エンジニアに直接聞く
車載用セカンダリ電源として開発された同期整流降圧DC-DCコンバータ車載機器におけるセカンダリ電源のメリット
2018.10.15
BD9Sシリーズは、車載電子機器の省電力化と小型化のために開発され、
LDOと同等の部品数と実装面積で、効率と供給電力を大幅に向上させることが可能だという。
そのキーポイントについて、ロームのフィールドアプリケーションエンジニアである
原田 庄一(はらだ しょういち)氏 に聞いた。
-BD9Sシリーズの概要を知りたいのですが、
その前に「車載用セカンダリ電源」の意味を教えてください。
まず「車載用」ですが、このシリーズは近年車載用ICの規格として実質的な業界標準になっているAEC-Q100に対応しており、動作温度範囲の定格も車載要求に対応できるよう-40℃~+125℃になっています。
また、生産工程や品質管理、そして供給面でも弊社の車載仕様に基づいていることから、「車載用」と明記しています。もちろん、車載以外に使ってもかまいません。
「セカンダリ(secondary)」は、車載バッテリを直接入力とするのではなく、別のレギュレータで降圧された電圧を入力として使う前提の仕様なのでこう呼んでいます。いろいろな呼び方があるかと思いますが、要はバッテリから数えて2段目以降の電源のことです。詳しくは後ほどお話しできると思います。
-出力電圧の仕様は?
BD9Sシリーズは、同期整流式の降圧DC-DCコンバータで、スイッチング周波数は2.25MHzです。
チップに集積化な回路や素子は可能な限り取り込んでおり、もちろん出力トランジスタは内蔵しており、構成はトップがPch、ボトムがNchです。出力電圧は固定で1.2V、1.5V、1.8Vが用意されています。
出力電流は各出力電圧に対して2Aと3Aの2機種があり、1.2V品には1A出力の機種が追加されたので、現状では全部で7機種になります。まだ開発中ですが、可変出力品も揃える予定です。
-入力電圧の仕様は?
BD9Sシリーズの入力電圧範囲は2.69V~5.5Vです。これが冒頭の「セカンダリ」と直接関係します。車載用電子機器では5Vもしくは3.3Vを主電源とすることが多く、乗用車だと12Vバッテリから直接5Vもしくは3.3Vに変換するのが一般的です。
バッテリ電圧からの変換をプライマリと呼ぶかどうかはさておき、この1段目のDC-DCコンバータは変動が大きい12Vバッテリ出力を入力電源とするため、一般的には40Vくらいを受けられる入力耐圧のものが使われます。
それに対してBD9Sシリーズの入力電圧範囲は2.69V~5.5Vですので、1段目が変換した5Vや3.3Vを、1.2V、1.5V、1.8Vといったさらに低い電圧に変換する、2段目のDC-DCコンバータとして使用することを目的にしています。
-少し脱線するかもしれませんが、なぜ2段にする必要があるのでしょうか?
バッテリ電圧から直接1.2Vのような低電圧を作ることは可能だと思いますが。
もちろん可能ですが、いくつかデメリットがあります。
先ほど説明したように、DC-DCコンバータをバッテリに直接つなぐためには、12Vバッテリだと40Vくらいの入力耐圧が必要になります。つまり、高耐圧の電源ICが必要で、外付け部品も相応のものが必要になり、サイズとコストの増加は避けられません。
また、技術的な観点からは、降圧比が高いと制御や発熱による制限が発生する可能性があります。こういったことから、5V主電源以下の電圧は、5Vからセカンダリ電源で降圧する方が優位な場合が多いのです。
-次は出力電圧についてお聞きします。
設定されている1V台の低い出力電圧は、どんなデバイスに給電することを想定しているのですか?
固定出力として設定されている1.2V、1.5V、1.8Vは、例えば低電圧駆動のマイコンやDDRメモリの電源に対応します。また、1A~3Aの出力電流は、おおよそこれらのデバイスが必要とする値です。
また、今はまだ開発中なのですが、可変出力電圧品もラインアップに追加する予定で、さらに対応範囲は広がります。
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