電源設計の技術情報サイト

技術資料ダウンロード

エンジニアに直接聞く

スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは

入力コンデンサの選択では
リップル電流、ESR、ESLに着目

コンデンサ編 -その3- 

注目ワード
  • 積層セラミックコンデンサ
  • 入力コンデンサ
  • リップル電圧
  • リップル定格電流
  • ESR
  • ESL
  • 自己発熱
  • 寿命

-コンデンサの特性が材料やケースによって違ってくることは理解できました。ここからは、実際にスイッチング電源回路に使う場合、その特性や性質が具体的にどのような影響をもたらすのかをお聞きしたいと思います。

スイッチング電源回路には、入力コンデンサと出力コンデンサが必要で、それぞれが扱う電圧と電流の性質が異なるのはご存じかと思います。説明は、入力と出力を分けたほうがわかりやすいので、入力コンデンサから始めます。最初に、入力コンデンサに流れる電流について、念のため簡単に説明いたします。これからする話の前提になります。

下の図は、概念的な同期整流降圧コンバータの回路です。VINから見て手前のMOSFETはハイサイドのスイッチで、このハイサイドスイッチがオンすると、このハイサイドスイッチの電流波形はほぼ垂直に立ち上がり、インダクタ電流と同じ電流が流れます。そしてハイサイドスイッチがオフしてローサイドスイッチがオンした際にはこの電流は急激にゼロになります。この電流波形のAC成分が入力コンデンサに流れます。

この入力コンデンサの電流により発生する電圧(波形)は、コンデンサの「静電容量」の他に存在する寄生成分の「ESR(等価直列抵抗)」および「ESL(等価直列インダクタンス)」の違いによって異なった表れ方をします。

-簡単に言うと、静電容量の他に、ESRとESLによる影響がでるということですね。

そういうことです。せっかくの機会なので少し突っ込んだ説明をしたいと思います。先ほどの3つの要素、容量、ESR、ESLのそれぞれの影響を、波形と式で表すことができます。わかりやすいように図を用意してあります。

この図は、コンデンサ電流を方形波として、各成分によりどのような電圧となって表れるかを示しています。最初にESRによって発生する電圧ですが、式が示す通りESR、つまり抵抗×電流となり方形波になります。容量成分に関しては電流と時間の積分となり、三角波になります。ESL成分に関しては微分で表すことができ、スイッチのタイミングで一瞬のパルス電圧が発生します。これは、スパイクなどと呼ばれる高速のパルス性ノイズとも言えます。最終的にコンデンサ両端の電圧変動は、これら3成分の電圧の和の合成波になります。

-3成分の合成波は、スイッチング電源を評価したことがある人であれば見覚えがある波形だと思いますが、単純に各成分の影響を足し算したものと考えてしまっていいのですか?

基本的にはそうなります。実は、そこが重要なところなのです。例えば、方形波成分が大きければESRが大きいことがわかります。また、スパイクが大きいと、ESLが大きいことが推測できます。いずれもゼロであることがベストなのですが、現実的には存在するものなので、評価の際に入力コンデンサの電流と電圧を観察して、波形から何が問題かを知ることができます。

試験回路による実際の波形の資料をお持ちしましたので、こちらでリアルな波形を見ていただくのと、タンタルコンデンサと積層セラミックコンデンサではどのような違いが出るのかを説明させてください。

まず試験回路ですが、評価するコンデンサに、5V/100kHzのスイッチングを与え、電圧と電流をモニタするものです。コンデンサの容量は22µFと100µFの2種類です。タンタルコンデンサと積層セラミックコンデンサは、部材の違いからESRが大きく違います。これは、最初にお話しさせていただきましたように、積層セラミックコンデンサの優れた点の一つです。ESRの比較グラフでは、100kHzにおいては、容量が約1/5にもかかわらず積層セラミックコンデンサのESRが2桁低いことがわかります。

最初に22µFのタンタルの電圧波形を見てください。赤い矢印で示されているほぼ垂直な電圧変化部分は、ESRによる方形波成分です。ESRが大きいために発生しているリップル電圧がかなり大きくなってしまっています。100µFになると、ESRによる電圧が半分以下になっているのがわかると思います。つまり、ESRが半分以下になったことを示しています。ESLによるスパイクが若干観察されますが、全体のリップル電圧を大きく超えるもではなく、特にESLによる問題はないと考えられます。

-下側の積層セラミックコンデンサの波形がすでに目に入ってしまっているので先に聞いてしまいますが、波形が三角波で小さなスパイクしか見えないのは、ESRが非常に小さいのでESRによる方形波成分がほとんどなく、ESLもタンタルや機能性高分子材料のコンデンサより小さいのでスパイクも小さく、主に容量成分による三角波が見えている、という理解でよろしいでしょうか?

