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無線に取り組む機器設計者のための基礎知識

Part 3:
Bluetooth®を考える

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  • Bluetooth low energy
  • Bluetooth LE
  • Bluetooth v4
  • 低消費電力
  • 無線仕様を緩くしたことによるRF回路規模の縮小
  • 用途を限定したことによる通信スループット制限,帯域が広い
  • 変調方式
  • ペイロード行効率
  • ワイヤレスセンサネットワーク
  • センシングデータ
  • コイン電池

-先ほど説明いただいた、ネットワークトポロジーとアプリケーション例の中から、BluetoothとSub-GHz無線をピックアップしてお話しいただけるということで、早速伺っていきます。

近距離無線通信システムにはいろいろなものがありますが、その中から近年IoTと密接なかかわりをもつ、2.4GHz帯無線のBluetoothと、900MHz帯のSub-GHz無線のについてお話ししたいと思います。

最初に、Bluetoothから話をしようと思いますが、BluetoothにはBluetoothBluetooth SMARTBluetooth SMART READYの3種類があったのはご存じですか?

-名前は聞いたことがあるような気がしますが、それより「あった」というのは、過去ということですか?

実は、先ごろBluetoothの策定団体であるBluetooth SIGから通達が出て、2016年から商標はBluetoothのみとし、コアスペック識別子を付けることでBluetoothの種類を識別することになりました。これから説明するBluetoothは、以前はBluetooth SMARTと呼ばれていたBluetoothです。ちょっとややこしいのですが、Bluetooth SMARTはBluetoothの低消費電力バージョンとして開発されたことから、当初はBluetooth low energyBluetooth LEなどと呼ばれており、公式/非公式は別として実質、複数の呼び名が使われてきた経緯があり、現実的には今現在も使われています。現在、Bluetooth SMARTは、Bluetooth v4(バージョン4)以降、もしくはBluetooth v4.1のように特定のコアスペックを示して識別しています。ただ、必要に応じてBluetooth low energyも使用できることになっています。

-結局のところ、正式にはBluetoothの後にバージョンを付けるいうことでしょうか。それでは、ここからは「Bluetooth v4」について説明をお願いします、という表現でよろしいでしょうか。

はい、大丈夫です。Bluetooth v4の特徴は、何と言っても「低消費電力」であることです。Bluetooth v3以前と比較することで、どのように低消費電力化実現したかを説明します。ポイントは2つあります。1つ目は、「無線仕様を緩くしたことによるRF回路規模の縮小」、2つ目は「用途を限定したことによる通信スループット制限」です。

-「無線仕様を緩くした」というのは、どういうことですか?

Bluetoothは規格バージョンによらず、使用周波数帯域はおおよそ80MHzです。Bluetooth v3以前では79チャネル配置するのに対し、Bluetooth v4は40チャネルで、その分Bluetooth v4はチャネルあたりの帯域が広く、2MHz/チャネルとなっています。一般的に、同じデータレートでは、帯域が広い方が無線機としては回路構成を簡素にでき、電力消費を抑えることができます。

-回路構成ということは、ハードウェアがシンプルになるということですか?

そうです。例えば、Bluetooth v2.xデバイスはIFフィルタの次数が6~7次ですが、Bluetooth v4 LSIのML7105(ラピスセミコンダクタ製)の次数は5次になっています。

他には、変調方式がFSKに限定されていることも低消費電力につながっています。

-変調方式も消費電力に関係するのですか?

無線回路では、PAやLNA、VCO+XOといった高周波回路ブロックの電力消費が圧倒的です。その中で、PAの消費電力は変調方式に大きく依存します。

Bluetoothの規格には、EDR(Enhanced Data Rate)と呼ばれるスループットを向上するために拡張されたデータレート規格がありますが、その変調方式はPSKの一種であるQPSKを使っています。PSKでは、変調波形を正確に表現するために、送信ブロックで振幅を忠実に表現する必要があります。そのため、送信ブロックの最終段であるPAには、振幅に対するリニアな特性が要求されるので、消費電力が増加する傾向にあります。

それに対してFSKでは、変調波は周波数の偏差で表現されるため、振幅に対する性能要求は緩く、リニアリティは要求されません。そのため、PAの消費電力はPSKより小さくて済みます。また、アナログ波形を再現しないスイッチング動作のD級方式アンプが採用される場合もあります。

-なるほど。「無線仕様を緩くしたことによるRF回路規模の縮小」という意味がわかりました。それでは、もう一つの「用途を限定したことによる通信スループット制限」について説明していただけますか。

こちらについては、表を使って説明したいと思います。この表は、先ごろ発表されたv5を除く、現状のBluetooth規格の概要一覧です。

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この表のデータレートとスループットを比較します。Bluetoothの基本規格は、データレート1Mbpsでできており、v3以前のペイロード行効率(スループットをデータレートで割ったもの)は、723.2kbps/1Mbps、2178.1/3Mbpsなので約0.7になります。それに対して、v4.0はスループットが28.8kbpsなので、v3以前のそれと同様にすると約0.03と極端に低く、スループットが制限されていることがわかると思います。

v3以前のBluetoothが、ハンズフリー通話や音楽用ワイヤレスヘッドホン等の連続データを伝送するアプリケーションに多く利用されているのとは違い、Bluetooth v4は元々、ワイヤレスセンサネットワークを主なアプリケーションとするZigBeeやANT等の低消費電力性に対抗して仕様策定されたものです。

-それで、Bluetooth low energyという呼び名ももっているわけですよね。

Bluetooth v4が対象とするユースケースは、非連続データの伝送であり、例としては温度、脈拍などのセンシングデータが挙げられます。これらのデータは、1回の送受信ペイロードは大きくなく、データの特性としては音声の様な連続性がない断片的で非連続性のデータなので、通信も断片的で問題ありません。

例えば、体温のセンシングデータの場合、1バイト(256諧調/32~42℃、分解能0.1℃)のデータを1分ごとに伝送できれば、ほとんどの場合要求を満たすことができます。このケースでは、タイムスタンプを含んでも、最大パケットサイズである27バイト(=オクテット)以下のペイロードで十分です。この条件での平均消費電力は、先ほど例に出したBluetooth v4 LSIでは、わずか1µW程度です。これは、小型のコイン電池、例えば35mAh のCR1220でも、4年の連続動作が可能な消費電力です。

このように、センシングデータの伝送に用途を限定したことで、短いパケットと長い通信インターバルにより、コイン電池で駆動できるまでの低消費電力動作を実現しています。

こちらの表は、今までお話したことをまとめたものです。

BT4vs

Part 4に続く

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