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近況のご報告(向井航さん)1/14

向井 航さん/Mr.Wataru MUKAI
(専攻楽器作曲/composition)

[ 2020.06.8 ]

学校名:マンハイム国立音楽舞台芸術大学

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の向井航です。
常日頃から多大なるご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
おかげさまで、スイス・ベルンでの交換留学を含め、ヨーロッパでの留学生活が4年目に突入しました。

 

 

私はドイツ・フランクフルトにほど近い、マンハイムという街で作曲を勉強しております。

現在はマンハイム音楽・舞台芸術大学のポストグラヂュエート課程の作曲科に在籍しており、来学期より、現代音楽における新しい可能性および自分の表現の幅を広げるため、同大学修士課程の映像学科に同時在籍する予定です。

 

昨年10月の初めに、クロアチアのザグレブから車で20分ほどの場所にあります、サモボルという街で行われた第44回サモボル音楽祭に招待作曲家として参加しました。

一昨年の4月にドイツ・アンサンブルモデルンアカデミーのために書いた、「Psi」という大型アンサンブル作品が、第8回クロアチア国際作曲コンクール”New Note”で1位を受賞し、その授賞式に併せて作品が再演、またリハーサルの立会いのため、9月下旬にクロアチアのザグレブに飛び立ちました。

 

クロアチアはとても自然の豊かな国で、自分がかねてより訪問してみたかった場所でもあります。

ザグレブ市内はもちろんのこと、ザグレブ郊外にあるヤルン湖では、次の作品につかうための映像素材をたくさん撮ることができました。

 

〈ヤルン湖は非常に水が透き通っているので、空の色がそのまま水面に反映されるそうです〉

 

44回目を迎えたこの音楽祭は、古典から現代音楽まで様々な演奏会が開催期間中毎日行われ、多くの人が演奏会に足を運びます。地元の人はこの音楽祭を毎年楽しみにしているそうです。

 

〈サモボル名物のクリームシュニッタと呼ばれるこのケーキは、120円ほどで食べられます。また街のいたるところに音楽祭のポスターが貼ってありました。〉

 

あまり十分にリハーサルの時間がとれなかったものの、本番ではアンサンブルの皆様のおかげで、初演の時とは、ひと味もふた味も違った演奏になりました。

こうして、作品が自分の手から離れ、演奏家の解釈によって別の作品に生まれ変わる、その瞬間のために、私は作品を作り続けているのだと強く感じました。

このような機会を頂けただけでなく、日本で生まれ育った私にとって何の縁もゆかりもない場所で、家族のようにこのアンサンブルに暖かく迎えいれて頂き、作曲家として本当に感無量でした。

 

〈授賞式およびコンサートの様子〉

 

今年は、昨年の11月にOgMB国際作曲コンクールで優勝した作品が、イタリア・モンザでの初演を控えているだけでなく、6月には同じくローム奨学生である佐藤采香さんとの、スイス・ベルンでの共同オーケストラプロジェクトが控えております。

いまはその締め切りに追われ、焦燥感に駆り立てられる日々を過ごしておりますが、こうして勉学を続けられる喜びを噛み締めて実感するとともに、これからも精進いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。