Sub-GHz無線|基礎編

無線設計ガイダンス:評価の検討

2017.11.14

この記事のポイント

・無線通信の評価の第1歩として、通信距離と通信の安定性を確認する。

・確認にはpingを利用するのが手軽で、通信速度などある程度の情報も得られる。

この「無線設計ガイダンス」は、無線設計の経験があまりない、もしくは初めてという人が無線設計を始めるためのものです。ここでは、一例として、近年のIoTの1つである、ビルの空調に通信ネットワークを導入して、快適かつ省エネな空調システムを構築することをイメージしながら、以下の手順で、各々においてどの様なことをするのかを解説していきます。

  • ① 無線方式の選択
  • ② 無線デバイスの選択/仕様確認/動作確認
  • ③ ネットワークトポロジーの検討
  • ④ ハードウェアの検討
  • ⑤ ソフトウェアの検討
  • ⑥ 評価の検討

今回は⑥ 評価の検討です。

前回までで、ネットワーク、ハードウェア、ソフトウェアの検討が終わり、後は構築したシステムが目論見どおりに動作するか、そして必要な仕様を満たし、十分安定しているかなどを確認します。これらを総じて「評価」と呼びます。

本来、無線システムの評価には評価項目がたくさんあり、電波暗室や専用の測定器が必要で、このような施設と設備がないとできないことがたくさんあります。さらに、無線の知識はもちろんですが、測定の知識、問題があればその原因を見つけて解決する知識と経験が必要になります。こう書いてしまうと、「何もできることがない..」といった話になりそうですが、今回は機能や性能が確認済みでファームウェアも提供され、技適も取得済みの無線通信モジュールを使用したので、その前提で最低限すべきことをまとめてみました。

1) 通信距離

必要と思われる場所にデバイス(子機)を設置して、それらがコーディネーター(親機)と安定した無線通信ができる必要があります。通信距離は様々なものに影響を受けます。アンテナ(コーディネーターとデバイス)の位置、筺体の形と材質、機器の周囲の電波環境など様々ですが、見通しの良し悪しが影響するなど、感覚的にわかることもあります。実は、通信距離や安定性は、実使用環境での評価が最も効果的です。特に今回は、ビル内という環境なので、比較的確認しやすいかと思います。

2) 通信安定性

実使用環境下で、必要なスループットが確保できるかを確認しておくべきです。何かが原因で通信が途絶えたり繋がったりといった状況があれば、スループットに影響が出ます。

3) 電子機器としての基本的な確認

無線やネットワークという観点だけではなく、電子機器として品質や信頼性が十分であるか確認するのは当然のことです。連続動作や温度試験など、機器や状況に応じて必要な評価を実施する必要があります。

さて、1と2に関して、実際にどうしたらよいかという点に関しては、最初のアプローチとして、「ping」を使ってみる方法を提案します。pingとは、ネットワークの接続状態などを確認できるコマンドです。ICMP(Internet Control Message Protocol)のechoコマンドにより、指定した相手先に文字列を送り、相手先からの返送の有無によりネットワークの接続が確認でき、応答速度の情報を得ることもできるので、ネットワークの伝送速度を確認することも可能です。pingは手軽で簡単な確認が可能です。

今回の例では、通信の安定性に問題が確認されても、ソフトウェアに問題がない前提では、おそらくコーディネーター(親機)とデバイス(子機)の位置の調整などで、無線に関する問題は解決できるかと思います。これは、完成された無線通信モジュールを使うメリットの1つです。(とは言え、可能な限りの確認をしっかりしましょう。)

無線の評価に関しては、この章の後に予定している、無線通信LSIによる設計に関する章でも説明するつもりです。

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