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新鮮な空気を吸って(香月麗さん)3/30

香月 麗さん/Ms. Urara Katsuki
(専攻楽器チェロ:cello)

[ 2020.06.29 ]

学校名:ローザンヌ高等音楽院シオン校

ロームミュージックファンデーション奨学生の香月麗です。
ローザンヌ高等音楽院(以下 HEMU) で学び始めて 7 ヶ月が経ちました。

生活の様子を感謝とともにご報告いたします。

 

<シオン、朝の眺め>

 

 

まず初めに、「スイスの美味しいものは何?」と演奏会などで帰国するとよく聞かれます。

今まではチーズがおいしいですと答えていたのですが、おいしいチーズはフランスにもありますし、ありきたりな気がしてこの留学中に何か見つけられたらいいなと思っていました。

その私なりの答えがやっと見つかりました。

 

それは、「空気」と「お水」です。

 

<オーケストラ公演より>

 

昨年の12月はスイスとパリで初めての演奏会がありました。

まずはローザンヌ室内管弦楽団の本拠地のSalleMétropoleでのHEMUのオーケストラの公演、シオンと隣町のシエール、マルティニにて師事しているフィリップ先生の門下生9人によるチェロアンサンブルの公演。

授業や会話において伝えたいことが全て言うことができなくてもどかしい気持ちに何度もなりますが、そんな私にはチェロをもって音で通じ合った時の喜びはとても大きく、気持ちがいいです。

そしてもっと音を増やしたい、リハーサルの間に聞きたい質問も増えていくので語学も勉強しなきゃ…!と合わせが続く期間は特に忙しかったです。

チェロアンサンブルの公演は学校の近くにある財団のサロンなどで行われ、地元のお客様がたくさん聞きに来てくださり、終演後にはアペロがふるまわれ立ち話をしてお客さまと交流します。

 

<演奏後の交流会>

 

フランスでの演奏会は桐朋学園の高校時代の友人に誘ってもらい、私にとってパリ初公演でした。

そのころは大規模ストライキの真っ最中で、予約していたTGVがキャンセルされ時間変更の手続きを駅窓口でしましたが、確実に動くかは分からないと言われ、無事会場に着くことができるかドキドキ。

ほとんどのメトロが止まり、バスを停留所で待っていてもいつ来るのか分からず、来たときには喜びの声が上がるほど。

どうしてみんなが困るのにストライキを1か月も続けるの?ストライキに反対しないの?とフランス人に聞くと「それがフランスだから。今までもそうやって解決してきた。」と。

230年前から続く革命魂でしょうか。

私には新鮮すぎてただびっくり。

しかし発明される前は電車もなかったんだ、と産業の発達に感謝、普段の生活では通り過ぎていたことに気づかされる出来事でした。

ストで自転車やスクーターで移動をする人が増え、環境にやさしい街になったととらえる人もいるそうです。

パリでの演奏会には日本人の留学生が多く聞きに来てくださり、経済や哲学、ステンドグラス、アフリカ文学を学んでいる同世代の方と交流でき楽しいひと時でした。

 

 

<藤田嗣治の絵の前にて>

 

演奏会の合間にはHEMUの大学院生必修科目のマスタークラスがあり、わたしが尊敬する昨年ロームミュージックセミナーにてレッスンを受けた宮田大さんの師である、F.ヘルマーソン先生のレッスンを受けることができました。

3日間全員のレッスンを聞きあうアットホームな雰囲気でとても充実したものでした。

 

<F.ヘルマーソン先生>

 

クリスマス休暇にはシオンから電車で3時間のミラノへオペラを見に行きました。

楽しみにしていた歌手の降板が直前にわかり一旦は旅行のキャンセルを考えましたが、次いつ行くことができるかわからないと決行。

歴史がつまったスカラ座での4時間は何とも贅沢で日常から遠く離れた空間でした。

その他にもドゥオモや二つの美術館を訪れました。

ポルディ・ペッツォーリ美術館で見たレオナルド・ダ・ヴィンチのマドンナ・リッタに衝撃を受け、この目に焼きつけるべく何度も見に行きました。

 

人の心をつかんで離さない芸術の力の強さに圧巻され、日々の練習の先に見据えなくてはならないものを見ることができた良い旅でした。

 

<スカラ座にてトスカを観劇>

 

今年に入り、札幌・リスト音楽院セミナーでのM.ペレーニ先生のレッスンでは、具体的なこれからの課題を見つけることができました。

先生の音楽に対しどこまでも謙虚な姿に、大きな愛を感じました。

音を愛でるという言葉は存在しないかもしれませんが、隣で弾いてくださったり曲についてお話しくださるその姿から、その表現が思い浮かびました。

 

<M.ペレーニ先生>

 

札幌にいるころCOVID-19新型コロナウイルスがニュースに上りはじめ、講習会が終わるとスイスへ戻ったのですが、その頃は世界中がこんなことになってしまうとは思いもしませんでした。

東京とスイスでのリサイタルが延期・中止になり学校が閉鎖することも決まり、心にぽっかり穴が開いてしまったのですが、リサイタルの延期をお知らせした際にいただいた多くのあたたかいお言葉に励まされ、たくさんの方に支えていただいていることを改めて感じています。

 

<いつ見ても美しいレマン湖>

 

来年度もロームミュージックファンデーションさまにご支援いただけますこと心から感謝申し上げると共に、今後とも精進いたします。