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パワー系アプリケーションの損失低減と小型の鍵:パワー系ダイオードで損失が最も小さいSiC-SBD

2016.04.07

ロームは、高耐圧と大電流を扱う回路に最適なSiC(シリコンカーバイド)材料を用いたSBD(ショットキーバリアダイオード)の開発を推進しています。2010年に国内初となるSiCによるSBDの量産を開始し、現在では第2世代のSiC-SBDを展開しており、車載を含む様々なアプリケーションで採用が進んでいます。

SiC-SBDは以下の特徴をもっています。

  • 逆回復時間trrが速い(高速スイッチングが可能)
  • ・trr特性の温度依存性もなく
  • ・低VF(第2世代SBD)
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これらが、使用上でどのようなメリットにつながるか説明します。

スイッチング損失を大幅に低減

SiC-SBDは、Siダイオードに比べ大幅に逆回復時間trrが改善されています。右のグラフは、SiC-SBDとSi-FRD(ファストリカバリダイオード)のtrrを比較したものです。回復までの時間trrは短く、ダイオードオフ時の逆方向電流IRが大幅に少なく収束も速くなっています。つまり、逆回復電荷量Qrrが少ない=スイッチング損失が小さい、ということになります。

スイッチング損失が小さいと、2つの可能性が広がります。1つは、同じスイッチング周波数で動作させるのであれば発熱はより小さくなり、放熱板や放熱のための基板面積を小さくすることができます。当然のことながら効率も向上します。2つ目は、同じ発熱、損失を許容できるとすれば、より高速でスイッチング動作をさせることができます。スイッチング電源の例では、スイッチング周波数を高くすることで、より小型のコイル(インダクタ)とコンデンサを使用できるようになり、小型化、省スペース化につながります。

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安定した温度特性を実現

SiCは、温度に対する特性の変動がSiに比べ小さいため、高温条件でも特性が安定しています。

前述のtrr特性も温度に対して非常に安定しています。Si-FRDのtrrは温度上昇によって増加するのに対し、SiC-SBDはほぼ一定のtrrを維持することができます。また、高温動作時もスイッチング損失の増加はほとんどありません。

また、SiC-SBDの順方向電圧VFはSi-FRDとほぼ同等の1V程ですが、温度係数はSi-FRDとは逆の「正」特性で、温度上昇と共に増加します。順方向特性のグラフの実線は25℃時の特性で、破線が125℃です(色の違いは世代を示す)。この特性は、温度上昇による熱暴走が起こりにくくなる方向にあり、並列接続時など、高温条件での安全動作の確保につながります。

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第二世代では順方向電圧低減し導通損失も低減

すでに、ロームのSiC-SBDは第二世代が量産供給されています。第二世代SiC-SBDは製造プロセスの工夫により、リーク電流やtrr性能を従来品と同等に保ちながら、VFを約0.15V低減することができました。これにより、VFによる導通損失が低減されます。順方特性グラフの赤色の波形は第一世代のSiC-SBD、青色は第二世代で、VFの低減が確認できます。

SiC-SBDは、高速なtrrによるスイッチング損失の低減に加え、VFの改善が改善されたことで、パワー系のダイオードでは、最も損失が少ないダイオードといえます。

パワー系アプリケーションの効率向上と小型を促進

SiC-SBDの特徴を説明してきましたが、ここで代表的なアプリケーションのいくつかを紹介します。主に、パワー系アプリケーションにおいて、従来のSiダイオードを代替することで、今日の重要課題であるシステムの効率向上と小型化のキーデバイスの一つになります。

<アプリケーション例>

  • PFC(力率改善)回路
  • モータードライブ回路
  • PV Inverter(モーター) など

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ラインアップには、AEC-Q101に準拠した車載対応品があり、世界中でEVおよびHEVのオンボード充電制御回路に採用されており、すでに多くの市場実績をもっています。

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