかけては、日本での演奏会のため何度か行き来をする予定でしたが、ヨーロッパの、そしてまた日本国内の状況によりそれらは叶いませんでした。)

有難いことに引き続き行われている対面でのレッスンを受けながら、この期間に新たなレパートリーに取り組み、勉強することを通して、これまで触れてこなかった曲の魅力を再発見したりと、貴重な時間を過ごしました。

残念ながらドイツでは長きにわたるロックダウンの影響で、これまでのようにお客様の前で演奏できる環境は未だほとんど戻ってきていませんが、ピアノ科の中間実技試験や無観客でのクラスコンサートなどで、ステージに立ってきました。

 

<雪のベルリン、この冬はいつにも増して静かでした>

 

このパンデミックの難しい状況の中、「録音」や「配信」での演奏活動もこれまで以上に経験しました。

昨年末には、地元である静岡県掛川市にて、演奏映像配信事業に参加しました。

(こちらはYouTubeで公開されています。)

また、ベルリン芸術大学内のホールでも、録音を重ねています。

これらの経験を通して、図らずも自分の演奏を客観的に見る、聴く機会が増え、それによる気づきや学びも多くありました。

 

<掛川での録音風景。バックハウスが使用した貴重なベーゼンドルファーで演奏しました>

 

<街角の公園にて。今の時季は街中のマロニエの木が可愛らしく花をつけています>

 
音は空気を通して伝わりますから、本来であれば演奏会場の同じ空間でその空気を共有することが醍醐味であると思いますが、未だ続くコロナ禍において、どのような活動や発信ができるか、試行錯誤の日々です。

やりたいこと、できることを積極的に行っていきたいと考えています。

 

2年間の多大なるご支援により、奨学生としてこれまで多くの学びや活動の機会をいただけたことを、改めて心から感謝いたします。

留学生活の要素、例えば多くの演奏会を聴くこと、自身の演奏活動やコンクール、マスタークラスへの参加など、それらに制限のある難しい時期でしたが、自分と、そして音楽とじっくりと向き合う大切な時間になりました。

特にこの半年間は、常にここベルリンで日々を過ごすことで、些細な変化に季節の移り変わりを知り、芽吹く緑や咲く花を見て、これまで多くの芸術家たちも触れてきたであろう空気を肌で感じ……そんな何気ないことからも、自分の中に新たな感覚を得ることができました。

この期間に学び蓄えたものを、演奏を通してステージで表現できる機会を待ち望みながら、引き続き研鑽を積んで参ります。

まずは、この夏の「スカラシップコンサート」をはじめとする日本での演奏会を、心から楽しみにしています。