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無線に取り組む機器設計者のための基礎知識近距離無線が台頭。種類と規格、アプリケーションの関係

2016.09.13

-近年は、IoTにも関連して近距離系の無線システムが台頭してきたということで、近距離系の無線システムの話をお願いします。

最初に、近距離系の無線システムの種類とアプリケーションの関係について簡単に説明したいと思います。「近距離系無線システム」という呼び名は長いので、以後「近距離無線」と呼びます。

この図は、近距離無線に分類される主な無線システムを、データレートと通信距離でマッピングしたものです。

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この図から近距離無線を大別すると、高速伝送を得意とするWLAN、究極の短距離無線のANT、スマホとの連携も得意とするBluetooth、日本ではあまり見ませんが世界的に広く普及しているZigBee、1GHzまでの無線周波数で多様な無線周波数と通信速度を実現できるSub-GHz無線とその拡張システムに分けられます。

-ほぼ同じ領域に、異なる無線がけっこう重なっていますね。

少し見にくいかも知れませんが、この図からは、各無線のだいたいのポジションをイメージしてもらえば大丈夫です。次に進めるために、もう少し詳しい内容が必要なので、これらの無線システムで主要なものについて特徴をまとめた表も用意しました。この表からは、仕様の概要を知ってほしいのと、国際規格とネットワークトポロジーの関係を説明したいと思います。

近距離無線通信の概要と特徴

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例えば、国際規格のIEEE802.15.1に注目すると、ネットワークトポロジーはP2P、Starとなっています。これは、IEEE802.15.1という規格をベースにすると、P2P(1対1)やStar(1対N)という比較的簡単なネットワーク構成しか取れないということを示しています。対して、IEEE802.15.4の場合はP2P、Star、Tree、Meshといった、すべてのネットワーク構成が可能になります。

-通信規格によって、対応するネットワークトポロジーが違うというのがポイントですね。

その通りです。それと、矢継ぎ早ですいませんが、もう一つ図があります。ネットワークトポロジーは、アプリケーションと密接に関連しています。アプリケーション例は主に既存のもののイメージです。

ネットワークトポロジーとアプリケーション例

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例えば、スマートメータに代表されるスマートグリッドを実現しようとすると、広範囲において千単位の無線ノードをネットワーク化する必要があります。そのためには、マルチホッピングを使用したMesh型のネットワークが必要になります。そして、Meshネットワークを実現するには、大規模ネットワークに対応することを前提に規格策定されたIEEE802.15.4という無線規格が必要になります。これは、Sub-GHz無線になります。

-つまり、アプリケーションで実現したいことに対応できる、トポロジーと規格を選ぶ必要があることですね。

ここでは最低限、通信方式、通信規格、ネットワークトポロジーが、アプリケーションに深く関係することを覚えておいていただければと思います。できれば、ネットワークトポロジーの概要などは確認しておいていただけると、この先の説明もわかりやすいと思います。

次は、この中でIoTへの応用が期待されている、Bluetooth SMARTSub-GHz無線について話をしたいと思います。

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