エンジニアに直接聞く
工場のIoT化を促進するマシンヘルス工場のIoT化はむずかしくない
2017.01.18
-わかりました。それでは、マシンヘルスのデモについて伺います。まず、デモ機の概要を説明いただけますか。
システム概要を示した図をご覧ください。まず、このシステムは先程説明した予知保全=状態監視保全のために、工場内設備や機器の状態をデータとして収集します。
デモ機は、ポンプを使って液体を管理するタンクや水槽などを想定しています。ポンプや水槽には、11種類のセンサを設置してあります。センサは常時情報を取得して制御装置へ無線送信するので、異常な数値を検出したときはすぐに対応できます。加えてゲートウェイを介してクラウドサーバにも情報を送ることで、どこからでもモニタリングが可能になります。
-IoT基本構成デバイスのセンサ、無線、マイコンのそれぞれについて教えてほししいのですが、センサはどんなセンサを使っているのですか?
センサは、EnOceanセンサモジュールか個別センサを使っています。EnOceanセンサモジュールは、環境発電素子と無線通信機能を搭載しており、電池を必要とせず必要な場所に貼り付けるだけでセンスしたデータを無線でゲートウェイまで送信します。
電池とそのスペースも必要ないので、非常にコンパクトです。また、電池交換の手間もありません。当然のことながら電源ケーブルも通信ケーブルも不要なので、配線の引き回しがなく、どこにでも設置できるため、後付けで機器をIoT対応させることができます。このようにEnOceanセンサモジュールは、IoT化を進めるうえでのキーアイテムの1つになっています。また、個別センサを使うケースでも、EnOceanの環境発電素子と無線通信モジュールを使うことで、電池レスのセンサノードを構築しています。使っているセンサの種類については、後ほど具体的に説明させてください。
-無線通信は、EnOceanの他にはどんな無線を使っているのですか?
センサからゲートウェイ間は、EnOceanの他にローム製のWi-SUNモジュールを使用しています。Wi-SUN通信はスマートメータに採用されたことで知られていると思います。Sub-GHz無線とも呼ばれる特定小電力無線920MHz帯の無線です。双方向通信と、到達距離が見通し300~500mと長いことが利点です。
ゲートウェイからクラウドまでは、今回NTTドコモのクラウドサービスToami for DOCOMOを利用した関係で、FOMA/LTE通信回線となっています。Toami for DOCOMOは、様々なセンサデータを見える化するためのアプリケーションを簡単に構築できるクラウドサービスで、IoT導入に必要な主要機能がパッケージされており、短期間に低コストで導入可能なことからデモ機のゲートウェイから先の部分の構築に利用しました。
-マイコンについては?
マイコンは、ロームグループのラピスセミコンダクタ製16 bitハイパフォーマンス超ローパワーマイコンML620500シリーズのML620Q504、またこのマイコンを搭載したオープンプラットフォームマイコンボード Lazurite Basicを使いました。近年のオープンプラットフォームの定番になっているArduino Uno互換でありながら、大幅に消費電力を削減しています。
-これで、デモ機の概要と、IoTの基本構成であるセンサ、無線、マイコンの概要も説明いただきました。ここまでのポイントをまとめていだけますか。
このマシンヘルスのデモは、予知保全=状態監視保全のために、工場内設備のIoT化により故障を検知するデモです。ハードウェア構成は、センサからゲートウェイまでは、ほとんどをロームグループ製品および取り扱い製品で構成しています。クラウドに関しては既存のサービスを利用することで、システム全体を構築しています。
EnOcean無線通信による電池レスソリューションと、工場内でも安定した通信が可能な近距離無線のWi-SUNの両方を利用することで、コンパクトで設置の自由度が高く簡単、そして課題である導入コストと時間を大きく削減できることがキーポイントになっています。
工場のIoT化は、こういったIoT化に向けたデバイスによって思いのほか簡単に導入可能で、既存の設備や装置をIoT対応にすることも難しくないことを知っていただければと思います。
-それでは、具体的なデモ機の構成やデモ内容についてお聞きしたいと思います。
Part 3に続く
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