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3年の留学生活を振り返り(篠原悠那さん)9/26

篠原 悠那さん/Ms. Yuna Shinohara
(専攻楽器ヴァイオリン/violin)

[ 2020.01.6 ]

学校名:桐朋学園大学大学院音楽研究科修士課程

ロームミュージックファンデーション奨学生の篠原悠那です。

8月末国際メニューイン音楽アカデミーを修了、3年間のスイスでの留学生活を終え 完全に日本に帰ってきました。

9月からは桐朋学園大学大学院修士課程で尊敬する辰巳明子先生のもと勉強させて頂いております。

<ヴェンゲーロフ先生レッスン>

 

アカデミーで師事したマキシム・ヴェンゲーロフ先生は、幼い頃からから初めて演奏する曲は必ず 何十回と繰り返しCDを聴き、その魔法のような音や音楽に憧れていた方でした。(10数年後に自分が直接レッスンを受けることになるとは夢にも思わず…今でも不思議な気がします。)

世界中を飛び回って演奏されている先生とアカデミーのコンサートやヨーロッパ各国の音楽祭で共演させて頂いた経験を通し 多くのことを学び吸収しました。

 

最後のレッスンでは「これまで左手や右手の技術、身体の使い方、精神論など たくさん話して厳しく指導してきたけれど…演奏家として最も大切なのは聴いている人の心に届く音楽であること。

私は以前Yunaの演奏を聴いて涙が出た。

みんなに出来るとは言っていない。

Yunaには出来る。

聴いてる人の心に届く何かを…自由に、型にはまらないで 自分をもっと信じて演奏するんだよ。」と話してくださり、、、この言葉は私の心に深く刻まれました。

 

 

また、ホームステイ先の愛情溢れるGordonさんArmelleさんご夫婦と巡り会えた事、私の人生観が変わる幸せな出会いでした。

スイスでの春夏秋冬の文化は勿論、ジャズやダンス、バレエ、ゴルフ、ワイン…の知識を毎日の暮らしの中で教えてくださり私は次々と新しい世界を知りました。

夢や目標が常にあり、多方面にアンテナを張って好奇心を持ち続け、人生のその瞬間を楽しんでいるお2人。

問題や困難があってもご夫婦で意見を交わしながら解決し前を向いて生きる姿。

アカデミーで慌ただしく過ごす私はご夫婦に心が癒される毎日でした。

 

<ホストファミリーのGordonさん、Armelleさん、犬のチャーリーと!>

 

Gordonさんは高校進学時に勉強かピアノかで勉強を選んで以来「70年弾いてなかったピアノをYunaの演奏に影響を受けてまた始めたよ」と言ってピアノの練習を再開。

私の留学生活最後の夜には家族やアカデミーの友人達を招き2人でバイオリンとピアノのデュオを披露しました。

3年間家族として過ごした時間を音楽で会話出来たような…温かく大切な想い出となりました。

 

<帰国前夜のホストファミリーとのデュオ>

 

帰国前にはスイス・クランモンタナでエルサレムカルテットのセミナーを受講し、カルテットアマービレのメンバーと10日間レッスンやコンサート漬けの日々を過ごしました。

エルサレムカルテットの先生方と一日中レッスンや食事などを共にし一緒にオクテットを演奏する機会などもあり、カルテットならではの苦労や楽しさを痛感することの連続。

期間中は何十年も世界中で演奏している先生達の”生き様”に圧倒され心打たれっぱなしでした。

ヴィオリストのオリカムさんの言葉「大切な人を思って、その人のために心を込めて演奏する。演奏技術はもう充分。

あなたが何を伝えたいか、聴く人はその人の経験や想像を 聴きに来る…」はヴェンゲーロフ先生の言葉と共通するものを感じ、日本に戻り学生として勉強しながら、演奏家としてプロとして、常に自分の中身をアップデートしなければという気持ちになりました。

 

<エルサレム カルテットの皆様とメンデルスゾーンのオクテット本番>

 

留学中には日本で出来ない経験をし、住んでみて見えてきたヨーロッパ独特の景色や感情や感覚が自分の中で糧となりました。

今後の長い音楽人生における自分の弱点も強みも、様々な国の人達とコミュニケーションしてわかったことが多くあります。

人生の勉強の機会、音楽の勉強の機会と、私の視野や世界を広げてくださっているロームミュージックファンデーションさまの日頃のご支援に心より感謝申し上げます。

これからも このご恩を音楽でお返しし、自分にしか出来ない音楽を発信していきたいと思っております。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。