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全43機種、車載向け汎用LDOレギュレータシンプルなLDOでも省電力化と小型化に妥協はしない

2015.06.09

-このLDOシリーズは車載用ということに関して、他にどのような特徴があるのでしょうか?

車載機器にとって省電力化小型化は重要な課題であることは言うまでもありません。自動車の電源はバッテリであり、消費電力は可能な限り小さいことが要求されています。LDOにとっては、如何に自己消費電流を減らすか、そして、どれだけ小型の外付け部品が使用できるかということがポイントになってきます。

-それでは最初に省電力化について伺います。

このLDOシリーズの無負荷時消費電流は、従来品の1/2以下にすることができました。

-具体的にはどのくらいの値ですか。

一般品は100μAほどですが、BD4xxMxシリーズは40μAです。正確にいうと1/2の50%ではなく、40/100ですから40%ですね。これは低消費電力なプロセスと回路技術によるものです。無負荷時消費電流を低減することで、待機時の電力消費を減らすことができ、バッテリの消耗を軽減できます。

省電力化に関して、もう一つあります。無負荷時だけではなく負荷供給時の回路電流(自己消費電流)も激減しています。

-というと、待機時ではなく回路が動作しているときのLDO自身の消費電流もということですか?

そうです。比較のためにグラフを用意しました。BD4xxMxシリーズだけではなくBDxxC0Aシリーズも同じなのですが、動作時の消費電流を一般品に比べ1/30に低減しました。

-グラフを見ると、一般品の消費電流特性と全然違うのですが?

一般品は負荷電流が増加すると、自身の消費電流(回路電流)が増加します。大多数のLDOがこういった特性になっています。このシリーズはこの特性を改善して、負荷電流が増えても消費電流がほとんど増加しません。これによって少しでも発熱を減らして、より多くの負荷電流を供給する、または温度に対してのマージンを増やすことができます。

-では、小型化については。

このLDOシリーズは、出力コンデンサにセラミックコンデンサを使うことができます。さらに、出力安定のために必要な容量が1~10μFと小さいので、積層セラミックコンデンサを使ってコンパクトな回路にすることができます。

-基本的なことですいませんが、出力コンデンサにセラミックコンデンサが使えないLDOがあるということですね。

LDOは出力からの帰還ループによって安定化動作を行いますが、出力容量と出力インピーダンスによってポールが生じてしまい、位相が回って発振を起こすことがあります。安定を維持するにはいくつか方法があるのですが、多くは出力コンデンサのESRを使ってゼロ点を追加する方法を取ります。したがって、出力コンデンサには適度なESRが必要とされ、一般にはアルミ電解コンデンサが使われます。それに対して、セラミックコンデンサを使うとESRが低いため出力が不安定になります。それでもセラミックコンデンサを使いたい場合には、必要なESR相当の抵抗を追加することになるので、部品と実装面積が増えてしまいます。

-それではアルミ電解コンデンサではだめなのですか?

アルミ電解の場合は、スルーホール実装形状がほとんどで、面積や高さの面で小型化に関しては不利になってしまいます。あと、サイズとは直接関係のない話なのですが、セラミックコンデンサは電解コンデンサより寿命が長いので、長期に渡り使われる機器にはよい選択だと思います。

-ちなみに、このLDOシリーズは電解コンデンサも使えるのですか?

もちろんです。スペースとコスト、耐用年数などを考慮して選択いただければと思います。

-最後にまとめてください。

BD4xxMx/BDxxC0Aは、総数が43機種という大きなLDOシリーズです。豊富なバリエーションを持ちながらも、シリーズとしての統一性をもち汎用性も高いので、車載用LDOの標準品として共通化の促進に貢献できると思います。車載専用設計と自社による一貫生産を行うことで高品質高信頼性を確保し、納期厳守と長期安定供給ができます。近年の省電力化小型化要求にも対応できる改善がなされた新しいLDOシリーズとして、安心して使っていただきたいです。それと忘れてはいけないのは、車載用としてAEC-Q100に対応していることです。これも近年の要求事項の一つです。

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シンプルなLDOでも省電力化と小型化に妥協はしない

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