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スイッチング電源に最適なコンデンサとインダクタとは : コンデンサ編電気的仕様だけではなく、材料やケースを含めた特性も知る
2015.10.14
-今までの説明だと、積層セラミックコンデンサが、ESR、容量/サイズ、信頼性/寿命に関してはかなり優位だということですね。
確かに、ESR、容量/サイズ、信頼性/寿命、さらには等価直列インダクタンスESL も非常に低く、誘電体被膜の厚さは信頼性だけではなく高耐圧化にも有利です。ただ、積層セラミックコンデンサが完璧とまでは言えません。これは、それぞれの得手不得手をまとめた表ですが、いくつか課題もあります。
ご覧の通り、高温側の温度特性とDCバイアス特性は、他のものより劣っている言わざるを得ません。
-具体的にどのような特性なのですか?
静電容量の温度特性のグラフと、DCバイアスに対するグラフをお持ちしました。温度特性は、青と赤のラインが積層セラミックコンデンサで、緑がアルミ電解、オレンジがタンタルです。低温側でのアルミ電解の極端な容量落ちはさておいて、高温側では積層セラミックの容量低下が他に比べて大きいのがわかると思います。青の温度特性はX6Sなので、-55℃~105℃対応、変化率は±22%です。赤はX7Rで、-55℃~105℃/±15%です。これらは、比較的温度特性のよいグレードで、DC-DCコンバータによく使われるグレードですが、例えばY5Vといった下位グレードでは、-30℃~85℃対応で変化率は+22%/-82%です。おそらくこのグレードは、通常のDC-DCコンバータには不適だと思います。
ちなみに、このコンデンサの温度特性記号はEIA表記で、日本ではJISが使われることが多いようですが、世界的にはEIAが標準的です。資料をお持ちしたので参考にしてください。
DCバイアス特性は、文字通りDC電圧を加えた場合の容量変化を示しています。こちらも、赤と青の積層セラミックは、バイアス電圧が上がるにつれて容量が大きく減少します。変化率が大きいため、この様な条件になる場合は要注意です。
-積層セラミックコンデンサのESRが低いことは説明いただきましたが、DC-DCコンバータにはリップルがあるので、ESRの周波数特性はどうなのでしょうか
それもグラフを見ていただいた方が早いと思います。左のグラフは周波数に対し、ESRとインピーダンスの変化を示しています。マゼンダと細い紺のラインが積層セラミックコンデンサで、他はタンタル電解と機能性高分子のものの特性です。積層セラミックは共振点まで直線的に低下して行きますが、他はルーズになっており、ESRにも大きな差がでています。また、下の表に、ESLとポイントでの数値を示しています。
もう一つのグラフはリップル電流と温度上昇のグラフです。当然のことながら、ESRが低い積層セラミックは温度上昇が少なくて済んでいます。これは、コンデンサの寿命にも大きく影響を及ぼしますので、発熱が少ないのは重要なポイントです。
-他に、積層セラミックの特徴で、知っておくべきことはありませんか?
1つあります。ケースサイズによって、寄生成分であるESRとESLに違いがあるという点です。実際は、ケースが小さいほど、これらは小さくなる傾向にあります。これに関してもグラフを見てください。10?Fの1005サイズから3225までに5種類のデータです。見るべき範囲は、DC-DCコンバータを前提にすると、周波数は数百kHzから、最近の速いもので6MHz、中に10MHzをうたっているものもあるようですが、おおよそ青の線で仕切られた範囲だと思います。
ESRは、スイッチング周波数の帯域において、ケースの小さいものが小さくなっています。共振点を過ぎて容量成分がインダクタンス成分、つまりESLになってからは、3216と3225がケースの縦横比の関係で逆転していますが、全体として見た場合、やはりケースの小さい方がESLは小さい傾向があります。
-ICの場合は電気的特性が主体になりがちですが、コンデンサは同じ容量や耐圧でも構造や材料によって固有の特性を持つことがわかりました。
実は、そこがかなり重要なポイントなのです。コンデンサはシンプルな部品ですが、材料による特性の違いや注意点などよく理解して選択しないと、時に問題の主原因になることがあります。例えばDC-DCコンバータの応用例において、静電容量だけではなく種類や銘柄までを指定していることがあると思います。つまり、それには理由があって、容量と耐圧が同じだからなどといって勝手に違う種類のものに変えてしまうと、正常に動作しない可能性があるということを知っておいていただきたいと思います。
【資料ダウンロード】スイッチングレギュレータの特性と評価方法
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