Sub-GHz無線|基礎編
無線特性の用語:送信パワーと隣接チャネル漏洩電力
2016.10.25
この記事のポイント
・送信パワーは、送信機がアンテナに供給する電波の強さで、単位はmWまたはdBm。
・隣接チャネル漏洩電力 (ACP)は、隣に位置するチャネル帯域に放射される/漏れ出す電力で、単位はdBm。
・隣接チャネル漏洩電力比 (ACPR/ACLR)は、ACPの比で、単位はdBまたはdBc。
「Sub-GHz無線開発の基礎知識」の「無線特性の用語」第2回目です。今回は、「送信パワーと隣接チャネル漏洩電力」についてです。この章は、ビギナーの基礎として、用語の意味を理解することを意図しています。
送信パワー(Tx Power)
送信機が空中線(アンテナ)に供給する電波の強さです。単位はmWまたはdBmです。
前に説明しましたが、念のため、1mW=0 dBmです。また、「送信電力」と言う言葉も使われていますが、同じ意味です。送信パワーは、全帯域総和電力で定義される場合と、決められた帯域幅(チャネル帯域)で定義されて場合があるので確認が必要です。
隣接チャネル漏洩電力 (ACP:Adjacent Channel leakage Power)
隣に位置するチャネル帯域に放射される/漏れ出す電力を、隣接チャネル漏洩電力と呼びます。ACPはゼロがベストですが、実際はそうはならないので最大値などがデータシートで示されています。単位は絶対値なのでdBmです。
隣接チャネルは、+側と-側の2つ、つまり両隣に存在しますが、ACPは同じ値になることはありません。データシート上では+側と-側に分けて記載されている場合もありますが、普通は、2つのうち大きい方の値のみを記し、どちらの側かは別にして最大のACPが示されていることが多いです。
隣接チャネル漏洩電力比 (ACPR/ACLR:Adjacent Channel Leakage Ratio)
ACPが電力の絶対値であるのに対して、相対比で示したものを隣接チャネル漏洩電力比と言います。基準となる信号を変調波にした場合の単位はdBとなり、無変調波とした場合の単位はdBcとなります。
dBcはディービーシーと読み、搬送波に対する電力比を表す単位です。dBcのcは、搬送波:carrierのcです。ちなみに、FSK変調は振幅変化でないため、dBもdBcであっても意味するところは変わりません。また、隣接チャネル漏洩電力比をACLRと略している場合もありますが、もちろん同じ意味です。
ACPRを具体的にイメージできるように、ACPRの測定波形を示します。
チャネル帯域25kHzから、両隣のチャネルに対するACPRを赤いポイントで測定しています。左は変調なし、右は変調ありです。ここで、理解してほしいのは、波形が示す通りチャネル帯域の電力は多かれ少なかれ漏れており、どこまで許容できるかを考えるパラメータであるということです。
変調あり/なしの2つを示したのは、今後の参考としてです。この例は、チャネル帯域が狭いため隣接チャネルまでが近くなっています。そのため、変調ありの右の例では、変調により広がった分のパワーによりACPRが悪い値になっています。チャネル帯域が広い場合は、変調のあり/なしによるACPRの差はほとんど無視できます。
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Sub-GHz無線はM2MやIoT、ワイヤレスセンサネットワークなどの新市場をはじめ、幅広い分野での活用が検討されています。このハンドブックは、Sub-GHz無線の活用から機器開発の基礎までを解説しています。
Sub-GHz無線
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基礎編
- Sub-GHz無線の概要
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Sub-GHz無線開発の基礎知識
- 無線特性の用語:搬送波周波数と周波数精度
- 無線特性の用語:送信パワーと隣接チャネル漏洩電力
- 無線特性の用語:占有帯域幅
- 無線特性の用語:スプリアス
- 無線特性の用語:受信感度と選択度
- 無線特性の用語:ブロッキングとスプリアス応答
- 無線特性の用語 : まとめ
- 無線設計ガイダンス:設計の手順
- 無線設計ガイダンス:無線方式の選択
- 無線設計ガイダンス:無線デバイスの選択
- 無線設計ガイダンス:ネットワークトポロジーの検討
- 無線設計ガイダンス:無線デバイスの仕様および動作確認
- 無線設計ガイダンス:ハードウェアの検討
- 無線設計ガイダンス:ソフトウェアの検討
- 無線設計ガイダンス:評価の検討
- 無線設計ガイダンス : まとめ
- 無線設計のポイント:回路設計
- 無線設計のポイント:基板(PCB)設計
- 無線設計のポイント:調整、測定時
- 無線設計のポイント:調整、測定時-VCOの調整
- 無線設計のポイント:調整、測定時-マッチング調整
- 無線設計のポイント:調整、測定時-スプリアス調整、その他の調整
- 通信フォーマット:通信レイヤとは
- 通信フォーマット:物理層(PHY層)のフレームとは
- 通信フォーマット:データリンク層(MAC層)のフレームとは
- 通信フォーマット:ネットワーク層とアドホックネットワーク
- 干渉回避の手法:キャリアセンス
- 無線システム検討へのヒント
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Sub-GHz無線の概要 ーまとめー
- 製品紹介