エンジニアに直接聞く
ロームグループのIoTへの取り組みラピスセミコンダクタの実績の高い近距離無線通信技術がIoTを推進 LPWAネットワークも視野に
2016.07.25
ラピスセミコンダクタは、ロームグループの一員として、IoTに向けた様々な取り組みを行っている。IoTを実現するための構成要素である、「センサ」、「マイコン」、「無線通信」は、ラピスセミコンダクタの主軸となる技術が大いに活用できる分野であることから、ロームおよびグループ会社のKionixとともにIoTを強く意識した展開を行っている。
Tech Web IoTのオープンに際して、ラピスセミコンダクタが業界をリードするWi-SUNやBluetooth SMARTの開発を担当している、ラピスセミコンダクタ株式会社 野田 氏に話を聞いた。
-今回は「ロームグループのIoTへの取り組み」ということで、担当されている近距離無線通信のIoTにおける状況などについて伺いたいと思います。最初に近距離無線通信について簡単に説明いただけますか。
近距離無線通信というのは、明確な定義はないのですが、通信距離が1km未満の通信として認識されています。下の図は、一般によく聞く無線規格で、IoTの一つの形態であるワイヤレスセンサネットワークに使われることも多い規格です。この他にもいくつかあるのですが、近距離無線とはおおよそこの類の無線通信だと思ってください。
-この中で、ラピスセミコンダクタがIoTに向けて展開している無線通信はどれになりますか?
Bluetooth SMARTとSub-GHz無線通信になります。
-それでは、Bluetooth SMARTの特徴や用途などを教えてください。
Bluetooth SMARTは、Bluetoothの低消費バージョンです。スペックのバージョンで言えばv.4.0以降が該当し、Bluetooth Low Energyとも呼ばれています。上の図からわかると思いますが、通信距離が10m程度の無線通信です。もともとBluetooth SMARTは、ワイヤレスセンサネットワーク向けのZigBee等の低消費電力無線通信に対抗して仕様策定されたものです。従来のBluetoothが、ハンズフリー通話や音楽用ワイヤレスヘッドホン等の連続データの伝送に利用されているのに対し、Bluetooth SMARTは、温度、脈拍などのセンシングデータといった非連続データの伝送を主目的にしており、1回の送受信ペイロードは小さく、通信インターバルを取った断片的な通信によって低消費電力を実現しています。ラピスセミコンダクタは、このBluetooth SMARTのみを手掛けています。
現状では、ヘルスケアを中心としたウェアラブル機器ネットワークがアプリケーション例になると思います。他には、PUSH通知や、位置測位をしてロケーションに合わせて必要な情報を配信するBeaconといったアプリケーションも、今後の発展が期待できます。
-もう一つのSub-GHz無線通信にはどういった特徴がありますか?
Sub-GHz無線通信は、1GHz未満の帯域を使う無線の総称で、Bluetoothのように標準化団体が命名した商標ではありません。IoTでの利用を期待しているのは900MHz帯で、日本では920MHz帯になります。920MHz帯の無線通信の特徴は先ほどの図が示すように、通信距離が1kmほどで、さらに障害物にも強く電波の到達性が高いことです。これは2.4GHzを使うWLANでは限界があった屋外使用も範疇とする、比較的広い範囲のネットワークを簡単に構築することが可能になります。
応用例では、Wi-SUNという規格をご存じでしょうか?Wi-SUNは代表的な920MHz帯Sub-GHz無線通信です。
-スマートメータのBルートに採用された規格ですね。HEMSにも利用が期待されていますよね。
スマートメータはどんどん普及しています。HEMS/BEMSに関しても省エネの観点から普及が望まれています。また、HAN(Home Area Network)にもWi-SUNが採用されています。比較的具体的なイメージができているアプリケーションなので、今後の普及を期待したいところです。
他には、トンネル、橋梁、災害時の避難場所となる公共建築物、高層ビルに代表される大型建造物などの強度診断や劣化検出を行う、構造物ヘルスモニタ(Structure Health Monitoring)も注目されています。また、スマートアグリやIT農業と呼ばれる分野や法面などの土壌状態のモニタなども視野に入っています。
-これらの無線通信に関して、ラピスセミコンダクタはどのような製品を用意しているのですか?
どちらもコアとなる無線通信LSIを開発、製品化しています。
Bluetooth SMARTに関しては、v.4.0対応のML7105-00XとV.4.1対応のML7125-00Xが無線通信LSIになります。また、ML7105-00XをコアにしたBluetooth SMARTモジュールMK71050-03も用意しています。
Sub-GHz無線通信には、ML7396BというLSIが国内920MHz帯に対応しており、スマートメータに採用され、大規模HEMS実験にも使われています。また、Wi-SUNのCTBU(Certified Test Bed Unit)に採用されており、業界標準LSIとして知られています。少し前に、ML7396BとWi-SUNに最適な制御CPUをワンチップ化したLSIであるML7416も追加されています。
Sub-GHzに関してもBluetooth SMART同様にモジュールを用意しています。こちらは、ML7396Bをコアとしてロームがモジュール化しておりBP35A1という型番になります。
-どちらもモジュールが用意されていますが、なぜですか?
IoT市場において、既成概念を超えた斬新なアプリケーション創造しているのはベンチャー企業などが多く、ハードウェアやソフトウェアの開発機能をもたないケースは少なくありません。特に無線通信を実装するための高周波設計や規格認証は、そのリソースがない限り不可能に近いと思います。したがって、このような業態の企業が必要なのは、高周波設計が必要なLSIではなく、搭載するだけで無線通信が可能になるモジュールなのです。同様に、ソフトウェアもサポートされている必要があります。
Bluetooth SMARTモジュールのMK71050-03は、「ネットで1個から買える! すぐに使える! らくら~くモジュール」をキャッチフレーズに、だれもがすぐに手に取って評価できることで開発しました。そして、必要な資料とサンプルソフトウェアは当社専用サイトからダウンロードできます。
-ハードウェアやソフトウェア開発より、どんな情報をどのように使うかが重要になるIoTならではですね。
ラピスセミコンダクタは半導体メーカーであり、無線通信は得意分野の一つです。まずは、得意分野でIoTに貢献していくことがロームグループのアプローチの一つです。
-ところで、IoTアプリケーションと言われて久しいものが多い気がしますが、そんな中で何か新しい動向はありますか?
昨年あたりから、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークという言葉を頻繁に耳にするようになりました。これは、IoTのセンサノードが爆発的に増えることへの対応として考えられている、携帯電話ネットワークに代わる低コストネットワークで、すでに携帯電話のキャリアがフィールドトライアルを実施しています。また、他の例では、NTT西日本がIoT向けにLPWAネットワークとして、「LoRaWAN」というSub-GHz無線通信を利用しています。
こういった状況から推測して、LPWAネットワークはインフラも既存の基地局を利用するなど急速に準備が整い、広く開放されたネットワークになる可能性が高いので、Sub-GHz無線通信がこの市場を支えるものになることを期待しています。
-それは、既存のSub-GHz LSIやモジュールで対応できるのですか?
通信規格に合わせたモディファイが必要なだけで、開発は容易な物もあります。ラピスセミコンダクタのSub-GHz無線通信技術は、IoTとLPWAネットワークの優れたソリューションになると考えています。
製品情報
- 特定小電力無線(Sub-GHz帯無線) LSI
- 特定小電力無線モジュール
- BluetoothR モジュール MK71251-01/02(BluetoothR core spec v4.1対応)
- BluetoothR モジュール MK71050-03(BluetoothR core spec v4.0対応)
- 無線LANモジュール
- EnOcean
- センサ
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