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いち早く具体化が進むIndustrial IoT:産業IoTの動きが活発に 既存の装置や設備のIoT化が鍵

2018.01.30

IoTのコンセプトが提唱されて久しいが、ここ数年でかなり具体的なアプリケーションが示されるようになってきた。特にその中でも産業分野のIoTであるIIoT(Industrial IoT)は、より現実的なシステムやアプリケーションが動き出しており、CEATEC 2016でロームがデモを行った「マシンヘルス」はIIoTの好例であると言える。今回は、現在の産業IoTの状況とロームの取り組みについて、ローム株式会社 商品戦略担当 産機戦略部 IoTセンサソリューション課 課長の小宮 邦裕氏に話を聞いた。

-このところの展示会や関連の新製品ニュースなどを見ていると、IoTの具体化が進み、現実的なアプリケーションが提示されるようになってきたと感じますが、どのように見られていますか?

確かにこのところのIoTは、現実的なものが増えてきたと思います。コンセプトが先行していた感がありましたが、世界的に様々な分野でIoTに向けたプロジェクトが動き始めています。特に産業分野のIoTであるIIoTに関しては、動きが活発になっています。

-CEATEC 2016において、工場のIoT化の例として実施した「マシンヘルス」のデモは、かなり好評だったと聞きました。

マシンヘルス」のデモに関しては、それが現実的な提案であり、また比較的簡単に導入できるということを多くの来場者の方々に実感いただけたと思っています。実際に、あれから多くの問い合わせをいただいています。

-その理由は何だとお考えですか?

IoTがキーワードとなって様々な動きがあることはもちろんですが、IoT化が工場における潜在的なニーズだったことが大きいと考えています。マシンヘルスの例では、実際のモニタによって工場設備の故障などを、兆候の時点で検知することを目的としました。生産性に深くかかわる工場設備の保全は、工場の重要な管理事項であり費用もかかるものです。もし、工場設備の保全が比較的簡単に最適化できるとすれば、これに興味のない関係者はいないと思います。さらに、センシングによる自動化にも強いニーズがあることがわかってきています。見える化や記録を活用する意識の高まりがあると感じています。そういう意味で、マシンヘルスにかかわらず、工場のIoT化、つまりIIoTのメリットは現実味が強く、導入のための検討が活発なのだと考えています。

-最近よく聞くのですが、プラットフォーム化がIoTではキーになると言われていると思います。確かにプラットフォームを利用するメリットは産業分野でも非常に大きいと思いますが、製造業などで使う装置は耐用年数が長いので、今使えている装置やシステムをIIoTのために刷新する、もしくはプラットフォームに載せるなどというのは簡単なことではないと思いますが。

おっしゃる通りです。例えば、FA分野などでは、10年以上使われている装置が現役で稼働してることはめずらしくありません。こういった装置の多くは、新しいIIoTアプリケーションに簡単に対応できないと考えられ、また、その逆のケースも多々出てくると思います。新しいアイデアであるプラットフォームの利用によって、新旧生産ラインのすべてを最適化する場合には、既存の装置などのIIoT化対応が課題になると思います。しかしながら、逆に考えると古い装置やシステムも新しいプラットフォームに載せたい、というニーズがあることになります。

-そのニーズに対して、どんな対応が考えられますか?

ロームでは、既存の装置や設備に後付け可能なセンサや、それらを結ぶ無線ネットワークなど、それぞれのお客様の状況に対応できるソリューションを提案しています。

-具体的なソリューションについては後ほど伺いますので、その前にソリューション提案というアプローチについてお聞きします。近年、部品メーカーやデバイスメーカーがソリューション提案を強化しているのは知っていますが、IIoT市場では、さらにソリューション提案が重要だということでしょうか?

私は、当初、研究開発部門でセンサネットワークのアプリケーションを開発していました。半導体メーカーの研究開発部門でアプリケーション開発というのはあまり聞かないかも知れませんが、センシングを提案することは、使い方やメリットなどのソリューション提案が重要になっています。

IIoTに限ったことではありませんが、近年、多くのお客様が必要としているのは、例えばIC単体といった部品単品ではないのです。正直なところ、性能が高いICを開発し、外付け部品点数を大幅に削減して、基本回路例やPCB実装パターンまで用意しても、なかなか興味をもっていただけません。特にIIoTの分野では、機器はシステム全体を考慮して開発されるケースが多く、それには、従来のように部品単品を売り込むのではなく、部品を中心にしたアプリケーションやソリューションを提案することが必然だと考えています。

小宮 邦裕 氏

私たちは、IIoT市場は従来の市場とは違う新しい市場だととらえています。また、半導体メーカーの主市場であるエレクトロニクス市場も変わりつつあります。こういった変化に対応できなければ生き残ることはできません。従って、今まで以上に具体的でシステムレベルの提案できるように、開発や販売を強化しています。

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