電源設計の技術情報サイト

技術資料ダウンロード

エンジニアに直接聞く

スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは

インダクタおよび
全体のまとめ

インダクタ編 -その5-

注目ワード
  • パラメータの意味
  • 等価回路
  • 寄生成分
  • 巻き線閉磁路タイプ
  • スリーブレス構造
  • 積層タイプ
  • 直流重畳許容電流
  • 温度上昇許容電流
  • メタルインダクタ
  • 低電圧大電流化
  • 小型化
  • 使い分け

-さて、「スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは」というテーマで、最初はコンデンサについて、続いてインダクタに関していろいろと話を伺いました。これで最後になりますので、インダクタ編と全体のまとめをさせていただければと思います。

コンデンサ編

インダクタ編

-最初にインダクタのまとめをしたいと思います。インダクタに関しては、4つのことについて説明いただきました。順にキーポイントを再確認させてください。

「その1:インダクタの仕様と等価回路を読み取る」では、インダクタの仕様と規格値の理解を目的に、表記されていない「含み」についても説明しました。例えば、直流重畳許容電流といったパラメータの意味を理解いただくのは基本ですが、仕様項目の名称が同じでも、規定条件が製品やメーカーによって同じとは限らないので、インダクタ選択時の比較検討には注意が必要です。

TY-2-1_table1

もう一つ重要なこととして、仕様の理解の他に、インダクタの基本特性を理解するために、等価回路とインダクタの寄生成分について知っておくことをあげました。これらは、仕様項目とも密接に関係しています。

TY-2-1_equiv

-「その2:各種パワーインダクタの特徴」では、スイッチング電源に使われるインダクタの種類と特徴を伺いました。

近年、主にスイッチング電源回路に使われるのは、巻き線閉磁路タイプと積層タイプです。巻き線閉磁路タイプには、ドラムスリーブ構造とスリーブレス構造の2種類があり、小型化と飽和特性が穏やかな点からスリーブレス構造のインダクタが多く使用される傾向にあります。積層タイプは、かつてはスイッチング電源には使われませんでしたが、飽和特性とインダクタンスの増加、と言っても数µF程度ですが、それによって、近年のメガ帯の発振周波数を使うスイッチング電源に使われるようになりました。サイズに関しては巻き線タイプより小さくできるので、モバイル機器の電源に適します。

TY-2-2_wind1

確認事項としてあげたいのは、スリーブレスタイプはその構造から機械的強度に関する課題をもっていることです。当社では従来の樹脂をより硬度が高い樹脂に変更することで、強度を上げる対策を行っていますが、現状ではメーカーによって対策はまちまちですので、応力や温度に対するストレス試験データを入手するなどして確認することが大事です。

-「その3:電源回路における検討事項」では、インダクタの特性がスイッチング電源回路にどのような影響を与えるかを説明いただきました。

ここでは、重要検討項目である直流重畳許容電流温度上昇許容電流が、降圧コンバータの出力電流とどう関係するか説明しました。また、インダクタの損失の考え方についても説明しました。説明したことが多かったのと、重要なポイントがけっこうあったのでまとめると、

  • 直流重畳許容電流の最大値を超えると、インダクタが飽和してインダクタのピーク電流が異常に大きくなり、効率の低下や異常動作が発生し、最悪、電源ICが破壊することがある。
  • 温度上昇許容電流より大きな電流を流すと発熱が大きくなり、インダクタだけではなく周辺部品の信頼性も低下させる可能性があり、発熱が許容できないレベルになれば焼損する可能性もある。
  • インダクタの損失電力は、DC損失電力+AC損失電力となり、負荷が軽い場合はAC損失が支配的で、負荷が重いときは逆にDC損失が支配的になる。
  • スマートフォンのように待機状態が長い機器はAC損失が支配的な状態にあり、Racが大きい場合バッテリの消耗が速くなる可能性があるので注意。
  • Racは規格値表に載っていないことがほとんどなので、Racの情報が必要な場合はメーカーに問い合わせてみる。

