Sub-GHz無線|基礎編

無線設計のポイント:調整、測定時-マッチング調整

2018.05.29

この記事のポイント

・マッチングはアンテナからLSI間の信号を最大の効率で送るために必要。

・マッチングが正しく調整されていないと、所望の送信出力や受信感度が得られなくなる。

・マッチング調整には、スミスチャートが主に用いられる。

今回も「調整、測定時のポイント」の補足として、マッチング調整について説明します。

無線設計のポイント:調整、測定時-マッチング調整

「調整、測定時のポイント」として、「マッチング回路の調整」を挙げました。マッチングとは、アンテナからLSI間の信号を最大の効率で送るために必要で、マッチングが正しく調整されていないと、所望の送信出力や受信感度が得られません。そういう意味では、非常に重要で必須の調整になります。以下に、回路図における調整部分を示します。

Sub-GHz無線通信LSI、ML7345のアプリケーション回路例およびマッチング調整回路

マッチング調整の目的

マッチング調整は、アンテナと無線LSI間のインピーダンス調整で、電波の反射を抑えることを目的としています。アンテナと無線LSIはインピーダンスが異なります。もし、アンテナとLSIを直接接続すると、インピーダンスの違いから電波が反射して受信/送信ができません。これを解決するために、アンテナとLSI間にマッチング回路を挿入してインピーダンスを調整します。アンテナとLSI間のインピーダンスが整合(マッチング)させることで、電波の反射が抑制され、所望の受信/送信ができるようになります。

マッチング調整の目的

マッチング調整

マッチング調整によってインピーダンスを整合させます。高周波アンテナのインピーダンスは50Ωです。対してLSIのインピーダンスは定まってなく、複素数R+jXで表されます。通常、データシートや設計マニュアルに具体的な値が記載されています。これらのインピーダンスを、インダクタ(L)やキャパシタ(コンデンサ、C)を使って、双方から等しく見せるための回路がマッチング回路です。

インピーダンス整合の意味

具体的には、アンテナから見た回路側(マッチング回路+LSI)のインピーダンスが50Ωになるように回路を構成します。この時、LSIから見たインピーダンス(マッチング回路+アンテナ)はR-jXとなります。実際の調整には多少なりとも試行錯誤が必要になります。

マッチング調整には、「スミスチャート」を使います。前述のようにマッチングに使用する部品は、主にインダクタとキャパシタです。それぞれ接続の仕方に、対地(Shunt)と直列(Series)があります。したがって、インピーダンスの変更(調整)には4種類の方法があります。(チャート内番号、記号参照)

  • ① Shuntのインダクタ
  • ② Seriesのインダクタ
  • ③ Shuntのキャパシタ
  • ④ Seriesのキャパシタ

これらを組み合わせて目標のインピーダンス50Ωを目指します。

スミスチャート

以下はスミスチャートを使用して、インダクタとキャパシタの値を調整した例です(回路図のピン24につながるライン上のC×2とL)。

スミスチャートを使ったインピーダンス整合の例

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