エンジニアに直接聞く
スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは : コンデンサ編まとめ
2016.04.12
-「スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタ」というテーマで、まずはコンデンサについていろいろ伺ってきました。また、単にコンデンサという観点ではなく、スイッチング電源と関連付けた説明をしていただきました。これは、スイッチング電源の設計に携わるエンジニアには、とても有用な情報だと思います。
コンデンサだけで7回にわたったので、ここで簡単にまとめをしたいと思います。
コンデンサ編
- その1:積層セラミックコンデンサは大容量化が進む
- その2:電気的仕様だけではなく、材料やケースを含めた特性も知る
- その3:入力コンデンサの選択ではリップル電流、ESR、ESLに着目
- その4:出力リップルの評価では出力コンデンサのESLに注意
- その5:出力コンデンサのESRは負荷減少時の出力変動に影響大
- その6:実装に関する課題 -クラック-
- その7:実装に関する課題 -音鳴き-
そうですね。最初にコンデンサ自体の話として、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の構造や基本特性、そして、DC-DCコンバータに使う場合の着目点を入力と出力に分けて説明しました。また、MLCCの実装に関する課題についても2つほどお話ししました。
-それでは、それぞれに関して、あらためてキーポイントをお話しいただけますか。
「その1:積層セラミックコンデンサは大容量化が進む」では、弊社では470?FのMLCCを供給可能であることをお話ししました。MLCCは比較的小容量のラインアップしかないと思われている方がいらっしゃると思いますが、オンボードのDC-DCコンバータ設計においては、十分対応できる容量のものが用意されているという認識をいただければと思います。また、この大きさの容量になると、今まで電解コンデンサがカバーしていた領域で競合できます。積層セラミックコンデンサの非常に低いESRとESL、高い容量/サイズ比、そして長寿命である点がポイントになります。
-「その2:電気的仕様だけではなく、材料やケースを含めた特性も知る」では、MLCCの特性上の課題についてお話しいただきました。
高温特性とDCバイアス特性は、MLCCを使うにあたって知っておかなければならない特性です。また、グレードやケースサイズによって特性が変わること、DC-DCコンバータには、X7RやX6Sのグレードが必要なことを覚えておいていただきたいと思います。
「その3:入力コンデンサの選択ではリップル電流、ESR、ESLに着目」では、MLCCをDC-DCコンバータの入力コンデンサとして使う場合の着目点について説明をしました。入力コンデンサは大きな電流の充放電を担うため、ESRとESLといった寄生成分によってリップルやスパイクが発生します。また、発熱も要注意です。ESRとESLが非常に小さい積層セラミックコンデンサは、これらに対して効果的です。
-「その4」と「その5」では、出力コンデンサとして使う際の注意点などの説明をいただきました。
「その4:出力リップルの評価では出力コンデンサのESLに注意」では、出力リップルとESRの関係はよく知られていると思うのですが、方形波に近いリップル電圧が出力に現れる場合はESLの影響であることを知っていただきたいと思いました。
「その5:出力コンデンサのESRは負荷減少時の出力変動に影響大」では、負荷が急速に減少した場合に、ESRに依存して出力電圧が持ち上がる現象について説明しました。これは、出力リップルの評価の際にしっかりと確認してほしいポイントです。
-「その6」と「その7」では、実装に関連する問題を説明いただきました。
「クラック」と「音鳴き」ですね。いずれも、対策が施されたタイプのMLCCがあり、どちらにもメタルフレームタイプの有効性が高いことを説明しました。また、対策品を利用する際には、高さの検討や基板レイアウトの変更が必要になる場合があることも説明しました。
-全体として、DC-DCコンバータの設計における積層セラミックコンデンサのポジションをまとめていただけますか。
まず、積層セラミックコンデンサの大容量化が進んでいることで、容量の観点から機能性高分子材料のコンデンサを代替できる状況にあります。また、何度も繰り返すようで何ですが、ESRやESLといった寄生成分は機能性高分子コンデンサに比べてかなり低くなっています。これは、単にESRやESLが低いということではなく、機能性高分子コンデンサではESRやESLを低く抑えるために大きな容量のものを選択せざる得ないことに対し、ESRとESLの観点では、MLCCは機能性高分子コンデンサの1/2~2/3の容量で代替できることがポイントになります。つまり、機能性高分子コンデンサの代替に同じ容量は必要ないのです。加えて、サイズに対する容量が大きいので省スペースにつながります。また、寿命が長いことは厳しい環境での使用にも有利です。
このようなメリットをもつMLCCですが、課題もあります。高温特性とCバイアス特性、グレードやケースサイズに関しては、採用の際にはしっかり検討する必要があります。実装に関してもクラックや音鳴きの対策品や対策方法があることを知っていることで、事前に検討事項に入れておくことができ、もし、そういった問題が発生しても迅速に対応できると思います。
最後に、メーカーとしては、今回説明に使ったデータや豊富な経験をもっていますので、原因がわからない現象が発生したなど、何か困ったことがあったら遠慮なく相談いただければと思います。
-ありがとうございました。それでは、今度はインダクタについて伺っていきますので、引き続きよろしくお願いします。
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