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力率改善と高効率を両立したAC-DCコンバータ制御技術力率改善と高効率の両立を実現した2つの新制御方式
2018.06.12
-BM1C101Fは、PFCコントローラのオン/オフ機能と、PFC出力電圧を切り替える新制御方式によって力率改善と高効率の両立を目指したということですが、最初に、「内蔵のPFCコントローラを設定した電力でオン/オフできる機能」について教えてください。
まず、電源としての回路をイメージいただくために、このアプリケーション回路例を見てください。変換回路は擬似共振方式で、トランス一次巻線のインダクタと共振コンデンサの電圧共振を利用した自励式のフライバックコンバータです。ポイントの1つであるPFCをオン/オフさせる電力の設定は、QR_CS端子のカレントリミッタレベルの検出を利用しており、P_OFFSET端子の抵抗の兼ね合いで簡単に設定できます。
このPFCオン/オフ機能による効率向上の原理は比較的単純で、軽負荷時や待機時にPFCのスイッチング動作を停止することでPFC回路の電力消費を削減し、効率低下への影響を最小にするものです。特に、PFCの必要がない負荷範囲、例えばヨーロッパでは75W以下でオフするように設定すれば電源の効率を改善できます。
-どのくらいの効率の改善が期待できますか?
回路によりケースバイケースなのですが、一例として100Wクラスの電源での評価における効率のグラフがありますのでご覧ください。明らかに軽負荷時にも高効率が維持されています。待機電力の評価の例では、AC100V時に85mW以下、AC230V時に190mW以下とEnergy Star6.0の要求である210mW以下を達成できました。
-それでは、もう1つの「PFC出力を切り替えできる新制御方式」とはどんな制御なのでしょうか?
-他にも特長がありますか?
電源用ICとしては、BM1C101Fは高効率で低ノイズの擬似共振回路を採用しています。この方式は、ソフトスイッチングによりEMIが低くいのが特長の制御方式です。また、PFM動作でバースト機能を内蔵しており、軽負荷時にも高効率を維持します。その他にも、近年の電源コントローラICが搭載しているほとんどの保護機能も備えています。コントローラタイプのICなのでMOSFETは外付けで、設計の自由度が高いのも特長です。
もう1つ重要なのは、PFCコントローラと擬似共振コントローラを集積したことにより、共通設計部分の部品点数を削減することができ、個別に回路設計した場合と比較して約20%の部品点数削減が可能で小型化が可能です。大型液晶TVに代表される100Wクラスの機器においては、設計や評価にかかる時間や工数の軽減や修理の利便性から電源のアダプタ化が進んでいます。従来のように個別の電源ICとPFCコントローラを使用する回路構成に対して、部品点数を削減したこのソリューションはACアダプタのさらなる小型化を可能にします。
-先ほど見せていただいた回路には、トランスや絶縁部品が必要なようです。こういった部品選定や回路設計などのサポートはしていただけるのでしょうか?
最適な電源回路を設計するには、ICの選定に加えて最適な周辺部品と基板レイアウトが必要なのは言うまでもありません。ロームでは、ICの開発から販売はもちろん、お客様の設計をサポートする専任部隊を用意しています。様々な提案やサポートが可能なので、問い合わせをいただければと思います。
-最後に、まとめをお願いします。
力率改善回路を搭載しながら待機時の効率も高く維持できることを、PFCコントローラと擬似共振コントローラを集積したAC-DCコンバータ用コントローラICの1つであるBM1C101Fを例にして説明させてもらいました。BM1C101Fは、PFCコントローラを設定した電力でオン/オフできる機能と、PFCの出力電圧をAC入力電圧に適した電圧に自動切り替えする新制御方式の採用により、力率改善と軽負荷時の高効率を両立しています。これによって、世界的な高周波電流規制に対応しつつEnergy Star6.0への対応などが可能です。さらに部品点数を2割ほど減らすことができるので、例えば100WクラスのACアダプタの小型化にも貢献できます。
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