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2020年9月からの留学生活を振り返って(山下愛陽さん)1/31

山下 愛陽さん/ Ms. Kanahi Yamashita
(専攻楽器クラシックギター/Classical Gt.)

[ 2021.04.28 ]

学校名:ベルリン芸術大学

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の山下愛陽です。

日頃からの多大なるご支援に心より感謝申し上げますとともに、ここに近況報告をさせていただきます。
私の奨学生としての期間はポーランド、ヴロツワフでのオペラ企画でスタートしました。約1か月当地に滞在し、グロトフスキー研究所新劇場にて毎日リハーサルが行われました。

<ポーランド、ヴロツワフでのオペラ公演の様子>

 

ギタリストとしてメインパートを担い、ポーランドを代表するオペラ歌手、演出家、演奏家、そして日本の尺八奏者と共に、作曲家、藤家溪子の室内楽オペラを欧州初演しました。

オペラという総合芸術に関わる大勢の人員、チームそれぞれが各自尽力する一方で、他とも譲歩しつつ創り上げていく過程はとても複雑で、室内楽演奏のみならずコミュニケーション能力が特に培われた企画でした。

年齢や経験値に関わらず自分の意見をはっきり相手に伝えることが重視される欧州のメンタリティーを以て、時には感情をあらわにしてまでもディスカッションが続けられた日々で、それを経て意見が次第にまとまり企画が完成に向かう時の喜びは言葉に表せないほどでした。

ベルリンに帰ってからは10月に行われたワイマールでのリサイタル及びベルリンでのオイルトミストとの公演準備に励む毎日でした。

ようやくコンサート活動が徐々に再開され、再び人前で演奏をさせていただける喜びは計り知れず、あっという間に時が過ぎ去っていきました。

それだけに、その直後からまた対面の芸術活動がすべて禁止になったことへのショックは大きいものでした。

 

<ワイマールでのリサイタルの様子>

私の住んでいるベルリンは毎日数えきれないほどの文化イベントが行われ、多様なバックグラウンドをもつ人々との出会いに溢れ、夜中も街の明かりが消えない活発さが魅力です。

しかしそんな大都市にも関わらず緑に囲まれ、少し電車で郊外に行くと森や湖で一息つけることがもう一つの魅力です。

余暇の過ごし方も一変し、ロックダウン期間中は豊かな自然の中を散策することが憩いのひと時となっています。

留学生活では言語の壁や生活習慣の違いなどで苦労をすることも少なくないです。

しかしそれらを乗り越えながらベルリンという国際都市で多くの文化に触れ、西洋人の物事の考え方や文学、音楽への取り組み方を学ぶことで、それらの芸術文化を理解する様々なヒントを得られることはとても貴重です。

そういった文面だけでは学べないことがたくさん身についていると実感できることは何よりの喜びです。

現在私はベルリン芸術大学のギター科と声楽教育学科の両科に在籍しています。器楽のレッスンで「ここは歌うように、言葉のように」といったアドバイスを耳にすることは頻繁にありますが、実際に声楽を学び、体験、実感することは、旋律の奏で方や音色の探求などへの取り組み方に大きな変化をもたらしています。

声楽の無数の楽曲からは、今まで知らなかった音楽と音楽表現も豊富に学べています。

パンデミックの影響による今後の演奏活動の在り方には不安も多いですが、演奏動画のアップロードやライブ配信コンサートの企画などの代案も徐々に実現しており、ウェブサイトやYouTubeなどを利用した、ネット上における自身の発信の場も自粛期間を利用して築き上げてきました。

近々通常の演奏活動を再開できる日がくることを待ち望まない日はありませんが、困難な状況にもできるだけ適応し、その中で可能な限りのより良い活動方法を探りながらこれからも精進していきたいです。

これからも引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 

<ベルリン郊外のグルーネヴァルト にて>