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自社製SiC-MOSFETとSiC-SBDによる「フルSiC」パワーモジュール:スイッチング損失低減と高周波化で機器を小型に

2016.12.06

ロームは、世界に先駆けて、自社製のSiC-MOSFETとSiC-SBDを使用した「フルSiC」パワーモジュールを量産しています。従来のSi-IGBTパワーモジュールに比べて、高速スイッチングと大幅な損失低減が可能です。最新のモジュールには、第3世代SiC-MOSFETを採用し、さらなる低損失を実現しています。

フルSiCパワーモジュールの構成

現在、量産しているフルSiCパワーモジュールは、1つのモジュールでハーフブリッジ回路を構成できる2in1タイプと、1つのモジュールで昇圧回路を構成できるチョッパータイプがあります。SiC-MOSFETSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)で構成されているタイプと、SiC-MOSFETのみで構成されたタイプがあります。

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Si-IGBTパワーモジュールと比較して大幅にスイッチング損失を低減

大電流を扱うパワーモジュールには、SiのIGBTとFRD(ファストリカバリダイオード)を組み合わせたIGBTパワーモジュールが広く用いられています。IGBTモジュールは、IGBTのテイル電流とFRDのリカバリ電流によるスイッチング損失が大きいという課題がありますが、SiC-MOSFETとSiC-SBDによる「フルSiC」モジュールは、大幅にスイッチング損失を低減しています。

右の図は、SiC-MOSFET+SiC-SBDによるフルSiCモジュールBSM300D12P2E001(1200V/300A)と、IGBT+FRDのモジュールのスイッチング損失を、同一環境で実測した結果をもとに比較したものです。

Eonはスイッチングオン時の損失(逆回復損失含む)、Eoffはオフ時の損失で、Errはボディダイオードの逆回復損失です。

SiC-MOSFETにはIGBTのようなオフ時のテイル電流がないのでEoffが大幅に減少します。逆回復電流もほとんど流れないためErrが大幅に削減されます。Eonについても30%ほど低減されるため、合計でスイッチング損失を77%削減可能です。

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IGBTより高速なスイッチングが可能

フルSiCモジュールは、IGBTモジュールに比べて、高速なスイッチングが可能です。以下の図は、PWMインバータを5kHzと30kHzで駆動した時の損失をシミュレーション結果です。SiCモジュールは高速スイッチングが可能なことから、30kHzの条件では60%のスイッチング損失を削減可能であるという結果がでています。あるいは、損失を増大させることなく周波数を6倍にすることが可能です。

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スイッチング損失低減と高速スイッチングがもたらすメリット

スイッチング損失が低減することで、効率が向上し発熱が下がります。これによって、冷却器を簡素にすることが可能です。例えば、ヒートシンクの小型化、水冷や強制空冷を自然空冷にすることができます。これらは、システム全体の小型化とコスト削減につながります。

高速スイッチングによる動作周波数の高周波化は、リアクトルやコンデンサといった周辺部品の小型化に寄与します。これは、通常のスイッチング電源回路と同じです。また、SiC-SBDは短パルス逆回復現象が発生しないので、短パルス時の異常サージ電圧を気にすることなくPWM制御ができます。

インバータや電源の高効率化を図りながら小型化が可能になる点は、フルSiCパワーモジュールの大きなメリットです。

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