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力率改善と高効率を両立したAC/DCコンバータ制御技術

力率改善回路を搭載すると
電源の効率が下がる?

注目ワード
  • 効率
  • 力率
  • 入力電力に対する出力電力の割合
  • 皮相電力に対する有効電力の割合
  • スイッチング電源
  • 高周波成分
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  • 力率改善回路(PFC)
  • PFCパッシブタイプ
  • PFCアクティブタイプ
  • 正弦波
  • PFCコントローラ
  • BM1C101F
  • 擬似共振型
  • Enegy Star6.0

現在、省エネルギー化は世界共通の課題であり、電子機器には稼働時だけではなく待機時の電力消費に関しても厳しい削減が求められている。また、供給される電力の無駄を削減するには、PFC(力率改善)機能の搭載が必須となる。しかしながら、PFCにより特に待機時や軽負荷時の効率が低下することから、機器設計において力率と効率の兼ね合いが大きな課題となっている。

この様な状況において、ロームは機器の力率改善と待機時の高効率化を両立する独自の電源制御技術を採用したAC/DCコンバータICを開発した。力率改善と高効率化の課題とその解決へのアプローチについて、ローム株式会社の担当エンジニアに聞いた。

-早速ですが、今回伺う話のテーマが「力率改善と軽負荷時の高効率を両立する」ということなので、最初に「力率」と「効率」について簡単に説明いただけますか?

近年、「効率」という言葉は幅広く使われていますが、「力率」は一般の方が使うことはほとんどないかもしれませんね。

効率入力電力に対する出力電力の割合で、%で表すことがほとんどです。簡単な例だと、電源の出力電力が60Wの時の入力電力(消費電力)が80Wだった場合は、60W/80Wから効率は75%になります。これは理解が簡単かと思います。

力率は、交流の皮相電力、有効電力、無効電力の考え方が必要なので少し面倒かもしれません。力率自体は皮相電力に対する有効電力の割合で、最大は1になります。こちらは、0.9とか0.95といった小数を使うことが多いと思います。皮相電力は電力会社が送電する電力で、「見かけの電力」ということもあります。有効電力というのは、機器、つまり負荷が使用する電力です。例えば、前出の電源を例にすると、電源(機器)が使用(消費)する電力(有効電力)が80Wで、この80Wのために電力会社が送電した電力(皮相電力)が100Wだとすると、力率は80W/100Wから0.8になります。

力率は交流電力なのでベクトルで考えます。交流電力の電圧と電流の位相をθとすると、力率はCOSθで求めることができ、電圧と電流の位相差がない状態で正弦波の時に1になります。言葉だけだとわかりづらいので、図をご覧ください。

力率=1を示す電圧波形と電流波形

負荷が単純な抵抗の場合は位相遅れが発生しないので力率は1になります。容量性や誘導性の負荷がある場合や波形が正弦波ではない場合は位相のずれが生じ、力率は1ではなくなります。これを、今回のテーマであるスイッチング方式のAC/DCコンバータの入力電圧と電流波形で考えてみます。

スイッチング電源は、入力の交流電圧平滑用にコンデンサが使用されています(コンデンサインプット型整流平滑と呼ばれている)。この平滑用コンデンサは、当然のことながら容量性負荷になります。このコンデンサへの入力交流電流は、入力交流電圧が平滑コンデンサ電圧よりも高い時にだけ流れるため、下図のように導通角が小さくパルスのような正弦波でない高周波成分を含んだ電流になります。

スイッチング電源で生じる力率が低下する原因の高周波パルス的な高電流波形

この様な状態では、電力消費が同じだとしても電源側では一時的に大きな電流が流れるため、Cin=100µF、Vin=100Vrms、Po=20Wとすると入力電流のピーク値は1.4Aとなります。力率は約0.5となり、力率が1のときと比較すると5倍になります。したがって、この様な高周波成分を含んだ正弦波でない電流が流れる負荷に対しては大きな皮相電力が必要なり、電力供給側である電力会社は余分な発電や大きなピーク電力に対応する設備が必要になり、コストも増加してしまいます。

-簡単な言い方をすれば、機器の電源の力率が悪いとその消費電力より大きな電力を供給する必要があり、発電や送電に無駄が多くなるということですね。

その通りです。力率が低いことの問題には、すでに世界各国で対応が取られており、指定電力以上を消費する機器には高周波電流規制を行うなど、法規制を行っている国も少なくありません。この規制に対応する手段の1つが力率改善回路(PFC)の利用で、力率を高め高周波電流を抑制します。ヨーロッパではすでに75W以上の機器にはPFCの搭載が義務付けられており、日本においてもほぼ搭載されています。

-PFCは、どの様にして力率を改善するのですか?

PFCとしては、受動素子(インダクタ)を使用したパッシブタイプと、MOSFETなどのパワースイッチを使うアクティブタイプが一般的です。この図は、アクティブPFC回路による電流波形の改善のイメージです。高いピークを持ったパルスのような電流波形を、スイッチング動作によりチョッピングして正弦波に近づけます。

力率改善による電流波形のサイン波化

特徴として、パッシブタイプは回路構成が簡単ですが、広い入力電圧範囲には対応しづらく小型化も難しい面があります。それに対してアクティブタイプは、広い入力電圧範囲に対応でき小型化にも有利です。PFCコントローラなどと呼ばれているICには、当然のことながらアクティブタイプです。

-それでは、今回のテーマである「力率改善と高効率の両立」に話を移したいと思います。これは、「PFC回路を搭載すると効率が下がる」と言うことでしょうか?

アクティブ方式のPFC回路の搭載は、その分の消費電力が増えるので効率に関し言えば低下します。特に待機モードを持つ昨今の電子機器においては、PFC回路の消費電力が待機時の効率に与える影響が顕著になります。

この課題に対して開発したのが、PFC制御機能を内蔵したAC/DCコンバータ用のコントローラICの1つが「BM1C101F」です。BM1C101Fは擬似共振型を採用しており、内蔵のPFCコントローラを設定した電力でオン/オフできる機能と、PFC出力を切り替えできる新制御方式が特長です。これらの技術によって待機時電力を大幅に削減でき、国際規格のEnegy Star6.0の要求をクリア可能です。

力率改善と高効率を両立したAC/DCコンバータ制御技術 Part 2

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