滝 千春 Chiharu Taki (ヴァイオリン)

<出演にあたってのコメント>
「コロナ禍」という言葉が定着してから、今現在まだその渦中にあるとは、誰が予測していたでしょうか。
私がスイスに留学した当時から数えて、海外生活は早いもので10年はとうに過ぎました。私にとっての留学は、単に外国に住み勉強するという事だけでなく、1人の人間として自身を成形していくのに欠かせないものとなりました。日本にずっといては見えなかったであろう自分の側面を沢山見ることができたからです。そんな私の大きな分岐点を支えてくれたロームさん。そう言った意味でも、私にとってこの「ローム ミュージック フェスティバル」で演奏させてもらうことは本当に意味のある大切な場所となっています。
一方でこのコロナ禍という新しい日常で、身動きがとれない未来ある素晴らしい才能を持った若者達が沢山いるのではないかと思うと、自分と重ね合わせた時にとても胸が痛みます。
私達音楽家、芸術家達は、自分たちがやっていることは何なのだろうかと、誰もが一度は自分自身に問います。コロナに限らず、大震災があった時、大洪水があった時、人々が生か死かを問いている中、音楽や芸術はどうやって役に立つというのだろうか。答えが出た人には答えがあるし、無い人も、それもまたそれが正しい答えです。
ただ一つ言えるのは、人々が感動し心を震わせる瞬間の数々の多くに、芸術は含まれています。「人としての喜びとは」を疑問なくいつも問いていけたら良いなと思います。
今回は残念ながら配信のみのコンサートとなりましたが、素晴らしい尊敬する音楽の仲間達と共に、素敵な時間を過ごせたらと思います。