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工場のIoT化を促進するマシンヘルス:工場の設備、機器の健康状態を管理して故障を未然に防ぐ

2017.01.18

ロームは、CEATEC JAPAN 2016において、工場のIoT化の一例として「マシンヘルス」に関するデモを実施した。工場内の設備は、一か所が不調になるだけで多くの損失につながる可能性があることから、工場内の環境や設備をモニタする、言い換えれば機器の健康状態を管理して故障を未然に防ぐマシンヘルスという考え方が広がってきている。今回展示とデモが行われたマシンヘルスに向けたソリューションについて、ローム株式会社 津和 氏に話を聞いた。

-CEATEC JAPAN 2016では、私も見せていただきましたが、多くの来場者がマシンヘルスのデモに見入っており、工場のIoT化に対して関心が高いことが伺えました。

ありがとうございます。多くの方に足を止めていただきマシンヘルスのデモをご覧いただいたのはもちろんのこと、デモ機のシステム構成などに関しても多くの質問をいただきました。具体的なソリューションをご覧いただいたことで、IoT化が着々と現実になりつつあることを実感いただけたと思います。

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-デモについて伺う前に、マシンヘルスのコンセプトを教えてください。

IoTは様々な分野で展開を始めていますが、ドイツのIndustry 4.0やアメリカのIIC(Industrial Internet Consortium)といった工業におけるインターネット化は、生産性や品質向上といった比較的わかりやすい目的があるため、具体化が進んでいると思います。

マシンヘルスは基本的に、工場の見える化の一端で、工場内の機器や設備の状態や情報を細かく吸い上げて分析することにより、予防保全から予知保全への移行を推進するものです。IoTの観点からは、取得した大量のデータには様々応用が期待できます。

-予防保全と予知保全は何が違うのですか?

保全は、機器や設備などを安全で安定した状態に維持管理することです。保全には度合いというか考え方がいくつかあって、「事後保全」と「予防保全」は一般にもよく知られているかと思います。

事後保全は、故障が発生したら修理や交換を行う方法です。簡単に想像できると思いますが、この方法では少なからず障害が発生し、場合によっては生産ラインの長時間停止や大事故に至る可能性があるため、予防保全という方法が採られるようになりました。

予防保全は、部品の例だとMTBFなどから耐用期間を想定し、故障していなくても定期交換を実施する方法です。機器が故障する可能は大幅に減り、保全作業も計画的に実施できるので、機器やラインのダウンタイムを最小限にすることが可能です。ところが、予防保全では偶発故障を防ぐことはできず、耐用期間はあくまでも予想なのでその前に故障が発生することがあり得ます。こうなると、結果は事後保全と同じです。逆に耐用期間の設定によっては、まだまだ使えるものを交換して保全コストを上げてしまっている可能性もあります。

これらを改善するために考えられたのが予知保全で、文字通り機器や設備に故障の兆候が現れたら交換を行う保全方法です。例えば、音や振動、温度、消費電流などが正常な範囲から外れるなどの故障の兆候を常にモニタするので、「状態監視保全」とも呼ばれます。これは、工場の見える化、IoT化を必要とするものです。

事後保全 予防保全 予知保全=状態監視保全
  • ・故障が発生したら修理や交換を行う方法
  • ・少なからず障害が発生する
  • ・生産ラインの長時間停止や大事故に至る可能性がある
  • ・耐用期間を想定し故障していなくても定期交換を実施する方法
  • ・機器が故障する可能性は大幅に減少
  • ・計画的に実施でき、ダウンタイムを最小限に
  • ・交換前に故障発生の可能性あり
  • ・かなり使えるものも交換している可能性あり
  • ・機器や設備に故障の兆候が現れたら交換を行う保全方法
  • ・故障の兆候を常にモニタするので「状態監視保全」とも呼ばれる
  • ・工場の見える化、IoT化を必要とする方法
  • ・導入にはかなりのコストと時間がかかることが課題といわれてきた

-なるほど。実際の測定データをもとに機器の健康状態を診断し、黄色信号が確認されればすぐに対処するということですね。正にマシンヘルスで、これは非常に能率がよい方法だと思います。

その通りです。ただし、いくつかの懸案があります。この考え方は以前からあったものですが、予知保全=状態監視保全を行うには、機器や設備を常時監視するシステムが必要になり、その導入にはかなりのコストと時間がかかることが課題になっています。

-確かにそういったシステムは、けっこう大掛かりなイメージがありますね。

常時監視するには、対象の機器や設備にセンサを設置するのは必須です。場合によってセンサは複数かも知れません。他には、センサが取得したデータを伝送するためのインタフェースと電源、それらをつなげるための大量のケーブル、取得したデータを処理するコンピュータとストレージシステムなどが従来の構成です。

-はい、そんなイメージです。できないことはないと思いますが、すぐに費用対効果に考えがいってしまいそうです。

そこで、この課題に対して、IoT機器の基本構成デバイスといわれる「センサ、無線、マイコン」といったハードウェアとソリューションの現状をぜひとも見ていただきたいと思ったのが、今回マシンヘルスのデモを行った理由なんです。

-わかりました。それでは、マシンヘルスのデモについて伺います。まず、デモ機の概要を説明いただけますか。

Part 2に続く

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