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無線に取り組む機器設計者のための基礎知識

Part 5:
無線機器を
製作するための手順

注目ワード
  • Bluetooth v4
  • 使用プロファイルの選定
  • ファームウェア開発
  • 電波法認証
  • アライアンス認証
  • 標準プロフィル
  • 標準化
  • 電波法の概念
  • 電波法認証を取得できる形態
  • 認証試験
  • 認証の最小単位
  • 相互接続性
  • Bluetooth SIG
  • 物理層認証
  • プロトコル認証
  • モジュールというソリューション

-ここまでは、各無線の生い立ち、仕様や特徴について説明いただきましたが、少し具体的な話として、実際に無線機器を設計するには、どの様な段取りになるのでしょうか?

細部に至ると、とても説明しきれませんので、概略的な流れを説明します。

IoTとイメージして、Bluetooth® v4を搭載した携帯機器を製作するという前提で、使うモジュールを選定したところから始めます。ここからの手順としては、「使用プロファイルの選定」、「ファームウェア開発」、「電波法認証」、「アライアンス認証」となります。

-少し大変かもしれませんが、それぞれを説明いただけますか? 最初は「使用プロファイルの選定」です。

まず、「使用プロファイルの選定」ですが、これは、無線機器として「何を実現したいか」、「どんなデータを伝送したいか」と言うことを明確にするフェーズと言えます。何を実現するかによって、実装しなければならないプロファイルが決定されます。これは、Bluetoothに限ったことではなく、すべての無線システムに共通することで、どんな無線システムであろうと、伝送するデータに応じたプロファイルを選定する必要があります。Bluetooth v4の標準プロフィルの一覧がありますので、参考にしてください。

BT_protco1

Bluetooth v4の場合、この表が示すように、ターゲットとなる機器と1対1となるプロファイルが標準化されています。例えば、Bluetooth v4対応の体温計を作りたいならば、表左側の列、上から8番目のHealth Thermometer Profile/Service、省略記号HTP/HTSを使うことになります。このHTP/HTSの中に、体温計として伝送すべきデータとデータの構造が記載されています。これを逸脱してしまうと、他のBluetooth v4準拠機器との接続ができなくなってしまします。また、コイン電池で駆動するなら、同じ列の2番目、Battery Service:BASも実装することが好ましいです。これは、バッテリ残量を定期的にモニタできるプロファイルです。

-プロファイルの選定は、機器の目的や仕様に合わせて、標準化されたプロファイルから必要なものを選ぶという作業になるわけですね。続いて、「ファームウェア開発」についてお願いします。

ファームウェア開発」では、選定したプロファイルやアプリケーションソフトの開発を行います。無線機器を作る上で、技術的なスキルが必要となるフェーズです。ただ、特にBluetooth v4においては、このファームウェアの開発に必要なスキルのハードルが下がりつつあります。

-簡単になったと言うことですか?

あまり短絡してしまうと誤解を招きますが、ものによっては簡単になったと言えるかもしれません。その最大の理由は、標準化が進んでいることです。先ほど説明したプロファイルは標準化されているので、特定のプラットファームに合わせて動作可能なソフトウェアとして供給される場合が多くなっています。こういった状況に対して、通信にかかわるアプリケーション部分のファームウェアが逆に、プロファイルを含んだ形で供給される傾向にあります。これはBluetoothに限ったことではなく、標準化が進んでいる無線システムは、準備されているファームウェアを入手し実装することで、このフェーズ、「フォームウェアの開発」を終えることができる場合が少なくありません。

-最近、この類のソフトウェアが無償提供されることが多いような気がしますが、これらも無償で入手できるのですか?

無償の場合もありますが、費用が必要になるものもあります。ケースバイケースと考えてください。

-わかりました。それでは次の「電波法認証」について説明してください。

電波法認証」ですが、法に基づく規制に適合する作業なので、まったくかかわったことのない人にとっては、法の理解も含めて少々大変かもしれません。そうとは言え、概略としても最低限知っておくべきことがいくつかあります。とりあえず、電波法の概念と、電波法認証を取得できる形態、そして認証試験の3つについてお話ししたいと思います。

まず、電波法ですが、電波法は国の法律であり、その国での電波の放射に関して一定の制限を設けたものです。そして基本的に、その規制に適合しているかどうかの試験と登録が必要となります。また、国ごとに規制があるため、無線機器を使用もしくは販売しようとする国、地域ごとに適合が必要となります。

-例えば、日本の認証を取得していても、米国では販売できないということですね。

基本的には、そう言うことです。電波法にかかわらず、近年、電力消費や環境に関する様々な規制があり、それぞれに適合する必要があるので、そんなに違和感はないと思います。まずは、国や地域ごとの規制に適合する必要があることを押さえておいてください。

2つ目の「電波法認証を取得できる単位」ですが、この「単位」というのは「形態」と理解してください。法に基づくものなので、一般にはあまり聞きなれない言葉がでてくると思います。

