最終レポート(日高志野さん)
日高 志野さん/Ms. Shino Hidaka
(専攻楽器ピアノ/piano)
[ 2018.10.19 ]
学校名:ロシア国立チャイコフスキー記念モスクワ音楽院
ロームミュージックファンデーション奨学生の日高志野です。
突然ですが、皆様は「イワノフカ – Ивановка」という地名をご存知でしょうか?
<殺風景な道のり・・>
イワノフカは、ロシアの首都モスクワから500キロほど離れた小さな街です。
このイワノフカ、実はラフマニノフが毎夏訪れた別荘がある地としてとても有名なのです。
直接の交通機関が車しかなく機会がないと訪れにくい場所ではありますが、今回はイワノフカからほど近いタンボフで演奏会とマスタークラスのお話をいただき、その際に熱望していたイワノフカ行きが叶いました。
タンボフからイワノフカは車で1時間半ほどです。
ロシア語でのマスタークラス、テレビ取材、演奏会と日程を順調に終え、イワノフカに行く日当日、朝9時ごろにタクシーで出発。
途中でナビを見間違えたりして、とんでもない砂利道を通りながらようやく到着。
館長さんにご案内していただきながら、ラフマニノフが、多くの作品を生み出した別荘を見て回りました。
私にとっては憧れてやまない大好きな作曲家ですが、彼の別荘には彼がひとりのロシア人、そして人間として過ごした証がたくさん残されており、少し距離が近くなった気もしました。
<ラフマニノフ別荘にあるビリヤード場。とてつもなく広い家でしたが、にしてもビリヤード場があるとは驚きました。ロシア人みんなで遊んだのでしょうか。>
その後、なんとミニコンサートという形でラフマニノフの家で演奏もしました。
私はコンサートプログラムにも入れているラフマニノフの愛すべき小品たちを、心を込めて弾きました。
(実際のところは朝出発していきなりだったのでかなりきつかったのですが・・。)
<タンボフとイワノフカにはいたるところにラフマニノフの銅像があります>
この素晴らしい経験の約1カ月後、私は人生2度目となるモスクワ音楽院の大ホールでの舞台に、ラフマニノフの協奏曲第2番のソリストとして立ちました。
チャイコフスキーコンクールの時とは違う緊張がありましたが、「イワノフカを訪れた後、あなたのラフマニノフはきっと変わるでしょう」という館長さんのことばを胸にきざみのぞみました。このラフマニノフ2番の本番が私の学生としての最後の本番となり、四年半の私のロシア生活の集大成になりました。
「ロシアの日」という伝統的なロシアの祝日に開催されたコンサートで、大ホールには満席のお客様。
演奏しているときは本当に幸せでした。
<モスクワ音楽院大ホールでの演奏の様子。指揮者のアレクサンダー・ソロビヨフ氏と。>
その後日本に帰国、名古屋・東京などで演奏の機会を頂きました。
そんな中、「ロームミュージックファンデーション奨学生認定式、および報告会」(以下「報告会」)が8月上旬と下旬、2度に分けて開催されました。
今回は番外編として、その様子をご紹介したいとおもいます!
<夏の京都は暑い・・・!>
ロームミュージックファンデーション奨学生報告会は、「奨学生によるスカラシップコンサート」「認定式と報告会、ローム工場見学」「懇親会(その1、その2..)」
という3部構成で開催されます。
2年間ご支援頂いた私は今回が3度目、そして最後の報告会です。
報告会では各々が財団役員の皆様と奨学生に向けて、この1年で努力したことや抱負をお話します。
専攻楽器も留学先も年齢もバラバラな我々ですが、そのスピーチには溢れんばかりの個性を読み取ることができ、とても面白い時間の一つです。
またスカラシップコンサートでは、出演を控える人までもホール内でお互いの演奏を、あるいはリハーサルを聴き合い、感想を述べあったり、さっそく次回の共演が決まったり!?します。
これを読んでくださっている皆様の中にも、スカラシップコンサートで自らの演奏後、客席で聴き入る我々を見かけた方がいらっしゃるのではないでしょうか。
<スカラシップコンサート楽屋にて。新しい奨学生の方も加わってパチリ>
その後「懇親会」へと続くわけですが、京都での濃い日々を共に過ごした我々は、想像を絶する速さで仲良くなります笑。
懇親会(その1)では、ローム役員の皆様とお食事を共にしながら感謝や近況等を述べあい、報告会では知りえなかった貴重なご意見・ご感想を伺います。
さらにその後、任意で集まる懇親会(その2)では、人生や音楽について、あるいはここには書けないような!?様々な心の内を、限られた時間の中でも濃密に語り合います。
まさにロームミュージックフレンズの真骨頂でしょうか。笑
ロシアでの留学生活のおよそ半分を、ロームミュージックファンデーションの奨学生としてご支援いただきました。
異国での生活という面ではもちろん、演奏家の卵として、ご支援いただいたおかげで手にすることができたチャンスは数多く、ロシアでの留学生活は私の人生の中でもきっと最大の「彩り」を持ったことでしょう。
と同時に私自身にとって、そしておそらくは多くのローム奨学生にとって、この期間で得られた友人、共に日本や世界であがきながらも頑張っている仲間がいるのだという自信は、決して他では手に入れられない「宝」です。
ロームミュージックファンデーションの皆様にあたたかいご支援を頂いたことを感謝すると同時に、この「宝物」をくださったことを、心から感謝しております。
本当にありがとうございました。