エンジニアに直接聞く
スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは : コンデンサ編実装に関する課題-クラック-
2016.02.09
電源回路での特性の話が続きましたので、ここで実装に関連した話をさせてください。積層セラミックコンデンサは表面実装部品なので、他の表面実装部品と同様に実装に関連した課題がいくつかあります。代表的なものとして、ベンディングクラックと音鳴きがあります。
-それでは、ベンディングクラックからお聞きします。表面実装では典型的な課題とされる基板の応力によるひび割れのことだと思いますが?
これは積層セラミックコンデンサに限ったことではないのですが、基板にたわみが生じると表面実装部品に応力が加わり、半田付け部の劣化や剥がれ、部品におけるクラックの発生など機械的な劣化やダメージが生じることは広く知られていると思います。もちろん、積層セラミックコンデンサも同様に、このベンディングクラックと呼ばれる課題を持っています。
-部品メーカーとしては「基板を曲げないでください」と言いたいところかと。
それはそれで重要な注意事項なのですが避けて通れないことなので、部品の側でも応力への耐性を高めたタイプを用意しています。2タイプありまして、1つは「樹脂外部電極タイプ」、2つ目は「メタルフレームタイプ」です。
-部品側での対処があるということですね。
最初に、簡単にベンディングクラックのメカニズムについて確認しておきましょう。下の図のように、基板に実装された表面実装の積層セラミックコンデンサは、基板がたわむと応力を受けます。特に、応力分布を示した画像の赤丸で囲んだ部分、つまり下部の電極の境界あたりに最大応力が加わり、黄色い破線で示したようにフィレット上部に向かってクラックが入ります。
1つ目の対処として挙げた「樹脂外部電極タイプ」は、右の図のように、Niの外部電極と半田(Ni/Sn)めっきの間に導電性樹脂層を形成することで、機械的応力を緩和する構造になっています。また、基板からの曲げ応力だけではなく、ヒートサイクルによる内部クラックや半田の劣化にも効果があります。加えて、環境条件に対しては耐湿性が向上し、実装に関しては半田付け時のヒートショック耐性、半田はぜ、平坦性が向上するというメリットも備えています。
-具体的にどのくらいの改善が得られるのですか?
ベンディングクラックとヒートサイクルに関するデータがありますのでご覧ください。まず、ベンディング耐性に関しては、たわみ量に対しての残存率、つまりクラックが発生しない率をグラフにプロットしてあります。標準品は3mm弱のたわみ位からクラックが発生し4mmではほぼ半数にクラックが発生するのに対し、樹脂外部電極のものは6mmのたわみ量でもクラックは発生しませんでした。また、試験をした試料についてクロスセクショニングを行った写真も用意しました。故障した標準電極品には、最初に図で説明したように、最大応力がかかる部分にこのようなクラックが発生してしまいます。
次に、ヒートサイクル試験での半田の劣化ですが、これは固着強度の変化を測定した結果です。グラフが示す通り、標準電極品の劣化度合いに対して、樹脂外部電極品には大幅な改善が認められます。半田の劣化は、基板と積層セラミックコンデンサの線膨張係数の違いに起因しており、半田にクラックが入り最終的に基板から剥離してしまうこともあります。
-導電性樹脂が応力を緩和するのは感覚的にわかりますが、かなり効果があるものなのですね。ところで、利用にあたって何か注意することはありますか?
ここで示した結果は、あくまでも弊社のMLCCの試験結果です。メーカーによって耐性など違うので、使うメーカーごとにしっかり特性を確認することが必要だと思います。実は、使われる導電性樹脂の材料はコンデンサメーカーごとで異なっており、例えば樹脂の弾性や密着強度などが違います。当然のことながら、材料の違いはそれなりの特性の違いとなって表れますので、樹脂外部電極品だと言って一律にはできません。
-それでは、もう1つの「メタルフレームタイプ」の説明をお願いします。
「メタルフレームタイプ」は比較的前からあるものなので、知っている方も多いと思います。MLCCの電極に金属フレームが付いており、図のようにメタルフレームが基板からの応力を吸収します。コンデンサに加わる応力はかなり小さくなります。もちろん、樹脂外部電極よりも効果は大きいです。1206と0805のベンディング試験結果があるのでご覧いただけますか。
この測定データは、試験で与えられる最大たわみ量10mmにおいて故障が発生しなかったために、ピンクの測定限界ラインにプロットが貼り付いてしまっています。面白味のないデータですが、ベンディング耐性が高いのは理解いただけると思います。また、他の電極のものとの違いとして、それぞれの保証値を示しました。標準品は1mmのたわみまで、先に説明した樹脂外部電極タイプは3mm、そしてメタルフレームタイプは5mmまでが保証されています。
-標準品、樹脂外部電極タイプ、メタルフレームタイプの使い分けについてはどう考えたらよいですか?
MLCCとしては、たわみ量の保証値を提示していますが、基板のたわみ量の定量化が難しいことがあると思います。基板の厚さ、サイズ、部品の実装場所、基板の実装方法など様々な要素があるので、試作段階でベンディングクラックや半田付けの劣化の評価をして、樹脂外部電極タイプにしてもまだ問題が解決されなければ、メタルフレームタイプに変更するといったアプローチになるかと思います。
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