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近況のご報告(向井響さん)7/15

向井 響さん/Mr.Hibiki MUKAI
(専攻楽器作曲/compsition)

[ 2020.09.14 ]

学校名:アントワープ王立音楽大学大学院

ロームミュージックファンデーション奨学生の向井響です。

多大なるご支援のお陰で、作曲と研究を続けることができること、心より感謝申し上げます。

2019年12月、ローラン・テシュネ先生率いる、アンサンブル室町より委嘱を頂き、人形瑠璃と、大アンサンブルのための「美少女革命: Dolls」を初演して頂きました。

 

<アンサンブル室町公演より>

 

オランダの大学院での研究で人形浄瑠璃を扱い、そこで女性が謡う“女義太夫”を知り、ずっとその声憧れていました。

今作品では、その”声”を支える邦楽器と西洋楽器をそれぞれグルーピングし、各自独立した世界を作ることで、アンサンブル室町だけの複雑な音色を作り出し、そして私がずっと自身のテーマとして描いている”少女”を作品の中に投影し、新作の人形浄瑠璃の可能性に挑みました。

素晴らしい浄瑠璃のお二人の竹本寿々女さん、鶴澤三寿々さん、ひとみ座乙女文楽さん、そしてアンサンブル室町の皆様の多大なるお力添えを頂きました。

こうした、密なコラボレーションにより、伝統を継承し、そして新たな形で発展させていく。作曲家を志す自分の使命を、この作品をかく中で再確認しました。

 

<公演終演後の出演者の皆様と>

 

2020年5月にアントワープ王立大学大学院のポストグラジュエート課程を修了しました。コロナの影響で修了演奏会は11月に延期となってしまいましたが、ベルギーのアントワープを中心に活動するEnsemble XXIと、フランクフルト音楽大学に在学中のピアニスト小倉美春さんのために、ピアノ協奏曲を作曲し、作品と研究を高く評価して頂き、卒業の際に最高栄誉賞(Summa cum laude)を頂きました。

ポストグラジュエートは修士修了者のための課程で、私はこの1年間博士課程進学のための事前研究を中心に行って参りました。

2016年に留学を始めてから、オランダの研究所で電子音楽を中心に作品を作っていましたが、この1年間は器楽を中心にたくさんの作品を発表し、「作曲すること」と深く向き合った大切な時間になりました。

 

<今年の修了式はZoomを使ってオンラインで行われました。>

 

5月にポルト大学大学院のコンピューターサイエンスの研究所からオファーを頂き、この9月から博士課程にてさらに研究を続けます。そして、大変ありがいことに、2020年度も続けてローム・ミュージック・ファンデーション奨学生としてご支援を頂けることになり、留学してからずっと夢見ていた、欧州でPhDを遂に始めることが出来てとても嬉しく思います。

4年間住み慣れたオランダを離れ、新しい土地にて新しい研究を始めることに不安もありますが、大きな期待を胸に今年も精一杯精進致します。

 

<ポルトの街並み>