電波法は、電波の放射にかかわる法規であるため、無線特性が一意に決定された単位、つまり、特性が確定された形になっている必要があります。具体的には、アンテナを含んだ無線モジュールというのが、認証の最小単位になります。無線通信用LSIやアンテナを含まない無線モジュールの場合、無線特性、特に電波放射の特性が、外付け部品の定数やPCB容量、アンテナゲインに左右されるため、一意に決定されているとは判断されず認証単位として認められません。日本国内では、アンテナを含まない無線モジュールでも、アンテナを指定すれば、その組み合わせで一意な無線特性を有するものと判断されますが、万国共通ではありません。

-前に、無線局と許可された周波数帯、無線仕様などの説明をいただきましたが、そういった仕様に則った、基本的には最低限モジュールになっているものではないと、認証を取得できないということでね。確かに、そうでなければならないのは理解できます。

最後の「認証試験」ですが、どんな試験するのか、おおよその項目を知っておいてください。電波法の目的が、その国に存在する無線システムすべてを問題なく動作させる、ということを主眼にしているため、任意の無線機から放射される電波が、他の無線システムや自無線システムの他の無線機に対して、妨害や干渉を起こす電波になっていないかを確認する試験項目になっています。例えば、送信パワー、占有帯域、スプリアス、隣接チャネル漏洩電力、変調精度などが、対象無線周波数において電波法の定める規格値に適合しているかが試験されます。

ちなみに、電波法による電波の放射制限は、試験や実験など一時的なものでも対象になっており、例えば、展示会でのデモンストレーションなども対象です。

-けっこう大変な印象です。では、最後のフェーズの「アライアンス認証」についてお願いします。

アライアンス認証」の最大の目的は、相互接続性の確保です。無線システムの標準化が進むと、先ほど説明したように多少ハードルが低くなるため、多くのベンダーが無線機器を作り市場に投入します。しかし、それらがお互いに接続可能なのかが、実際にユーザーが使ってみるまでわからないということでは、大騒ぎになってしまいます。このような状況を回避するために、各無線システムは、アライアンスによって相互接続性を厳しくチェックされます。

-わかります。無線LANなど、説明通りにやればちゃんとつながるものでも、とにかくメーカーは「つながらない」という苦情に四苦八苦しているようですから。

Bluetooth v4は、Bluetooth SIGというアライアンスで、相互接続性の確認が行われています。ここでは、電波法認証と同じく、無線システムへの適合試験と登録が必要となります。ただし、電波法認証と異なり、相互接続性を主要目的としているので、試験項目は電波法認証のものとは違います。電波認証における試験が、主に送信に関する無線特性の確認であったのに対し、Bluetooth SIG認証では、受信の無線特性に該当する物理層認証、通信の開始と終了に関する手順、再接続や通信フェーズ変更時の手順など、上位層の動作試験であるプロトコル認証が必要となります。

-電波法認証では、基本的には最低限モジュールになっているものではないと認証を取得できないと聞きましたが、Bluetoothはどうなんですか?

認証を受けようとする項目によります。例えば、物理層の認証を得ようとする場合、無線特性の相互接続性の確認を行うのが目的ですので、その一意性は電波法認証と同様に問われます。アンテナを含む無線モジュールがアライアンス認証の最小単位となるのは、電波法認証と同じです。一方、プロトコル認証に関しては、対象のほとんどがソフトウェアですので、LSI単体や、場合によっては開発プラットフォームに実装され動作検証されたファームウェアでも認証可能です。

-これで、無線機器を設計して市場投入するまでの大まかな流れを説明いただきました。正直言って、プロファイルの選択やファームウェア開発のところまでは、初めて無線機器を手掛けるとしても何とか行けそうな気がしていましたが、後半の電波法やアライアンス認証の話を聞くと、何か暗雲が立ち込めてきた印象です。

この説明の設定では、Bluetooth v4のモジュールを利用するので、まず無線通信に関するハードウェア設計は基本的にありません。また、プロファイルも標準のものを選択し、ファームウェアも簡単なものならでき合いのもので済むかもしれませんので、おっしゃる通りここまではそんなに大変ではないかもしれません。もちろん、ものによりけりではありますが。

しかし、認証に関しては、これもおっしゃる通りでゼロから始めるとすると、かなり大変なことになると言わざる得ません。

-例えば、認証試験を受けるにしても、制作した機器が適合する状態にあるのかなど、事前に自身で確かめる必要があると思います。とはいっても、電波に関する測定は、測定器の他に設備、そして測定条件を設定するのも非常に大変だと聞いています。これから無線を手掛ける機器設計者と言うか企業が、そのための装置や設備を準備するのは、現実的にはかなり無理があるのではないでしょうか?

やはり、かなり難しいと思います。時間もさることながら、投資に見合うものかどうか疑問に思うのが普通だと思います。

ところで、モジュールということで、最近の通信モジュールでは、「電波法認証取得済み」や「アライアンス認証取得済み」というキャッチフレーズをご覧になったことはありませんか?

-先日、ラピスセミコンダクタのBluetooth v4モジュールの取材で、その2つがキーポイントであると伺いました。

それでは、今、提起された件への対応としてモジュールというソリューションがありますので、モジュール製品も含めて説明させいただいてよろしいですか?

-ぜひ、お願いします。

Part 6に続く

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