エンジニアに直接聞く
IoT無線通信の新分野として期待されるLPWA無線LPWAの発展は通信システムとしての低消費電力化が必須
2018.04.24
-ネットワークの構成、階層のイメージはできましたが、実際のアプリケーションにはどんな例があるのでしょうか?
LPWAによって無線通信距離が大幅に伸びるので、この特長を生かしたIoTアプリケーションが広がりを見せると予想しています。一般に今のところ言われているのは、ガス/水道スマートメータ、センサネットワーク、構造物ヘルスモニタリング、スマート農業、防災などですが、長距離無線通信が必要な産業機器全般に利用可能なので、既成概念にとらわれないアプリケーションも増えてくると思います。これらは、応用が期待できるいくつかのアプリケーション例です。
「ガス/水道スマートメータ」の電池駆動のものは、低消費電力であることが必要です。また、隣家が遠い閑散地では、ホッピングを利用して通信伝達距離を伸ばすことができません。このような状況では、LPWA無線が有効な通信手段になります。
「構造物ヘルスモニタリング」では、橋やトンネルなどでセンシングのための電源確保が難しい場合や、長い通信距離が必要な条件でのセンサデータの収集にはバッテリ駆動のLPWA無線が有効です。
「スマート農業」では、センサデータを収集するために電池駆動で広範囲をカバーする必要があります。
-それでは、無線通信LSIそのものについて教えてください。
-通信方式のポイントやデュアルモードのメリットはすでにお聞きしたので、「SigfoxのBPSK変調部をハード化」について説明をお願いします。
Sigfoxには、従来のSub-GHz無線では採用のないBPSK変調が使用されています。既存のSigfox対応無線通信LSIは直接BPSK変調に対応していないため、別途、制御マイコンがソフトウェアによってBPSK変調を行う必要があります。この方法では、無線通信を行う度に制御マイコンを動作させる必要があり、その分の電力を消費します。ML7404はSigfoxに対応するにあたり、BPSK変調回路のハードウェア化を行いました。これにより、図の「電流消費イメージ」にあるように、制御マイコンは無線通信動作中にBPSK変調動作をする必要がなくなり、通信システムとしての低消費電力化を図っています。
IoTにおいては、末端デバイスにかかわらず低消費電力であることは必須の要求事項です。LPWAにおいては、LP、つまりローパワーがキーになっているので、このようなシステムレベルでの低消費電力化を図ることは非常に重要です。
-他には何かありますか?
他に無線通信LSIとして細かい仕様や特長はいろいろありますが、それは弊社のウェブサイトで提供しているので、そちらを参照していただければと思います。これは、ML7404の主な仕様をまとめた表です。一部は参考値であり、通信条件や周辺環境よって変わりますのでご了承ください。
-設計者にとっては、比較的新しい無線方式を導入した機器開発はけっこう大変だと思いますが、サポート体制はありますか?
アプリケーション開発用のML7404評価キット「ML7404EVB」を用意しています。評価ボード、制御ボード、ソフトウェアツールがセットになっており、PC用GUIは対話型なので送受信テストの設定が簡単にできます。また、RFテストマクロが同梱されており、すぐにTELEC試験項目の測定も可能です。
また、ML7404を搭載したIEEE802.15.4kとSigfoxのブリッジ通信が可能なモジュールがパートナー会社から発売予定で、IEEE802.15.4k用プロトコルスタックもパートナースタックベンダ会社がオープンソースとして提供を予定しています。
-最後にまとめをお願いします。
LPWAはIoT発展の鍵の1つだと考えています。IoTの観点から、LPWAネットワークは数多くの端末を収容することが宿命になります。また、様々な条件下でもつながる必要があり、それは人がいるところだけと限りません。実際のところ、このような要件をすべて満足する単一の無線方式はありません。そのため、長所と短所をうまく補完し合う無線方式の組み合わせが非常に有効だと考えています。特にLPWAは黎明期であることから、デュアルモードによってつながる安心を得るというアプローチは価値があると考えています。ぜひ、LPWAに対するラピスコンダクタの提案である、Sigfox+IEEE802.15.4kのソリューションを検討していただきたいと思います。
【資料ダウンロード】無線通信 基礎
エンジニアに直接聞く
-
アプリケーションの電源設計のヒントを、エンジニア同士で語り合う
-
GaN HEMTの課題を解決し普及を促進。電力変換アプリケーションでの損失低減と小型化に貢献
- ロームグループのIoTへの取り組み:ロームグループがもつIoT関連技術を集結 センサはIoTキーアイテムの一つ
- 無線に取り組む機器設計者のための基礎知識:無線通信の種類と分類を考えてみる
- 工場のIoT化を促進するマシンヘルス:工場の設備、機器の健康状態を管理して故障を未然に防ぐ
- センサ評価キットがIoT機器のTime-to-Marketを加速:センサ評価用ツールの需要が高まる
- いち早く具体化が進むIndustrial IoT:産業IoTの動きが活発に 既存の装置や設備のIoT化が鍵
- IoT無線通信の新分野として期待されるLPWA無線:LPWA無線とは
- IoTにはLPWAが1つの解になる:IoTに必要な無線通信の条件を考える
- 13.56MHz(NFC)ワイヤレス給電のアドバンテージとは:モバイル機器のワイヤレス充電にはさらなる小型ソリューションが必要
- 産業用途グレード降圧DC-DCコンバータ:産業用途では長期供給保証と小口販売は普通の要求
- 全43機種、車載向け汎用LDOレギュレータ:43機種という豊富なバリエーションには理由がある
- FPGAの厳しい電源要求を満たすFPGA向け降圧DC-DCコンバータシリーズ:FPGAの電源要求とは
- MOSFETを内蔵した高効率AC-DCコンバータIC BM2Pxxxシリーズ:既存のAC-DCコンバータの課題は効率とサイズ
- 業界トップクラスの80V高耐圧と高効率を実現したDC-DCコンバータ:高耐圧DC-DCコンバータ市場に参入する
- スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは : コンデンサ編:積層セラミックコンデンサは大容量化が進む
- スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは : インダクタ編:インダクタの仕様と等価回路を読み取る
- フォトカプラ不要の絶縁型フライバックDC-DCコンバータ:フォトカプラのメンテナンスから解放 小型で設計が簡単
- 48Vから3.3Vに直接降圧可能なDC-DCコンバータIC:48Vから3.3Vに直接降圧はできない?
- 第三世代SiCショットキーバリアダイオード:SCS3シリーズ Part 1 : SiCショットキーバリアダイオードの進化は続く
- 環境負荷低減に向けた電源技術動向:AC-DCコンバータの効率改善が必須の状況に
- 力率改善と高効率を両立したAC-DCコンバータ制御技術:力率改善回路を搭載すると電源の効率が下がる?
- 車載用セカンダリ電源として開発された同期整流降圧DC-DCコンバータ:LDOと同等の部品数と実装面積で、効率と供給電力を大幅にアップ
- 4端子パッケージを採用したSiC MOSFET : SCT3xxx xRシリーズ:4端子パッケージを採用した理由
- 小型化、高効率化、EMCに続く重要課題 : 熱設計:技術トレンドの変化によって、熱設計には逆風が吹いている
- DC-DCコンバータの周波数特性を設計段階で最適化:出力の安定性と応答性のチェックには周波数特性を評価する
- 業界トップクラスの低ノイズと低損失を両立した600V耐圧IGBT IPM:IGBT IPMを使うメリットと課題