SiCパワーデバイス|基礎編

SiC-MOSFETとは-パワートランジスタの構造と特徴の比較

2017.02.10

この記事のポイント

・パワートランジスタの特徴は、材料や構造によって異なる。

・それぞれに特性面で得手不得手があるが、SiC-MOSFETは全体的に優れた特性をもっている。

前回に続いて、各パワートランジスタの比較を行います。今回は構造と特徴を比較します。

パワートランジスタの構造と特徴の比較

以下の図は、各パワートランジスタの構造と、耐圧、オン抵抗、スイッチングスピードの比較です。

使うプロセス技術により構造は異なり、それによって電気的な特徴も異なります。補足ですが、DMOSはプレーナー型のMOSFETであり一般的な構造です。SiのパワーMOSFETでは、高耐圧かつオン抵抗を低減できることから、近年はスーパージャンクション(Super Junction)構造のMOSFET(以下SJ-MOSFET)が多く使われるようになりました。SiC-MOSFETに関してはDMOS構造を示しましたが、現状では、より特性が向上したトレンチ構造のSiC-MOSFETをロームでは量産しています。これについては、後述する予定です。

さて、特徴面ではレーダーチャートが示す通りで、Si-DMOSはオン抵抗に課題があり、前述したようにSJ-MOSFET構造を採用することでオン抵抗を改善しています。IGBTはオン抵抗と耐圧に優れていますが、スイッチングスピードに課題をもっています。SiC-DMOSは、耐圧、オン抵抗、スイッチングスピードともに優れており、さらに高温条件での動作も得意という点で大きなメリットをもったスイッチング素子であるといえます。

このグラフは、各トランジスタの規格化したオン抵抗と耐圧のグラフです。このグラフでもわかるように、理論的にはSiC-DMOSがより高耐圧で、低いオン抵抗のトランジスタを作成可能なことがわかるかと思います。現状のSiC-DMOSは楕円で囲んだ範囲の特性になります。今後の進化によって、さらなる性能向上が期待されています。

次回からは、SiC-MOSFETとの比較を個別に説明していきます。

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SiC-MOSFETとは-パワートランジスタの構造と特徴の比較

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