まさにその通りです。容量を100µFにするとその三角波もさらに小さくなり、リップル電圧が非常に小さいのがわかります。ここで言えることは、ESRとESLが小さい積層セラミックコンデンサを使うことで、リップル電圧やスパイクを明らかに小さくできるということです。別の観点では、もう一度波形グラフを見てもらうとわかるのですが、100µFのタンタルと22µFの積層セラミックのリップル電圧はほぼ同じだということです。つまり、同じレベルの入力リップル電圧を達成するとすれば、積層セラミックを使うと容量も小さく、必然的にサイズも小さいもので済むというメリットもあるということです。

もう一つ、電源ICの評価ボードを使って、機能性高分子材料のコンデンサと積層セラミックコンデンサでの入力リップルの比較をした資料がありますので、参考までにご覧ください。注目点は、機能性高分子材料の方が82µF、積層セラミックは30µFと半分以下の容量であること、機能性高分子材料の方はESLによるスパイクが大きめである点でしょうか。それと、サイズもです。ちなみに、赤丸で囲った入力コンデンサの左側に2個ずつコンデンサが見えると思いますが、それらは出力コンデンサです。機能性高分子のコンデンサ1個のスペースに、2個の積層セラミックが収まっています。これは、基本的に小型で、さらに容量を小さくできることの結果です。

-話は変わりますが、電源設計の際に電源ICのデータシートを読むと、「入力コンデンサの選択ではリップル電流定格に注意」ということがほとんどのデータシートに書かれていると思います。これについて、コンデンサの種類や特性は何か関係してきますか?

リップル定格電流に注意」というのは、まずは、入力のリップル電流を許容できる定格のコンデンサを使うということなのですが、入力コンデンサには出力コンデンサより大きなリップル電流が流れるので、その点では出力コンデンサよりリップル電流定格に注意する必要があります。さらに、リップル電流定格は自己発熱に関係しています。コンデンサのESRは抵抗成分ですので、リップル電流が流れると発熱します。当然のことながら、ESRが大きいと発熱も大きくなります。また、入力コンデンサのリップル電流は大きいので、発熱も大きくなることを十分考慮する必要があります。

-一般的なアルミ電解コンデンサでは、温度と寿命についての検討が重要だとよく言われますが、他の種類ではどうでしょうか?

原則的に考え方は同じです。程度の違いはありますが、どのコンデンサも高温であるほど寿命も含めた信頼性は低下します。例えば電解コンデンサや機能性高分子材料のコンデンサでは、リップル電流定格の条件として100kHz時の許容電流が示されていることが多く、それを目安に設計することになります。積層セラミックコンデンサでは少し違った条件で示されている場合があり、弊社では「自己発熱20℃以内」という条件を示しています。(最近20℃に変更しました)

例として、積層セラミックコンデンサのデータシートからの抜粋で、スイッチング周波数から自己発熱と許容リップル電流を求めるためのグラフを示します。また、周波数とESRのグラフとの関連付けもしてあります。

下の許容リップル電流のグラフには、スイッチング周波数10kHz、100kHz、1MHz時のリップル電流に対する温度上昇曲線が示されています。例えば1MHzのスイッチングで、「自己発熱20℃以下」を守るためには、10℃と1MHzの曲線がクロスする2.8Aほどのリップル電流を許容できることがわかります。

また、上の周波数とESRのグラフから、条件提示されている3つの周波数のESR値を読み取ることができます。特にDC/DCコンバータに使用される数百キロHz~数メガHzはESRが最も低いレンジで、発熱を押さえるのに有利な特性であることがわかります。それに対し、若干ESRが高くなる10kHzの条件では、許容リップル電流が小さくなることが読み取れます。許容リップル電流とESRが密接な関係にあるのは言うまでもなく、ESRが小さな積層セラミックは、発熱においても優位であると言えます。

電源回路の入力リップル電流は式で求めることができるのはご存だと思います。降圧コンバータの例ですが、データシートに以下のような式が提示されていると思います。

この式での計算値が、グラフで示された許容値内であればよいという判断になります。

スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは
コンデンサ編 -その1-

スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは
コンデンサ編 -その2-

技術資料ダウンロード