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スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは : コンデンサ編出力コンデンサのESRは負荷減少時の出力変動に影響大
2016.01.13
-出力リップルの他に、出力コンデンサで気を付けることはありますか?
出力コンデンサは、出力リップルの他に出力負荷電流の変動に対して安定を維持する役目を持っています。例えばCPUがスリープ状態から稼働状態になると急激に大きな負荷電流が流れて、一瞬出力電圧が低下する現象が発生するのはご存じだと思います。
-負荷過渡応答特性は、電源の重要特性の一つですよね。
負荷変動に対する出力変動は、先ほどの例の「急増」時の変動と、その逆の「急減」時にも起こります。CPUの例なら、稼働状態からスリープに入るような条件になります。この場合、出力電圧は一瞬上昇します。これからお話しするのは、「負荷急増時の出力電圧低下レベルは許容内だが、負荷急減時の出力電圧の上昇が思いのほか大きい」という事例です。
波形や状態を示した図を使って説明したいと思います。上側の波形図には、同期整流降圧コンバータの出力電圧(赤)とインダクタ電流(紺)、そして負荷電流(ピンク)が示されています。
まず、負荷電流ですが、縦破線?(青)の少し前で減少を始めて、最終的にほぼゼロになっています。例えばCPUか何かがシャットダウンした関係で、3Aほどの負荷電流がほとんど流れなくなったようなことをイメージしてください。
次にインダクタ電流ですが、縦破線?(青)直前のスイッチングサイクルのハイサイドスイッチオフ(ローサイドオン)期間中に負荷電流が減少し始めたので、若干オフ時間を延ばしたようですが、縦破線?(青)のタイミングで次の周期(ハイサイドオン/ローサイドオフ)が始まってしまっています。そのため、負荷電流が不要にもかかわらずインダクタ電流は増加しています。その後、縦破線?(緑)のタイミングでオフになり、そのままオフ状態が続きインダクタ電流はゼロ付近まで減少していきますが、途中までは負荷電流よりインダクタ電流が多い状態が継続していることを覚えていてください。
そして、負荷電流とインダクタ電流(スイッチング)の変化を踏まえたうえで、出力電圧の関係を見ていきます。負荷電流が減少し始めてすぐには出力が必要なだけ下がりきらず、このままハイサイドスイッチをオフのままにしたいところですが、電源ICの制御の関係でハイサイドスイッチがオン動作をしてしまうため、出力電圧は急激に上昇しています(?青と?緑の縦破線の期間)。この時のオン時間は若干短くなっているようですが、負荷電流はどんどん減少しているので、このタイミングでの電力供給は、出力コンデンサに多くの電流を流してしまいます。
その後、ハイサイドスイッチはオフになりインダクタ電流は降下しますが、インダクタ電流が負荷電流を上回っており、その差分が出力コンデンサに流れ出力電圧は上昇し続けます。下側の波形図に、コンデンサ電流を示してあります。
?赤の縦破線のあたりから出力電圧は降下していきますが、これは時間の経過にともないインダクタ電流と負荷電流の差分、つまりコンデンサ電流が減少してくるからです。下側の波形図で、インダクタ電流と負荷電流の差とコンデンサ電流の変動を見比べてください。負荷電流波形の反転がコンデンサ電流波形であり、インダクタ電流との交点ではコンデンサ電流はゼロ、以降逆転区間はマイナスで、その後ほぼゼロに戻るのがわかると思います。
出力電圧の変動はVc+Vesrで、いずれもコンデンサ電流がかかわっています。特にVesrは、ESR×コンデンサ電流で発生するので、ESRが大きいと出力変動が大きくなるのは必然です。
-ESLの話がでてきませんが、関係ないのでしょうか?
この例の条件では特に考慮する必要はないと考えますが、負荷電流の減少がさらに急峻な場合にはESLの影響が出てきます。
-この例では、出力コンデンサに機能性高分子タイプを使っていますが、コンデンサの種類、特に積層セラミックを使うとどんな違いが出てくるのでしょうか?
ここに様々な出力コンデンサを使った場合のデータがあります。機能性高分子タイプは代表的なもの3種類で、積層セラミック-MLCCも含め容量やサイズの違うもの16種類で実験しました。上側の波形図からは、負荷が急減したときに大きな出力電圧の変動が見られます。その下の波形図は、変動部分の拡大ですが、コンデンサの種類と容量によって大きく異なっています。
-とはいえ、正直なところあまり見やすいとは言えないので、マッピング表示にしてみました。
先ほども説明しましたが、この例の出力電圧変動の主要因はVcとVesrですので、コンデンサのタイプに関わらず、容量が大きい=必然的にESRが小さいコンデンサが、このような負荷急減時の出力電圧変動を低減するポイントになります。
-MLCCの有利な点は?
リップルの件と同様にここでも言えることなのですが、積層セラミックコンデンサ-MLCCはESRとESLが低いので、これら寄生成分の観点からは、容量は機能性高分子タイプより小さくても対応でき、当然ながら小型化の面で有利になります。容量は、機能性高分子タイプの2/3程度で対応できます。
-わかりました。他に注意することはありますか?
ここで取り上げた例ですが、負荷急減時の電圧上昇が大きい第一の要因は、使った電源ICの制御、つまり負荷急減時の応答特性にあります。逆に言えば、負荷の減少に直ちに追従するタイプの電源ICを使うことで、ここで示した現象は許容できるレベルで問題にならないかも知れません。
ここで、お話ししたかったのは、もし、類似の現象が発生するのであれば、出力コンデンサをESRの小さいものにすることで対処できる、という事例です。また、リップルの件も含めて、出力コンデンサはESRとESLといった寄生成分が少ない方が有利ですが、電源ICによっては出力コンデンサのESRが小さいことが不具合の原因になることもありますので、十分な検討が必要になります。
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