この5つになります。

TY-2-3_effi

-最後は、メタルインダクタが昨今注目されているという話でした。

「その4:電源の変遷とメタルインダクタ」では、近年の一つの傾向であるICの電源電圧の「低電圧大電流化」に対して、メタルインダクタが有用であることを説明しました。メタルインダクタが低電圧大電流化小型化要求に適するのは、

  • 大電流を供給するためにはインダクタンスは小さい必要がある。
  • そのためにスイッチング電源のスイッチングを高速化。
  • インダクタンスが小さければインダクタのサイズも小さくなる。
  • メタルインダクタは直流重畳許容電流が高く飽和も非常に穏やかで、直流重畳許容電流を同じとするならフェライトよりサイズを小さくできる。
  • メタルインダクタのメタル材は透磁率が低くインダクタンスはあまり大きくできないが、実用4.7µF程度を実現。

という背景と、この市場を見据えた性能向上を行ったことによるものです。

TY-2-4_g3

メタルインダクタを使用するにあたって、確認すべき点があります。非常に小型で飽和特性にも優れるメタルインダクタですが、高温下では絶縁が劣化するという課題です。一般のメタルインダクタはメタルコンポジットタイプと呼ばれ、有機物樹脂により鉄粉間の絶縁を形成しています。この樹脂が高温によって劣化し絶縁劣化が生じ、Qが大幅に低下して電源としての効率が大幅に低下し、さらに発熱が増えるという悪循環に陥る可能性があることです。

弊社の場合は、金属の粉体が各々に絶縁酸化膜をもつ独自材料の開発により、この絶縁の課題をクリアして、同時にメタルコンポジットより高い透磁率=高いインダクタンスを達成したMCOIL™というラインアップを提供しています。

最後に、メタルインダクタとフェライトインダクタの使い分けですが、インダクタンスが5µF程度までであれば、メタルインダクタの優れた特性を利用しつつサイズ面でも有利です。それ以上のインダクタンスでは、フェライトが選択肢になります。そういった意味では、MCOILは現在4.7µFまでのラインアップになっています。

-コンデンサと同様に、資料やホームページからでは得られない情報や、押さえ所がたくさんあって大変ためになりましたし、個人的にはコンデンサとインダクタに奥深さを感じました。コンデンサも含めた全体として、まとめをお願いしたいのですが。

そう言っていただけると、こちらもうれしいです。全体を通して、エンジニアとして申し上げたいのは、データシートの仕様や規格値はしっかり把握する必要があるのはもちろんですが、その元になっている電圧/電流や温度に対する基本特性と、等価回路を使って説明した寄生成分をしっかり理解して、そして目でも確かめていただければ、設計時のデバッグやトラブルに対処できると思います。太陽誘電としては、様々な技術サポートを行っていますので、お困りの際は相談いただけるとありがたいです。

-それでは、長い時間、ありがとうございました。

スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは -その1-

  • エンジニアに直接聞く

    インダクタの仕様と等価回路を読み取る

    インダクタの仕様と等価回路を読み取る
    「スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは」ということで、今までコンデンサについていろいろお話を伺いしましたが、ここからはインダクタについて伺って…

スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは -その2-

  • エンジニアに直接聞く

    各種パワーインダクタの特徴

    各種パワーインダクタの特徴
    インダクタの基礎的なことに続いて、パワーインダクタと呼ばれるものにはどんな種類があるのか教えてください。インダクタは種類、構造ともに非常に多様です。その中でパワーインダクタと言えば、巻き線開磁路…

スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは -その3-

  • エンジニアに直接聞く

    電源回路における検討事項

    電源回路における検討事項
    ここまで、インダクタの仕様と特性や特徴についてお話しいただきました。ここからは、それらの特性が電源回路にどのように影響するのかを教えてください。…

スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは -その4-

  • エンジニアに直接聞く

    電源の変遷とメタルインダクタ

    電源の変遷とメタルインダクタ
    ここまでは、インダクタの基本特性が電源特性にどの様に影響するかをお話ししてきましたが、ここで、電源の変遷に関連してメタルインダクタの使用が増えてきている件と…

技術資料ダウンロード